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ミーティア戦記ー厄災の覚醒ー  作者: どりるD


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第5話 ここからだ

冷たい春の風が、ゆっくりと吹いていた。


北の都市アオイ――

ヒノモリから遠く離れたこの地では、まだ冬の名残が残っている。


アカデミーの門へと続く道の端には、溶けきらない雪が残り、その間に並ぶ桜は咲き始めたばかりだった。

淡い花びらが風に乗って舞う。


冬と春が、まだ同時にそこにあった。


カリンは立ち止まり、目の前の建物を見上げる。


巨大な白い校舎。

その中心に掲げられた紋章。


O.E.D.O防衛隊員候補生養成学校

――通称アカデミー。


ここはO.E.D.Oの隊員を育てる場所であり、本物の強さを学ぶ場所だ。

ただし訓練期間はたった一年。

この一年を生き残った者だけが正式な隊員として戦場へ出る。


カリンは拳を握る。

「よし……ここからだ」


そう呟いた、その時。


「よ、緊張してんのか?」

横から声がした。


振り向くと、アギが立っている。

ニヤニヤしているが、よく見ると肩が少し強張っていた。


「別に」

カリンが短く答える。


「ハハ……ほんとか?」

アギは笑うが、声は少し早口だった。


「お前こそ顔ガチガチだぞ」


「あーうるさい。帰ろうかな……」


そのやり取りを少し離れた場所から見ていた少女がいた。


ナナハだった。


「カリン君、アギ君……おはよう」

小さな声で言う。


「入学式、始まっちゃうよ」


三人は顔を見合わせ、歩き出す。


「よっしゃ!」


カリンは気合を入れて門をくぐった。

その瞬間、胸が少しだけ高鳴る。



大講堂には新入生たちが集まっていた。

ざわめきの中に期待と緊張が入り混じっている。


やがて――

「これより、第67期O.E.D.Oアカデミー入学式を開始する」


場内アナウンスが響いた。


その直後、壇上に一人の男が現れた。

白髪に鋭い目、軍服を身にまとった老人。


会場の空気が一瞬で引き締まる。


――O.E.D.O総司令官。

ジンライ・キッショウ。


その名が告げられた瞬間、ざわめきが広がる。


「おい……あれが……」

「O.E.D.Oの“最強の盾”……」

「マジかよ……」


ひそやかな声が、波のように広がっていく。

その場にいる全員が知っている。


あの男が立つ場所は、決して破られない。

故に――“最強の盾”。


カリンの祖父だった。


ジンライは静かに会場を見渡し、口を開く。

「新入生諸君、よくここまで来た」

低くよく通る声。


会場が静まり返る。


「このアカデミーは、凶悪な宇宙人から地球を守る戦士を育てる場所だ。ここにいる全員が、将来の地球を支える存在になる」


そして、わずかに目を細める。


「だが」


空気が張り詰める。


「全員が卒業できるわけではない」

「ここは選別の場だ。弱い者から消えていく」


沈黙。

やがて、ジンライは一言だけ告げた。


「生き残れ」

それだけだった。


(やってやる)

