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ミーティア戦記ー厄災の覚醒ー  作者: どりるD


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第4話 3バカトリオ誕生

朝。首都ヒノモリ。


春先――三月の朝はまだ冷えが残り、朝霧の中で巨大な門が影を落としていた。


空を切り裂くようにそびえ立つ鋼鉄のアーチ。その奥に広がるのは――地球圏脅威防衛機構本部。


人類防衛の最前線を担う組織――通称O.E.D.O。

その中枢であり、作戦と実戦のすべてを統括する場所。地球圏外からの脅威に対抗する唯一の盾だ。


そして今日――ここはO.E.D.Oアカデミー入校試験の会場。隊員候補生を選抜する試験が行われている。


門前には数百人の受験生。緊張した呼吸と祈るような呟きが、張り詰めた空気をさらに重くしていた。


その中で、ひときわ視線を集める少年がいた。


カリンだった。


その名はすでに知られている。


「あれってジンライ総司令の孫だ」


小声が波紋のように広がる。


「相当できるのか……?」

「いや、あの血筋だろ。バケモンだって」

「試験、トップ狙いだな」

「本物かどうか、見てみたいな」


人類最強の武神。O.E.D.O総司令官――ジンライ。


値踏みする視線。期待、羨望、嫉妬。


――全部、どうでもいい。


カリンはただ門を見上げていた。


やることは一つ。強くなる。それだけだ。



やがて――


「アカデミー入校試験を開始する」


静かなアナウンスで空気が変わり、誰もが息を飲む。ここから先は選別の時間だ。



第一試験:機動走査


第一試験はフィジカル適性評価。

基礎体力、重力耐性、魔導循環効率を同時に測定する実戦型テストだ。


受験生は負荷ベルトを装着させられ、コース内では局所的に重力が変動する。

三キロの山岳コース、高低差三百メートル。


ただの持久走ではない。

重力に適応しながら機動を維持できるかが問われる。



号砲。


一斉に地面を蹴る。


数秒後――重力変動。


身体が急激に沈む。


「うわっ!」


数人が転倒し、悲鳴が上がる。


重力は一定ではない。

予測不能に変動し、叩きつけるような負荷が襲う。

強弱が乱れ、容赦なくバランスを崩していく。


その中でカリンは遅い方だった。


足取りは重いが崩れない。

呼吸、歩幅、リズム――すべてが一定。


(重力が強くなる瞬間……ここで踏み込めば――)


独自のリズムで走る。だが、その分加速が遅い。



後方で派手に転倒する少年がいた。


「うわああっ!?」


地面に転がる。ボサボサの髪、鋭い目つき――なのに涙目。


「くそ……なんでこんな負荷あんだよ……!死ぬってこれ……!」


文句を言いながらも誰よりも早く立ち上がる。足は震えている。それでも――


「やるしかねぇだろ……!」


再び走り出す。



カリンは一瞬だけ視線を向ける。


(……根性あるな)



結果――カリン、下位。そしてその少年も下位。


「……あれ?」

「ジンライの孫だよな?」

「普通より下じゃないか?」


期待が静かに剥がれていく。


カリンの周囲の空気が、冷えていった。



第二試験:模擬戦適性


試験開始。


受験生は無人戦闘ドローンを相手に戦う。

遠距離、近接――戦い方は自由。


バシュッ! ドォン!


光弾が飛び交い、爆発と衝撃、閃光が入り乱れる。

歓声が上がり、撃破が次々と重なっていく。


観客の視線は強者に集まる。



その中で、カリンは踏み込む。


重力の揺れを読み、最短で懐へ入り込むと、一閃でドローンのコアを正確に断ち切る。

二機、三機と流れるように撃破。

無駄のない動きだった。


(いける――!)


だが――


バシュッ!


撃つが、外れる。


「……は?」


一瞬止まり、再び撃つ。外す。さらに外す。


(タイミングは合ってる……!)


動きは読めている。

回避も立ち回りもできている。


だが、当たらない。


「なんでだ……!」


歯を食いしばる。



そのすぐ隣で。


バシュッ、バシュッ、バシュッ!


三発。すべて命中。



横から乾いた連射音。


バシュッ、バシュッ、バシュッ!


三発、すべて命中。ドローンが連続で爆ぜる。


「……え?」


カリンが振り向く。



半泣きで銃を乱射する受験者。


「外したら死ぬ外したら死ぬ外したら死ぬ!!」


バシュッ! さらに命中。


「いや待てあんの?多すぎだろこれ!!」


バシュッ! 三機同時撃破。


動きはめちゃくちゃ。姿勢も崩れている。


なのに――弾だけが正確に当たる。


アギ――それがこの受験者の名前だった。



「……なんだあいつ」


偶然じゃない。“当てている”。


アギはパニックのまま撃ち続ける。


「説明書どこだよ!!」


バシュッ!


