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双鬼  作者: 夏樹
第一章 『銀狼騎士』
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プロローグ『あなた達はきっと幸せに』


「はぁはぁ…こっちだ!こっちに来い!その子達だけでも!!!」


 長年過ごした里は暗闇を照らす月光の下で、赤い炎に包まれる。あちらこちらから聞こえる叫び声。

 この里は、自分たちの血は今この夜に途切れる。


一一瞳に映るこの光景は俺の脳裏に保存される一一


 どうして?なぜ?今日この日なのか。自分たちが何をしたというのか。そんなことを考える時間はない。

 自分の命が失われる前にこの子達を未来に繋ぐ。ただそれだけでいい。


一一鼻から感じる匂いは俺の脳裏に保存される一一


 里から山の麓に繋がる川がある。幸いにもここはまだ被害がない。


「こっちだ。この川を降れば山の麓に辿り着く。そうすればきっと…きっと誰かがこの子達を!」


「なんで今日なの…?まだ私この子達を…この子達をほんの少ししか…」


 2人の男女は幼き子を抱きしめ、涙を浮かべ、嗚咽をあげる


一一肌から感じる感触は俺の脳裏に保存される一一


「この子達をはやく逃がそう。覚悟を決めるんだ。俺たちの…この里の未来を託すんだ」


「まだまだ少ししか…」


「未来が途切れる前に!!!」


「ごめん。ごめんね…私達のところに生まれてしまって…」


 母親に抱かれる2人の赤ん坊は無邪気な笑顔を向ける。


「笑ってくれるのね…。ねえあなた。この子達の名前は…」


 父親は目を瞑り、答える


「もう決まってるよ。この子達の名前は…」


『"ステラ"と"アスタ"』


「同じことを考えていたのね」


「そうだな」


「ステラ、アスタ。私達の所に生まれてきてくれてありがとう。あなたたちを私達は愛してるわ」


一一耳からこの声を一一


 川の付近でゴォっと音を立て黒い煙が舞い上がる


「もう時間がない。ステラ、アスタ。俺たちの未来を2人に託す。生まれてきてすぐに申し訳ない」


「ステラ、アスタ。私達は幸せでした、もっと幸せになりたかった。2人は…あなた達はきっと。あなた達はきっと幸せになって。私達の分まで幸せになってね」


『さようなら。ステラ、アスタ』


一一耳からこの声を。俺達の幸せを願う声を脳裏に保存される一一


 2人の赤ん坊は川を降っていく。降っていく赤ん坊を涙を浮かべ見送る男女は業火に焼かれ、生涯をここで終える


一一あなた達はきっと幸せに一一



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