生まれ持つ力
騎士団に入るための試験準備のため仮釈放をされたナタネ。服はボロボロだったため騎士団が用意した洋服を着ている。
「正直、いっぺんにいろんなことが起きすぎて何が何だかわかんねえ。村の人たちは全員死んだって言ってたよな…ばっちゃん…」
牢から解放され、落ち着く時間を得たナタネ。時間が経つに連れ少しずつ状況を理解していく。突如村を襲った魔物により、育った故郷を失い心が沈む
「私達が早く到着していれば、貴方に罪を着せず村の者たちを救えたかもしれません。誠に申し訳ございませんでした」
謝るのはバルドに試験までの1週間見張り役として任されたバルド直属の部下ロウェル。細長い四角の眼鏡をかけ、白い短髪の髪の青年。普段は騎士団の服を着ているが、騎士の身分を証明する服を着て見張り役をするには目立ちすぎるため一般的に流通されている服を着ている。
「魔物が現れるってわかっていたならまだしも、報告を受けてからなら。ばっちゃん達も空で休んで、俺が英雄になる姿をちゃんと見ててくれ」
「貴方は相当強いんですね。魔物に襲われたとはいえ、故郷を失うというのは…いささか苦しいと思うのですが」
「苦しいよ。苦しいに決まってる。けど俺が下を向いてる暇はない。時間があるならまだしも俺には時間がねえんだろ?納得はしてねえけど…やらなくちゃならないことぐらいはわかる」
悲しい感情を押し殺し、決して折れないことを自分の心に誓う。
ロウェルは一瞬下を向き、目を瞑る。
「貴方はやはり強いです。問い詰める形で伺ってしまい申し訳ありませんでした」
「別に大丈夫だよ。それよりロウェルさんはこの1週間ずっと俺の側にいるのか?」
「監視を命じられているので基本側にいますが、私にも他の仕事がございます。なので、こちらを」
そう言って取り出したのは小さく、中心に瞳のようなものが描かれた球体の物。
「これは?」
「これは追跡、監視用のソウルです。騎士団で作成しました。これを貴方に付けます。本来は疑わしいものにこっそり付けて情報などを得るものですが、今回は伝えたせていただきます」
「付けるってどうやるんだ?」
「こうです」
ロウェルはソウルを指で弾き、ナタネの頭にぶつける。ソウルはそのまま頭の中に取り込まれる
「いた…くない?頭に当たった気がしたけど…」
「物理的なダメージはありません。今は付けると言及しているので、ナタネさんは気づきましたが本来は気づくことはありません」
「なるほどな。頭の中に入っていったけど大丈夫なのか?」
「はい、人間の機能的に問題はございません。ソウルが頭の中に取り込まれ、貴方の視覚情報を私も見ることができます。それで監視させていただきます」
「ほぁ〜。よくできてんだな。わかった!」
ロウェルは少し笑みを浮かべ、一礼する。
話しながら歩いていると騎士団学校の近くにくる。騎士団学校はとても大きく、校庭にはそれぞれ訓練をするものたちがいる。
「ここが騎士団学校か?みんな相当訓練してるんだな」
「はい。騎士団学校で御座います。今訓練されている方は今年度の卒業生ですね。つまり」
「俺が1週間後試合する相手ってことか」
「そういうことです。私は貴方の精神的強さは理解しましたが、戦闘においての強さはご存知ではないので正しいことは言えませんが、今年度の卒業生はかなり強者です。気を抜くのはお勧めしません」
ナタネは深く息を吐き、宣言する
「俺は負けない。必ず勝つ」
「その意気込みです。バルガ隊長が何を貴方に思っているのかはわかりませんが、私は少なからずナタネさんも応援しています」
「"も"なんだな」
ナタネは応援されたのが嬉しく、照れ隠しで少し意地悪な言い方をし笑う
「そうですね。私はここの教師も兼任してますから、貴方だけ応援とはいきません」
「教師?」
「ええ。ここの学校は現役の騎士が何人か実技を教えています。その1人が私です。ナタネさんには申し訳ありませんが一旦ここでお別れです」