カリンは、壇上のジンライを睨み据えた。



入学式が終わり、新入生たちはそのまま大講堂に残されていた。

ざわめく空気。

壇上のモニターが点灯する。

表示された文字を見て、空気が一瞬で固まった。


「……は?」

誰かの間の抜けた声。


「いや待て待て待て!!」

アギが思わず声を上げる。

「なんだこれ!?クラス名おかしいだろ!!」


モニターには、こう並んでいる。


・キリン組

・ゾウ組

・シカ組

・ウサギ組

・リス組

・ライオン組

・パンダ組

・コアラ組


「動物……?」

「どういうこと……?」

ざわめきが広がる。


「……コアラ?」

アギが眉をひそめる。

「いや……なんでそのチョイス?」


「……オレたちだな」

カリンが静かに言う。


【コアラ組】

そこに、自分たちの名前があった。


「うわ、マジか……」

アギが息を吐く。

「別に悪いわけじゃねぇけどさ……」

「なんかこう……ピンとこねぇな」


ざわめきが続く中、アナウンスが流れる。

『各自、指定された教室へ移動してください』



長い廊下を、カリン、アギ、ナナハの三人が歩いている。


周囲にはすでに人影は少なく、ほとんどの生徒は先に教室へ向かっていた。


「やばくないか、これ遅れてる?」

アギが小声で言う。


「……少しだけ」

ナナハが答える。

「さっきの案内表示……一部、更新遅れてました」

「別ルートの方が近いです」


「は!?マジで!?」

アギが慌てる。

「いや言うの遅ぇよ!」


「……確認してました」


カリンは気にせず前を向いたまま歩く。

「どっちでもいいだろ。行くぞ」


その時だった。


カツ、カツ、カツ。


後ろから、規則正しいヒールの音。


三人は同時に振り返る。


派手なコートに長い髪の人物が、すぐ後ろまで迫っていた。


「……うわっ」

気づいた時には、もう横に並ばれている。


「あれ?」

違和感に気づく。


三人は同時に足を止めた。


その人物は三人の前で立ち止まり、フッと笑う。


「なぁに?その顔」

少し身をかがめる。


「アタシが綺麗すぎて固まっちゃった?」

低い声だが妙に色気がある。


三人は何も言えない。


その人物は満足そうに笑った。

「まぁいいわ。ボーっとしてる子は、この学校じゃすぐ置いていかれるわよ?」

そう言って教室へ入っていく。


「……今の」

アギが小声で呟く。


「……誰?」

ナナハも呆然としている。


「男?……先生……か?」

三人は顔を見合わせ、慌てて教室へ入った。



教室では、さっきの人物が教壇に立っていた。ニヤリと笑う。


「はい、静かに」

一瞬で静まり返る。


「アタシがこのコアラ組の担任。ハニー・デューンよ。気軽にハニー先生って呼んでね♡」

軽くウインクする。


「ワタシの担当は心理学よ」

生徒たちがざわつく。


「えっと…先生!!」

アギが堪えきれず口を開く。


「クラス名どうなってんすか!動物って何!?幼稚園っすか!?」


ハニーはくすっと笑う。

だが、その目は笑っていない。


「このアカデミーでは、能力・適性・相性を見てクラスを編成してるの」


ざわめきが止まる。


「単純な成績順じゃないわ」

「前衛、後衛、支援、特殊……全部をバランス良く配置してるのよ」


黒板に並ぶ動物の名前を軽く叩く。


「クラス名?ただのラベルよ♡」

くすっと笑う。


「……って言いたいところだけど」

教室の空気が、わずかに静まる。


「この世界ね、昔よりずっと“静か”なの」

「戦いの中で、生態系は壊れた。消えた命も多い」

「だから――忘れないために、名前を使ってるの」


すぐに微笑む。

「ま、授業には関係ないけどね♡」


「だから――油断するのよね」


「“コアラだから弱い”とか」

「“ライオンだから強い”とか」

「そういう思い込みでね」


「“結果”だけよ♡」


空気が止まり、数人の男子が息を呑んだ。


教室の空気が引き締まる。

アカデミー生活は一年。

ここにいる全員がライバルだ。


競い合い、ぶつかり合い――

それでも、いざという時は支え合う。

それが、この場所だ。


「まずは顔と名前覚えないとね」

端末を操作し、モニターに文字が表示される。


新入生自己紹介。

「順番に立って、名前と目標を簡単に言いなさい」

手を叩く。

「はい、いきましょう♡」



最初に立ったのは、アフロヘアの黒人の少年だった。


「マーシュ・クリスティオです。特に突出した分野はありませんが、一通りは対応できます」

教室がざわつく。

「平均的に、って感じです」

「でも――それが一番、取りこぼしが少ない」

「平和を守るには、十分だと思ってます」



次に立ち上がった男。

教室の空気がわずかに変わる。


「ダリアン・ナイトレイです」


教室がざわめく。

デルティー星名門ナイトレイ家。

「アカデミーは通過点だ」

「首席で卒業し、O.E.D.Oの上層に入る」

静かに言い切る。


「そのために来た」

それだけ言って座った。



「セイラ・サヤカミです」

教室の空気が張り詰める。

凛とした女性の声。

「正規のO.E.D.O隊員になります」

「……必要だから、強くなる」


それだけ言って座った。



「ハルカ・ミドウだ」

教室の空気が少しだけざわつく。