また命中。


「逆に怖ぇよ!!」



カリンは一瞬、目を細める。


(……すげぇな)


だが、自分の弾は当たらない。


「……くそっ」


撃つ。外れる。



「アイツ、やっぱり名前だけか」


そんな声が、遠くで聞こえた。



第三試験:戦術判断


受験生は端末の前に座り、仮想戦場で最適解を導く。


「制限時間30秒」


その時――


「……敵の補給線は、偽装です」


小さな声。


黒髪の小柄な少女。


ナナハだった。


「本命は……後方奇襲」


「根拠は?」


「熱源……均一すぎます。不自然です」


「……正解だ」


どよめき。


ナナハは小さく肩を震わせ、すぐに俯いた。



その隣で。


「この入力遅延、設計ミスだろこれ……」


端末を分解している少年――アギ。


「触るな!!」


「ひっ!?」


しょぼんとするが、視線は端末に戻る。



カリンは二人を見る。


ナナハ。アギ。


(……違う)


ナナハは“見抜く力”。アギは“撃ち抜く力”。


そして――


(オレは……)


言葉が止まる。


三人とも、不完全。


(だから、か)


ほんの少しだけ口元が緩む。


(悪くないかもな。)


身体検査


白い計測室。無機質な空間に、機械の電子音だけが響いている。


これはただの身体測定ではない。

潜在魔導力の測定も兼ねている。


「基準値は100だ。それを下回れば、その時点で失格」


検査官の声。


「はい、次」


カリンが計測器に乗る。


ピッ。


表示された数値は――101。


ギリギリだ。


「……基準値、か」


検査官が眉をひそめる。


「その装身具は外せ。計測時の装着は禁止だ」


カリンは首元に触れる。銀の首飾り、手首のリング、足首のアンクレット。


「それもだ」


黙って外し、机に置く。


再測定。


ピッ。


表示――15。


「……ん?」


検査官が首を傾げた瞬間、数値が跳ね上がる。


30、80、140――


警告音。モニターが赤く染まる。


「なっ……!?」


異常な上昇。制御不能。


カリンは静かに目を閉じ、息を整える。


ほんの一瞬――力を抑える。


ピッ。


表示が安定する。


102。


「……誤差か」


検査官は呟くが、視線はモニターから離れない。


さっきの数値は見間違いではない。


カリンは何も言わず計測器を降り、装身具を身につけた。


(……危ねえ)

息がわずかに乱れる。


検査官はモニターを見つめたまま動かない。

(……故障か?)