「今から指導か?だからこっち側に来たんだな」
「そうです。指導です。こっち側に来たのはここに用が私があったからと言うのもありますが、貴方にここで訓練しているみんなを見てもらいたかったのです」
ナタネはもう一度訓練をしている生徒に目を向ける。実践形式で木刀を持ち稽古をしているもの、基礎トレーニングをしているものそれぞれが努力をしている。
「ここで訓練をしている人たちを見ればいい刺激になると思いましたので」
「刺激になったよ。この1週間俺はちゃんと鍛えないといけないな」
「ナタネさんがよろしければですが、どこかで私と稽古をしませんか?」
「いいのか!して欲しい!俺ちゃんとした対人戦はないから助かる!!!」
ナタネはガッツポーズを決め、喜ぶ
ロウェルはメガネをくいっとあげ、ナタネに話す
「では、6日後。私に貴方の実力を見せてください」
「わかった!それまでにもっと実力をつける!」
騎士団学校の校門に一礼をし、中に入るロウェル。またなと手を振り、見届けるナタネ
見送ったナタネは顎に手を当て、悩む
「実力をつけるとは言ったものの、俺はこの王国知らねえしなぁ。そもそも何があるかもわかんねぇ…一旦探索か!」
そう意気込みエサローサ王国の商店街に向かう。
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商店街着いたナタネ。騎士団学校付近の風景とは違い、数々の出店で賑わう商店街。老若男女に獣人、竜人、様々な種族の人で溢れかえっている。
「うひゃ〜、こんな量の人見たことねえ…人酔いしそうだ…」
リルセラ村は人口がとても少なく、外の世界に出たことないナタネにとって多くの人を見るという行為で気持ちが悪くなる。
右手で口を押さえ、商店街の壁に寄りかかる座る。
「気持ちわりぃ…」
「あの…大丈夫ですか?」
「んぁ?」
吐き気を抑えているナタネに対して、声を掛ける女性。真っ白のローブで顔を隠していて姿はわからない。
「酷く具合悪そうに見えまして…」
「え、あぁ…あんまりこんな人の量見たことなくて人酔いしちゃってただけ、大丈夫!」
「そうですか。こちらのお水よかったら飲んでください」
そう言ってお水の入った容器をナタネに近づける。ナタネはその容器を手に入れ一言礼をする。
「ありがとう!えっと…ローブのお姉さん?」
「いえ大丈夫です。私は…ミミです」
「ミミさんか!俺はナタネ!よろしく!」
ナタネはそう言って右手を差し出す。すこし戸惑いながらもミミまでを差し出し握手する
「ナタネさんは王国の外から来た方ですか?」
「そ!俺はリルセラ村ってとこから来た…というか連れて来られた?んーまあそんなとこ!」
「なるほど…よくわかりませんが何か特別な事情があるんですね」
「そうそう!でも本当に水ありがとう!マジ助かった!」
ナタネはお礼をし水の容器を返そうとする。その時バランスを崩し、ミミのローブにかかってしまう。
「きゃ!」
「わぁあ!ごめん!ごめんなさい!一旦ローブ下ろして!」
「待って!」
ローブにナタネが触れるとさっきまで認識できていなかった姿が見えるようになる。ミディアムヘアーの金髪で耳に狼のイヤリングをつけ、小柄な女性。
「ここではなんです!こっち来てください!」
「え!?」
そう言ってミミはナタネの手を引き路地に入る。
「急にどうしたの!」
「ここまで来れば大丈夫です。すみません。急に。あのローブを下ろしますが驚かないでください」
ローブを下ろすミミ。少し気まずそうな表情をしている。
「驚く…?何に?」
「え、いや私の姿を見て」
「さっきロープに触れた時も見えてたけど、めっちゃかわいいと思う!」
「ええ!?さっき見えてたんですか?それにかわいいって話じゃなく…」
驚きの表情を浮かべるミミ。ん?と首を傾げるナタネ
「え、あ…いえなんでもないです。すみません」
「そう?ならいいんだけど」