立ち上がったのは、リーゼントの男。

鋭い目つき。崩れない髪型。

「ケンカじゃ――守れねぇって、思い知った」


「だから来た」

「今度は……ちゃんと強くなる」

それだけ言って座った。



次に立ち上がったのは、真面目そうな青年だった。

「ノート・アラントです」

「O.E.D.O隊員となり、人類の平和を守るために来ました」



「アギ・ミクリヤっす!」

「えっと……現場より、機械いじってる方が向いてると思うんで……」

「技術開発班とかに志望っす」



「ナナハ・マユムラです……」

「あの……オペレーター系に、行けたらいいなって……思ってます」



やがてカリンの番が来た。

「カリン・ナナツキです」


教室がざわめく。

――あれがジンライ司令の孫か。


「目標は――ジンライ総司令官を超えることです」


空気が一瞬、止まる。


「オレはここで必ず強くなり、誰かを守れるヒーローになります」

深く頭を下げる。


――ざわ…。


「マジかよ…」

「ジンライ越えって…」

「……ヒーローって、何言ってんだ」


ざわめきは次第に広がっていく。


その空気を、ヒールの音が断ち切った。

カツ、カツ。


「いいんじゃない」

ハニー先生が口元をわずかに上げる。

「大きい目標、結構」


教室が静まった。



順々に自己紹介が終わり、教室の空気が少し緩む。


ハニー先生が手を叩いた。

「はい、これで全員ね♡」


教室を見渡す。


「このクラスは40名。ここから一年、一緒にやっていくわよ」


軽く笑う。

「――じゃあ、現実見せてあげる♡」


端末を操作し、モニターが切り替わった。


第67期アカデミー入学ランキング。


教室がざわめく。


1位 セイラ・サヤカミ

2位 ダリアン・ナイトレイ

……

170位 カリン・ナナツキ

181位 アギ・ミクリヤ

190位 ナナハ・マユムラ


「……え?」


「ジンライの孫じゃなかった?」


ざわめきが広がる。

その時、チャイムが鳴った。


「はい、今日はここまで」

ハニーが軽く手を叩く。


「いい?さっきも言ったけど――結果がすべてよ♡」


そう言って教壇を降り、扉へ向かう。


カリンの横を通り過ぎる、その瞬間――


「……入試の測定」

ごく小さな声。

「ちゃんと隠してたつもり?」


「……え」

ほとんど声にならない。

カリンの指先が、わずかに止まる。


ハニー先生は、そう言い残し教室を後にした。


途端に、張り詰めていた空気が緩む。

抑えられていたざわめきが、再び広がった。


ダリアンが立ち上がる。

それを待っていたかのように、二人の男子が後ろについた。


三人はそのままカリンの席へ向かった。

クラスの視線が集まる。

ダリアンは机を軽く叩いた。


コン。


「キミ、ジンライ司令官の孫なんだろ?」


黙って見上げるカリン。


ダリアンの後ろで、取り巻きの二人がニヤつく。


一人が鼻で笑う。

「170位ってさ、マジかよ」


隣の男も口元を歪める。

「それで“総司令官を超える”って?」


二人の笑いが重なる。


「いいよなぁ、コネ持ちは」

「最初から上に行くルート用意されてんだろ?」


ざわめきが教室に満ちる。

空気が、少しずつ濁っていく。


――コツ。

ダリアンが一歩、前に出た。


「170位」

静かに言う。


それだけで、周囲の声が止まる。

「その順位で――ジンライ総司令官を超える、か」


「ヒーローなんてものは――弱者の願望だ」

空気が張り詰める。


カリンの拳が、机の下でわずかに軋む。


一瞬だけ。


すぐに力が抜けた。

「……」

視線だけは、逸らさない。


その時。


「おい!」

アギが、思わず立ち上がる。

「言い過ぎだろ!」


ダリアンが、ゆっくりと視線を向ける。

「……なんだよ」


その後ろで、男が肩をすくめた。

「落ちこぼれ仲間か?」


もう一人が、鼻で笑う。

「負け犬が吠えてるだけじゃねぇか」


アギの顔が、みるみる赤くなる。

足が、わずかに震えていた。

それでも――

カリンの前で、引くわけにはいかなかった。


「てめぇ……」


ナナハが、そっと腕を掴む。

「や、やめよう」


アギは歯を食いしばる。


ダリアンはわずかに笑った。

「言い過ぎ、か」


「事実だろ」

「170位が何を言おうと、評価は変わらない」


背後で、取り巻きたちがわざとらしく笑う。

その笑いは、明らかに見下していた。


背を向けて三人は去っていった。


残された教室には、重たい沈黙だけが残った。



夕方。


寄宿舎の廊下は静かで、窓の外では桜が揺れていた。

新入生たちはそれぞれ荷物を整理し、部屋へ入っていく。


このアカデミーで過ごす時間はたった一年。

その一年で生き残れなければ、隊員にはなれない。


――訓練は、月曜から土曜まで続く。


カリンは自室に荷物を置いた。

ベッド、机、クローゼット。

軍の施設らしい無駄のない部屋だ。


だが椅子に座ることなく立ち上がり、窓の外を見る。遠くに訓練場が見えた。


「……」

昼の出来事が頭をよぎる。


『コネで入ったのか?』

ダリアンの言葉。


その奥に――


『……入試の測定、ちゃんと隠してたつもり?』

ハニーの声が重なる。


カリンの視線がわずかに揺れる。

(……気づいてたのか)