「……なんだ今の?」


後ろから声。


振り向くと、アギとナナハがいた。


「いや絶対なんかおかしかったろ今の!?」


ナナハはじっとカリンを見る。


「……焦ってます。ほんの少しだけ」


カリンは視線を逸らす。


「ただの誤差だろ」


ぶっきらぼうに言う。


「いやいや絶対違うって!」


「……隠してますね」


静かな断定。


カリンは眉をひそめる。


「う、うるさい」


短く返した。



少し離れた位置から、その一部始終を見ていた者がいる。


一人のO.E.D.O隊員。長い睫毛に妖艶な立ち姿。


測定の乱れも、一瞬の制御も――すべて見ていた。


「ふぅん……面白い子」

唇がゆるく歪む。


「隠すの、上手いじゃない♡」

小さく笑う。


「原石、ね♡」



合格発表


管制ホール。


巨大なホログラムパネルが展開され、受験生たちは指定位置で待機していた。


ざわめきと緊張が空間を満たす。


カリンは壁際に立っていた。


隣ではアギが落ち着きなく足を揺らしている。


「やべぇ……オレ絶対落ちた……」


「走りは遅いし怒られるしでいいとこゼロなんだけど……」


「……いえ」


小さな声。


ナナハだった。


視線は端末に落としたまま。


「射撃も、機械も……普通じゃないです」


指先で画面を示す。


「加点、あります。実技が低くても……三割くらいは合格、あります」


「え、マジで?」


「……理論上は」



カリンが口を開く。


「なら、まだ分からないな」


アギが振り向く。


「あ、あん時の!」


「変な数値出してたやつだろ!?」


「ただの誤差だ」


ナナハがじっと見る。


「……誤差ではありません…よね?」


「いや……ほんとに誤差だから」

少し早口になる。


「絶対違うって!」


「誤差だって言ってるだろ!」

カリンは思わず強く返すが、どこか焦っている。



少しの間。


「キミ……分析力、すごいな」


ナナハがぴくりと反応する。


「……え」


わずかに頬が赤くなる。


「……普通、です」


視線は逸れたまま。



ナナハがカリンを見る。


「……座学は、低そうです」


「え?」


「でも、フィジカルは安定してます。基礎は高いです」



アギが吹き出す。

「ははっ、丸裸じゃねぇか」


「いやいや、低くねぇし!」


一拍。


「……たぶん」



その時――


「見ろよ、あいつら」


後ろから笑い声。


「試験でなんか目立ってた連中だろ」


「ジンライの孫もあの程度かよ」


「ビビりのやつと、ブツブツ言ってたやつ」


「揃いも揃って微妙だな」


「落ちこぼれ三人組って感じだな」


「三人……トリオか」


「落ちこぼれトリオ、だな」


笑いが広がる。


「ここまで来たなら――昇格して“3バカトリオ”だな」


さらに笑いが起きる。


「……は?」


アギが顔をしかめる。


カリンはその言葉を反芻する。


「……三羽カラスか。なんかカッコよくないか?」


「ちげぇよ!!3バカって言われてんだよ!」


アギが叫ぶ。


ナナハはおろおろする。


「どっち……?」


「どっちでもねぇよ!」


周囲の笑いがさらに広がる。


だが――


カリンは気にしていなかった。

――いや、少しだけ引っかかる。


だが、口元がわずかに上がる。


(……上等だ)



その時。


アギが動きを止める。


「……あれ?」


天井を見上げる。


「ホログラム投影機、右上ユニット……冷却止まってる」


「……わかるのか?」


「音」


即答。


「普通は聞こえないけどな。あと五秒で落ちる」


――次の瞬間。


ホログラムが暗転。


会場がざわつく。


「ほらな」


ドヤ顔。


ナナハが小さく呟く。

「……機械も、射撃も……普通じゃないです」


「え、そっちも見てたの!?」


ほんの少し、笑いがこぼれる。


カリンも笑った。



表示が再開される。


番号が並ぶ。


カリンは探す。


――あった。


合格。


「ある!!オレある!!」


アギが絶叫する。


「マジかよ!!」


ナナハも指を震わせる。


「……あった。私も……」


三人の視線が交わる。


アギが拳を突き出す。


「なあ。3バカでもいいわ」


一拍。


「やれるって、証明しようぜ」


カリンが拳を重ねる。


「……上等だ。ここからだな。見返してやる」


ナナハが少し迷いながら手を重ねる。


「……わたしも。証明、したいです」



こうして三人は、合格した。



アカネザカ


試験から一週間後。


温泉街は少しずつ活気を取り戻していた。

修復された石畳、立ち上る湯気、夕暮れの空。


まだ傷跡は残る。

それでも観光客の姿は戻り始めていた。



今日は違う。


カリンが旅立つ日だ。


「カリン兄ちゃん!」


リィナが駆け寄り、抱きつく。


「ほんとに行っちゃうの?」


「ああ」


「合格したんだもんね……すごいよ」


満面の笑み。


胸が少し痛む。


「これ、つくったの」


小さな布袋。不格好な星の刺繍。


「おまもり」


「ありがとう。大事にするよ」


指切り。


「約束だ」


「ぜったいだよ!」



少し離れた場所で、コズヴィラン襲来に巻き込まれた少年――カンタが半べそで立っていた。


「泣くなよ、カンタ」


「泣いてない!!」


「じゃあ胸張れ」


一拍。


「オレがいない間、この街を頼むぞ」


その瞬間、カンタが崩れた。


リィナも泣き出す。


カリンは二人を抱き寄せる。


「大丈夫だ」


静かに言う。


「ヒーローになって帰ってくる」

「みんなを守れるくらい、強くなってな」



ハズキが歩み寄る。


「ギリギリの合格ね」


だが目は真剣だった。


「アストロコアは調整しておく。今のあなたにはまだ早い」


「強くなって戻ってきなさい」


カリンは頷く。


振り返る。


守りたい場所。


「ああ。当たり前だ」


歩き出す。



まだ誰も知らない。


この日生まれた三人が――


やがて、人類史上最も厄介な三人になることを。



第4話 終

ここまで読んでいただきありがとうございます!


第四話は、新キャラ登場&「落ちこぼれトリオ(3バカトリオ)」結成回でした。


書いていて、この三人のバランスはかなり気に入っています。


カリンは近接が得意なのに射撃は壊滅的。

アギはビビりなのに射撃が異常に強く、体力は低め。

ナナハは解析能力が高いのに実技が弱い。


見事に噛み合っていない三人ですが、ここからどうチームになっていくのかが見どころです。


そして次回から、いよいよアカデミー編が本格スタートします。

新キャラや新たな試練も登場予定です。


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