「そんなことより先ほど仰っていた触れた時にも見えてたって話、本当ですか?」
「え、うん?本当だよ。水かけちゃったからローブを下ろそうとした時に触れたからその時見えたよ」
なんで?という表情を浮かべるミミ。路地裏の階段に腰を下ろすナタネ、続いてミミも腰を下ろす
「その私のローブ特殊で〝認識阻害“っていう我術を使っているんです。だから私が脱がない限りは私の姿を認識できないはずなのですが…」
「でもちゃんと見えたしな」
「あの失礼ですが我術はなんですか?」
「我術?さっきも言ってたけど我術ってなに?」
きょとんと目を見開くミミ。その顔を見てなんかまずいこと言った!?と不安になるナタネ
「我術を知らない方がいらっしゃるとは…」
「えぇ…そんなメジャーなの?」
「常識だと思っていました…」
「マジか…」
常識を知らなかったナタネは肩を下げて凹む。その様子を見てミミは慌てる
「知らない人も居ると思いますし!誰でも最初から知っているわけではないです!!」
「カバーが痛い」
「え、あ、ごめんなさい!えっと…我術ですね。我術はこの世に生を持った時点で持つ自分自身の力のことです。基本的にみんな持っています。たまにない方もいらっしゃいますが…」
「そうなのか…俺そんなの知らないからたまにの部類なんじゃ…あ、もしかして特異体質のことか?」
「特異体質ですか?」
「あぁ、俺魔物との戦闘経験があるんだけど魔物が放つ物理攻撃以外効かないんだよな」
「なるほど…多分そちらの影響ですね。私は術についての知識がかなりあるのですがおそらくナタネさんの我術は〝虚式静滅“かもしれません。それなら先ほどのも説明がつきます」
難しい単語が出てきて頭を抱えるナタネ。簡単に説明しようとするミミ
「えっとナタネさんのは魔物の持つ力おそらく獣術を今まで無効にしてきたんだと思うのですが、そうではなくあらゆる術を無効にする我術だと思います」
「術の名前が多くて理解できないんだけど、つまり無敵的なやつ?」
「簡単に言えばそうですね。ただ〝虚式静滅“は自分の右手が触れている時に無効なので完全な無敵ではないです」
「なるほどな…知らずして使ってたけどそういう力だっただな」
ここでミミが首を傾げる。
「その我術を使えたのは何故ですか?基本きっかけがあると思うのですが…」
ナタネはあぁ〜という表情を浮かべ答える
「俺の育ての親のツユって人が“お前は良い力持ってるな〜“みたいなこと言って教えてもらったかな」
「なるほど…我術を見抜く人…ですか」
「そんなすごい人じゃないからただ知ってただけだと思う」
ミミは失礼なことを言ったなと一礼をし、ナタネは大丈夫だよと手振りをする
「ミミさんの我術はなんなの?」
「それは…」
ミミが答えようとするとミミの服のポケットからチリリと音がなる。
「あ…ナタネさんすみません。私時間がないので今回は…」
「え、そっか!本当に水ありがと!マジ助かった!!」
「いえ、困ってる時はお互い様です。あの…ナタネさんは外から来た人なんですよね。もしよかったらまた今度外のお話をお聞きしたいです」
「全然良いよ!俺もそんな詳しいわけじゃないけどな!」
「ありがとうございます!ではまたいつか」
「おう!またな!」
ミミは一礼をし、ローブを被り直して路地裏を抜ける。ナタネは1人階段に座って空を見上げてつぶやく。
「可愛い人だったな〜。てか外のことって言ってたけどあんまり出たことないのかな」
ふぅと一息ついて、またつぶやく
「〝虚式静滅“…生まれた時に持つ力…か」
自分の力を理解したナタネは人を避け、指定された宿に向かう
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「容疑者…って立場が泊まっていい場所なのかよ…」
ナタネは用意された宿の豪華さに驚いていた。その時怒号が聞こえる。
「だから!!俺に指図すんなって言ってんだよ!!!」




