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異世界における他殺死ガイド79


 顔の部分の脱皮が終わった。


 剥けた青い皮はダフの顔の形をしている。これを何かに使えないだろうか。


 続いて首、肩の部分が剥けていく。


 皮の剥けた後の肩を見る。


 殻をむいた後のダフの肌はゆで卵のように艶があり、手触りが良さそうである。


 手を伸ばし触ってみたところ、ツルツルであった。


 さらに皮は剥けていき、問題の部分へと差し掛かる。


 双丘の先端を隠しているダフの腕。


 だが皮を剥くには腕をどかすしかない。


 暫くためらった後、ダフが腕をどかそうとしたその時、俺は背後に視線を感じた。


 振り返るとそこには半開きの扉の後ろから覗く、レッドセルの姿があった。


 その腕にはシープラたんが抱かれていた。




 ***




 ダフへの罰が完了した。


 後には脱皮後の青い皮、肌が赤く高揚し紫色になったダフ、レッドセルの冷たい視線が残った。


 次からはもっとちゃんとした罰を与えようと、俺は反省した。




 罰の後、ダフは勇者の討伐を命じて欲しいと言ってきた。


 ダフは刺し違えてでも勇者を殺すつもりでいるようだった。


 許可しない、死ぬことも許さん。といったことを伝えたところ、ダフはクネクネしだした。


「くれぐれも勝手な行動は慎むようにな」


「あ……はい」


 ダフの目が泳いだ気がしたが、クネクネしていたからだろう。




 ***




 散々迷った挙句、俺はジュレスの五感を受信することにした。


 何かまずいタイミングに当たってしまったら、すぐに受信を中断すれば済むことだ。何も問題はない。


 だが念のため、夜の時間帯は避けることにした。


 夜は人を獣にも帝王にもするのだ。まずいタイミングに当たる確率が高いと言えるだろう。



 頭の中でジュレスの紐を探す。


 見つけた。



 うーむ、ドキドキする。


 いや、別に期待などしていないぞ。これは決してやましい事ではない。俺には目的があって、そのための過程なのだ。何か見てしまったとして、それは仕方のない事なのだ。



 カチ



 視界が切り替わる。


 視界は若干揺れている。


 ガタゴトガタゴト


 馬車の中だろうか?景色が流れていく。


「俺は犬の方が好きだな」


 声が聞こえ、外を見ていた視線が動き、人の顔を捉えた。


 これは勇者だ。ジュレスは勇者の元に辿り着いていたのだ。


 良いぞ、これで勇者の動向を探ることができる。


 視線が動いた。


 今度は隣にいる人物を見たようだ。


 ……。


 綺麗な女性だ。思わず目を奪われてしまった。


 頭には羊のような巻き角が付いている。やや太めの眉は気の強さを感じさせる。


 まるでアリエスのようだ。


「アリエスは?」


「私か?そうだな……」



 ……。


 アリエスじゃないか。


 え、本当にアリエス?どういうことだ?何故勇者と一緒に?



「ナウウ……」


「ウ、ウーラ、私は犬猫どっちも同じくらい好きだぞ?」


 視線が動いた先には勇者の隣に腰かけるウーラの姿があった。


 ウーラまで!?


 なんだ? 何なのだ、これは!どうすればいいのだ?!



 ガッ!



 急に視線が揺れた。


 勇者の顔が近い。


 どうやら勇者はジュレスの胸ぐらをつかみ、怖い顔で睨みつけてきたようだ。


「ジ、ジーク……?」


 ジュレスが勇者のただならぬ雰囲気に戸惑っているのが伝わってくる。


 すると怖い顔のまま勇者が叫んだ。




「ジャブア!きさま!見ているなッ!」






 ■■■






 カホト大陸 ―街道―


 馬車の中、ジークがジュレスに話しかけた。


「それにしても、よく俺の居場所がわかったな」


「ん?あ、ああそうだな。昔からカンが鋭いとよく言われる」


 ジュレスは首にかけているペンダントを気にしないように努めた。


 現在ジーク達はマスカッシュ城に向かっている。


 アグリアの尻尾はジュレスに輪切りにされた後も動き続け、ジーク達を襲ってきたが、全てジークが悪食によって平らげたため、再封印の必要はなくなった。寄生されていた魔物もついでにと悪食で処理した。ジーク達は祠の周りを探ってみたが、封印の解けていた理由はわからなかった。


 一息ついた後、ジークとジュレスは再会を喜んだ。




 馬車の中、ジュレスは魔王に捕まった後のことを語りだした。


 魔族へと覚醒させられたり、義足を着けられたりしたが何とか逃げ出し、まだグロツに残っていた部下達に話を聞いてカホト大陸へと渡ったという。サーリア姫とは既にマスカッシュ城で会っており、ジークの助けになってほしいと言われ、ここに来たとの事だった。