カリンの拳が強く握られる。胸の奥で熱が燻るが――押し込むように小さく息を吐いた。


――やるしかない。



夜。


自主トレーニングルーム。

カリンが一人、中央に立つ。

目を閉じ、一呼吸。


――整える。


目を開き、一歩踏み込むと同時に短く拳を振る。

ブンッと空気を切る音を響かせながら、そのまま止めずに何度も繰り返す。


「お、やっぱいたか」

振り向くと、アギが立っていた。


「お前もか」


「そりゃな。あれ見てムカつかねぇやつ、逆におかしいだろ」


その時。


「……私もです」

ナナハだった。


三人は顔を見合わせるが、言葉は続かない。

アギが肩をすくめながら、カリンの方へ歩いていく。

ナナハもそれに続いた。


アギが少し迷ってから口を開く。

「なぁ」


カリンを見る。


「なんでさ、あんだけ言われて、何も言い返さなかったんだよ」


ナナハが小さく息を呑む。


カリンはすぐには答えず、視線を落とす。


沈黙。


アギが顔をしかめる。

「おい、なんか言えよ」


カリンは小さく息を吐く。


「……腹は立つ。でも殴る理由にはならない」

「オレは――そういうのじゃない」


アギが眉をひそめる。

「は?どういうことだよ」


カリンは視線を外す。


「――あとさ」

「飯を粗末にする奴は許さない」


アギが一瞬固まる。

「……は?」


ナナハが目を瞬かせる。


カリンはそれ以上、何も言わない。


アギが顔をしかめる。

「いや、待て」

「殴る理由にならないって……どういうことだよ」


頭をかきながら、困惑したように笑う。

「意味わかんねぇんだけど」


ナナハも小さく頷く。

「……うん、ちょっと分かんない」


カリンは少しだけ眉をひそめる。

「……ダメか?」

真顔だった。


一瞬、空気が止まる。


アギは口を開いたまま固まり、ナナハは視線を泳がせる。


そして――


「……っ、はは」

アギが堪えきれず吹き出す。

「いや、ダメじゃねぇけどよ……なんだよそれ」


肩を揺らしながら笑う。

「意味わかんねぇけど……まぁいいか」

「お前、思ってたより変なやつだな」


ナナハも、思わず小さく吹き出す。

「……少し、変ですね」


カリンは眉をひそめる。

「……なんでそんな反応なんだよ」


本気で分かっていない顔だった。


だが、ふっと力が抜け、どこか照れたように

「……そうかよ」

とカリンは小さく呟く。


静かだったトレーニングルームに、三人の笑い声が広がる。


さっきまでの重たい空気は、もう残っていなかった。


アギが肩をすくめる。

「とりあえず……何やる?」


カリンは少しだけ考え、短く言う。

「……走るか」


「いや待て、明日の朝から走るだろ……」

アギが即ツッコむ。


「……じゃあ、基礎だけにする」


「うわ、それはそれでキツいやつ……」

アギが顔をしかめる。


ナナハは小さく頷いた。

「……でも、それが確実です」


三人は並ぶ。


「行くぞ」

カリンが踏み出す。


夜のトレーニングルームに、荒い呼吸が響く。

腕立て。腹筋。スクワット。

単純な動きの繰り返し。

だが――重い。


ナナハも息を乱しながら、必死に食らいつく。

その中で、カリンは止まらない。

動きはまだ粗い。フォームも甘い。

それでも――続ける。

何度も。何度も。呼吸が荒くなる。

それでも、止めない。


やがて――


アギが息を吐き――

