表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
8/13

新たな闖入者


 「ですから、その万が一にもアルフォーヌ公爵家のものであったとしても、わたくしの物だと断定出来ないのです。それなのに貴方がたは、わたくしを端から疑いにかかってきましたね?しかもこのような晴れの日に、大衆の目の前で……弁護士を通して、訴えさせてもらっても文句はありませんわよね?」


 わたくしは愕然とする彼らをキツく睨みつけます。

 不敬罪?上等ですわ。


 「それからデメトリス様……貴方はわたくしが血を見ても動揺しなかったことを指摘しましたが、それは当たり前です。何故ならわたくしは5年も前から戦場に赴かれた兵士の元へ慰安訪問しているのですから。そのような僅かな血ごときで、生死をかけて我が国を守ってくださる兵士達に顔向けなど出来るはずがありません!」


 これまで声を荒げることのなかったわたくしが一喝したことに驚いたのか、はたまた慄いたのかは分かりませんが、彼らの肩が目に見えて“ビクッ!”と震えたのが分かって、ちょっと爽快な気分です。

 けれど、いい加減他人の目に晒されたくありません。

 というか、ここまで来てどうして教師が一人もこの騒ぎを収めようとしてくださらないのかしら?


 わたくしがそんな風に思考を張り巡らせた、まさに時でした。


 「やあ、なんだか楽しそうなことをしているね?」

 「ルゥラァァァァァァァァァ!!」

 「え?お、おにいさ……ぐえぇ!?」


 聞き覚えのある涼やかな声に思わず反応して振り返ってみれば、野次馬の塊がそこだけぽっかりとモーゼの十戒のように開いていました。

 そこにはこの国の第一王子と、その懐刀と誉れ高い我が長兄の姿が――などと視認している間に、わたくしは長兄ルベルト=ルーカス=アルフォーヌに力一杯抱きすくめられ……って!


 ちょ、おまっ……!?キブギフギブギブ!!


 「ああ!愛しのルーラ!可哀想に!こんな大衆の前で見世物みたいにされて!」

 「ル……ルベ……ぉ、にぃ……さ……っ!」


 王家に仕える騎士の中でも特に優秀な方達を集めた精鋭部隊の聖騎士隊に所属している長兄は、いわゆる細マッチョです。

 ふんわりとカールした栗色の髪に空色の瞳をした端整な顔立ちをしたルベルトですが、脱ぐと腹筋がぱっきり割れています。筋肉もりもりです。

 そのギャップが堪らないと女性に大変人気で、名だたる名門貴族の淑女達から婚約の申し込みが殺到しています。

 それなのに本人は「ルシエラ以上と欲は言わないけど、せめてルシエラ並みに可愛くて性格が真っ直ぐした凛とした子じゃないとやだなぁ」などとのたまい、未だ独身貴族を謳歌しています。

 しかも最近では家督を次兄に譲って余生をわたくしと共に過ごしたいと世迷言を言い出し始めたので堪ったもんじゃありません。

 早くいいお嫁さんをもらって、お父様の跡を継ぎ、両親を安心させてあげてほしいものです。



 ――てゆーか、いつまでぎゅうぎゅう抱き締めてんだこのシスコン!?マジで窒息死するぅぅぅぅぅぅ……っ!!



 「ルベルト、君は自分の馬鹿力をもっとちゃんと理解すべきだ。そろそろルーラを解放してあげて」


 見えないはずの魂が口から出てそのままあっちの世界へ飛びさそうとした寸前、天のお告げによりわたくしは辛うじて一命を取り留めました。


 「あ、あ……あに、うぇ……?」

 「ルシフェル閣下……!」


 ルシエド様の目が限界まで開かれ、その側にいたデメトリス、ジャックス、ヒューヴェスの3人は顔色を悪くしながらも慌てて膝を折る。


 繊維のような金糸の髪に聡明な瑠璃色の瞳を持ったこの人こそ、我が国の第一王子ルシフェル=ロージュ=シルベキスタ。ルシエド様の腹違いの兄君です。

 先にお産まれになられたのはルシフェル様ですが、ルシフェル様のお母様は身分の低い第三妾妃。一方、ルシエド様のお母様は由緒ある侯爵家のご令嬢で、尚且つ正妃様の次に位の高い第二側妃であらせられることから、身分制度の厳しいこの国では次期国王はルシエド様ということはほぼ決定事項でした。

 個人的な意見を言えば、現在進行形で恋愛脳のお花畑ボンクラ王子に、国民を第一に考えるべき国王の大役が務まるとは到底思えませんけどね。

 それはそうと、またしても予期せぬ人物の登場にいい加減わたくしの頭もショートしそうです。


 本当に何なのさ……この展開……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