 ジュレスの義足を見てジークは暗い顔をした。


「ジーク、足のことは気にするな」


「サーリアに頼めば再生できるかな?」


「気にするなと言うのに。むしろこれのおかげで私の戦闘力は上がったのだ。このままで良い」


「でもそれだと靴下が……」


「靴下などどうでもいいだろう」


「何を言う!どうでもいいわけがない!」


 常に冷静であるはずのジークが激昂した。当然である。大事なのだ。


「ジーク……」


「ジュレスから靴下を取ったら何が残るというんだ!」


 靴下が。


「ジーク!お前というやつは!!」


 ガッ!


 ジュレスがジークの首を絞める。魔族へと覚醒して得た、凄まじい腕力で。


「うぐうう!」


「ニャフフ」


「二人は凄く仲が良いのだな」


 ウーラとアリエスはそれをほほえましく見守っていた。




 ***




 ジーク達が馬車に揺られながら話すうち、犬と猫ならどちらが好きかという話になった。


「ナウウ……」


「ウ、ウーラ、私は犬猫どっちも同じくらい好きだぞ?」


 猫の魔物との合成獣であるウーラの顔が不安そうになり、アリエスが焦ったその時である。


 突然ジークがジュレスの胸ぐらを掴んだ。


 怖い顔でジュレスを睨みつけるジーク。


「ジ、ジーク……?」


「ジャブア!きさま!見ているなッ!」


「ジーク殿、突然どうしたのだ」


 アリエスが割って入ろうとするが、ジークはジュレスを離さない。


「ジャブア!よく聞け!俺は必ずお前を倒す!首を洗って待っていろ!」


「ジーク殿!」


「ハッ!」


 鎮静魔法によって冷静になったジークが見たのは涙目のジュレスであった。


「す、すまんジュレス!」


 バッ!


 ジークはすぐにジュレスを解放した。


「……」


 だがジュレスはうつむいてしまった。


「ジュ、ジュレス……」


 ジュレスがうつむいたまま呟く。


「……別に……」


「?」


「別に……怖くなんかなかったし。……ちょっと驚いただけだし」


 ジュレスは涙目になってしまった理由を必死で弁明しようとしていた。


 キュン


 ジークはギャップにやられた。


 スン


 だがそのときめきはすぐに、鎮静魔法によって消された。


「ジュレス落ち着いて聞いてくれ」


「?」


 ジュレスは顔を上げた。


「お前の目を通して魔王がこちらを覗いていた」


「ほ、本当か?」


「ああ」


 ジークは状態確認画面から仲間であるジュレスの状態を確認し、ジュレスが魔王から覗かれていることを知ったのだった。


「わ、私はジークを見つけ出すためにわざと逃がされたということか?」


「……」


 バッ! ガシ!


 馬車から飛び出そうとしたジュレスの手をジークが掴んだ。


「離せジーク!私がここに居たら!」


「行かせないぞジュレス」


「魔王がここに来るぞ!」


「返り討ちだ」


「さっき私に助けられたばかりだろう!」


「知ったことか」


「ジークいい加減に……!」


 ガバッ!


 ジュレスに抱き着くジーク。


「!」


 それを引き剥がそうと暴れるジュレス。


「もうあんな思いは御免なんだ。絶対に守って見せる。行かないでくれジュレス」


「ジーク……!」


 ジュレスが無抵抗になった。


「はわわわわわ」「ニャフー!」


 アリエスとウーラが目をキラキラさせて二人の動向を見守る。


「わかった……だが私を重要施設に入れたり作戦会議に参加させるのは無しだ」


「ああ、一刻も早く魔王を倒し、お前を自由にしてみせる」


 ジークは魔王討伐の意志を強固にした。




 ■■■




「はわわわわわ」


 勇者にジュレスの五感を受信できることがバレてしまった。勇者は仲間の異常を察知できる何かしらの力を持っていたようである。


 そして、その後の勇者達のドタバタに動揺しまくりの俺である。


 だが流石は勇者、勇ましき者よ。女性に抱き着いてあんな台詞を言うなど、俺にはできそうにない。


 そんなことより、アリエスとウーラが勇者の仲間になっていたことが問題である。


 もし勇者がアリエスに手を出していたら即飛んで行って首ちょんぱである。 ※当作品にNTRタグはつきません。


 いやそうではなく、もし俺の他殺死計画が完遂される前に勇者が来てしまったら、アリエスやウーラと戦うはめになってしまう。


 そんな悲劇は避けたい。何としても他殺死しなくては。


 俺は他殺死の意志を強固にした。


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