その場に、ドサッと尻もちをつく。

「……はぁ、きっつ……」

「お前さ、なんでそこまで頑張るんだ?」


カリンはすぐには答えない。

少し黙る。


拳を、わずかに握る。

昼の光景が浮かぶ。


――170位。

『コネで入ったのか?』


あの言葉がよぎる。

(……こんなもんじゃない)

分かっている。


それでも結果は、これだ。

カリンは小さく息を吐いた。

「……強くなる」


静かな声。


ナナハが、二人の動きをじっと見ていた。

「……証明したいです」

静かな声。

その奥に、わずかな強さが滲んでいた。


そう言って、窓の外に目を向ける。

満月が静かに光っている。


その向こうに、ふと二つの背中が浮かぶ。


帝国を守った英雄――ジンライ。


そして、もう一人。あの背中――


カリンは何も言わない。

まだ遠い。今はただ、追いかけるだけだ。


やがてアギが笑った。


「いいじゃないか」

「ならさ――」


ナナハも一歩前に出る。

「…三人で強くなりましょう」


カリンは二人を見て頷く。


三人は円を作るように立つ。


アギが手を出した。

「約束しようぜ」


ナナハが手を重ね、カリンもその上に乗せた。


「オレたち三人、この一年で絶対強くなる」


「そして、このアカデミーで生き残る」

三人の手が強く握られる。



閉館前の確認に来ていたハニーは、自主トレーニングルームの入口で足を止める。

三人の様子を、静かに見ていた。


「ふーん……面白いじゃない」


カリンの動きを見つめる。

未熟な動きでフォームも甘い。


「……似てるわね」

ぽつりと呟き、夜風が吹いた。



その頃。


O.E.D.O本部、司令官室。

ジンライは一人、机に向かっていた。

窓の外には首都ヒノモリの夜景が広がっている。


ゆっくりと紅茶を飲み、机の書類を見る。


アカデミー新入生データ。

カリン・ナナツキ

入学ランキング 170位


「……カリン、お前は……」


言葉を止め、窓の外を見る。

「どこまで行ける」


静かな夜だった。



同刻。


アカデミー寄宿舎。


部屋の扉を静かに閉めて鍵をかけ、カーテンを引く。一瞬だけ呼吸を整えると、ポケットから通信端末を取り出した。


「……潜入成功」


ノイズ。

『状況は』


「問題ない。内部に入り込んだ。現在は通常の学生として行動している」


『ターゲットは』


男の視線が窓の外へ向く。

トレーニングルームの方角。


「確認済みだ。監視を開始する」


通信が切れ端末をしまう。


その表情は――闇に沈んでいた。



桜の花びらが夜風に舞う。

新しい世代。新しい誓い。

だがその裏で、静かに何かが動き始めていた。



第6話 終

ここまで読んでいただきありがとうございます!


ここからアカデミー編スタートです。

キャラも一気に増えて、いろんなことが起きていきます。


カリンは170位スタート。

ここからどう這い上がるのか、楽しみにしてもらえたら嬉しいです。


あと最後のやつ、しれっと不穏なの混ざってます。

ちゃんと回収できるように頑張ります笑


次回もよろしくお願いします!

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ん?カリンは何で力隠してるんだろ?力拒んどるやん受け入れろ
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