第7話(最終話) 無事に終え、そして
お帰り。
父親からのその言葉で。
泣きそうになるラヴィ。
しかし今はグッと堪えて。
報告をする。
ヘルメシア帝国皇帝《シルベスタ3世》と、《二国共同の偽装工作》に付いて合意した事。
《ケミーヤ教》なる集団の存在が、想定より脅威と成りつつ有る事。
作戦遂行の為に、今から素早く体制を整える必要が有る事。
そして、《幻の錬金術師》の凄まじさを伝える。
黙って報告を聞く国王。
全てを理解すると。
「分かった。早速〔ネシル〕へ使いを出そう。」
「ありがとうございます。」
「ところで、今の報告の中で……。」
「気になる点でも?」
尋ねるラヴィ。
国王の顔から、再び父親の顔になると。
ポツリと言った。
「その錬金術師に惚れておるな?」
「な、何を仰って……。」
父親の言葉に動揺するラヴィ。
必死に否定するも、国王が続ける。
「話の中で、彼の事が一番気合を入れていたぞ。」
どれだけあいつが凄いかを、伝えたかっただけなのに。
何故か、そう捉えられてしまった。
『そう言う事ですよ』と、心の中でセレナが呟く。
否定しようとすればする程、テンパってしまうラヴィ。
椅子から立ち上がると、ラヴィの前まで国王が近付く。
そして膝間付くと、ラヴィの頭を撫でながら国王が言う。
「何としても彼の心を捕らえよ。良いな。」
そして『この様な身分で無ければな』と、ボヤきにも似た言葉を発する国王。
王女と言う立場で無ければ、大手を振ってその胸に飛び込めるものを。
済まないと言う気持ち。
それを察するラヴィは。
「いえ。この様な身で有ればこそ、出会えたのです。寧ろ感謝致します。」
その言葉に救われた様な気がする、国王だった。
こうして無事、報告は終わった。
秘密裏の帰還なので、今夜は女中の寝室で寝る事となった。
結局、弟妹達との面会は叶わず。
致し方無いが、少し寂しい。
チラッとでも顔を見られたなあ。
そう呟くラヴィ。
それを聞いたセレナは。
女中の姿で部屋の前を通過しましょう。
上手く行けば、遠くからでも見る事が出来るかと。
考えた挙句、その提案に乗る事にしたラヴィ。
さて、今夜はもう遅い。
明日に備えて寝るとしますか。
パジャマに着替えて、ベッドに潜り込もうとした時。
2人の姿が。
シュンッ!
消えた。
同じ日の日中。
ロッシェは、近衛隊の騎士達と一緒に稽古をしていた。
世話になった町も、それに通じる道も。
順調に整備されていた。
これで後顧の憂いも無い。
安心して旅立てる。
ラヴィ達が、旅の誘いをしに来るまで。
パラウンドに留まり、自分を高める為もっと鍛えるつもりだった。
稽古も一段落し、昼食の休憩を取る。
近衛隊と談笑するロッシェ。
そういや、もう宮殿に着いたかなあ。
無事役目を果たせると良いが。
ふとそう思った時。
ロッシェの姿が。
消えた。
次の日、朝早く。
アンは再び、兄の元へと旅立とうとしていた。
両親と話し合った結果、『兄はやはり黒歴史と関わりが有る』と言う結論に達した。
それについて、今も苦しんでいるかも知れない。
早くフォローしてあげたい。
両親が屋敷の前で見送る中、歩み始めようとしたその時。
アンの姿が。
消滅。
その様子を目撃した者は、一様に動揺する。
そこへ、1通の手紙らしき物体が空から降って来る。
手に取る目撃者達。
真っ白な紙に、虹色に輝く文字。
そこには大きく、こう書かれていた。
招待状。
ボクが直々に【次のステージ】へと案内したよ。
だから安心して欲しい。
また何時か、皆の前に姿を現す。
約束しよう。
この名に懸けて。
《魔法使い》より。
そして。
魔法使いが指し示すステージへと、案内された一同は。
手荒い歓迎に遭っていた。
ドサッと落とされて。
尻餅を付いた格好。
すぐには、ここが何処か判断が付かない。
焦る一同。
そこへ、ニンマリとした顔をしたあいつが。
声を掛けて来る。
一言、『お帰り』と。
それは、新たな旅の始まりを告げていた。
これにより、支流となった流れは又本流へと合流した。
これから先は、【本編】をご覧頂こうか。
いかがでしたか?
〔外伝その1〕の中で新たに出て来た事も、後々本編に絡んで来ます。
それまでお楽しみに。
この小説をお読み頂き、ありがとうございました。