譲れないこと
俺は今宿屋の一室にいる。ギルドで俺が人化に成功した事に喜んでいると、カータルナが着ていたフード付きローブを俺に着せて、報酬を貰ってから宿屋に連れてこられた。宿屋に連れてこられるまで、着ていたのはローブだけだったのでなんとも変態的だなと呑気に考えていた。
宿屋に着くと、部屋を借りて俺をその部屋にいる様に告げてカータルナはどこかに行ってしまった。
折角一人になったので、ステータスを確認したり発声練習をしてみた。
まずは、ステータスだ。
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種族:魔人族
名前:ゆー(リキッド・スライム)
性別:女
職業:使い魔
ステータス
Lv1
体力 650/650
魔力 430/430
膂力 146
防御 87
俊敏 161
賢さ 122
固有スキル:『吸収』『放射』『分解』
スキル:『劣化自動回復(3750/10000)』『麻痺耐性Lv4』『毒耐性Lv3』『幻覚耐性Lv3』『物理耐性Lv4』『火耐性Lv1』『伸縮』『身体操作』『自由自在』『夜目』『魔人化』『魅力』『威圧』『衝撃』『狂気狂乱』
称号:『魔人』『気分屋』『怖がりな弱虫』『無慈悲』『たゆまぬ努力』『美を追求せしもの』『小悪魔』『殺戮者』『支配者』『簒奪者』
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魔人化:魔物から人へ、人から魔物へ化けることが出来る。
魅力:老若男女問わずに気に入られる。常時発動。
魔人:魔物から魔人へと進化した者に贈られる称号。
小悪魔:老若男女問わずに魅了する者に贈られる称号。程々にね・・・。
おお!ステータスが凄く上がっている。最初の頃と比べると月とスッポンだ!よく、ここまで伸びたなぁとしみじみと感じる。それになんて言っても、魔人に成れた。完全な人じゃないけどこれでオッケーだ。欲を言えば男のままがよかったなぁ。
次に発声練習だ。ギルドで話した時はまだ「ゆー」としか言えなかったが魔人に成れたんだ。そう魔の人に。だから話せないはずがないのだ!・・・たぶん。
「ゆー(あー)」
「ゆー(いー)」
「うー(うー)」
「ゆぇー(えー)」
「よー(おー)」
うん、地味に言える。さぁ、練習だ!俺はそれからカータルナが帰ってくるまで発声練習をし続けた。
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「ゆーちゃん、ただいま!」
私は勢いよく扉を開けた。
「お、おかえゆ」
「うん、ただいま。ゆーちゃん。ほら、これを着てね・・・?」
「あれ?今、ゆーちゃん喋った?」
「しゃべった」
「凄い凄いよ、ゆーちゃん!」
私はゆーちゃんに抱きついて頭を撫でて褒める。
「ゆーー」
ゆーちゃんは嬉しいのか、無意識に声を漏らしている。
「あっ、忘れるとこだった。はい、ゆーちゃん。この服を着てね」
私は、ゆーちゃんの為に服と下着を買ってきた。ゆーちゃんに似合うだろう、白のワンピースと白の下着を。
「いや、おれは、きない」
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カータルナが帰ってきたので、おかえりと言ったら抱きついて頭を撫でてきた。まぁ、おかえりとは言えなかったけど。それで、カータルナは買ってきた服を着てと言ってきた。普通の服なら着ただろう。けれど、カータルナが買ってきたのはワンピースに下着だった。今は女かも知れないけど、元は男だっのだ。流石に割り切って着るのは無理だ。だから、言った「いや、おれは、きない」と。
「ゆーちゃん。どういうことですか?自分の事を俺と言ったり、服を着ないと言ったりしたんですか!」
カータルナがキツイ口調で言ってくる。けど、甘い!ギルドでは流されたけど、俺には無慈悲があるのだ!無慈悲オン!ふっ、これでカータルナに何を言われても動揺しないぜ!
「だって、」
「だってじゃありません!」
「いや、ーーだって」
あれ?なんか目がウルウルしてきた。おかしいな、無慈悲って動揺しなくなるんじゃなかったっけ?
「ゆーちゃん!」
「ーーだって、ぐすっ、着たくないもん」
言葉づかいが子供っぽく、女の子らしくなってきた。自分では、普通に話しているつもりなのに。
「ゆーちゃん!」
カータルナが更にキツく言う。
「ぐすっ、い、いやだもん。き、着たく、えぐっないもっん」
「ゆーちゃん!!」
「い、いやだも、っーーゆーーーーーーーーー!」
泣きました。ええ、泣きましたとも。なんで、泣いたのか。たぶん、精神が体に引き寄せられたのだと思う。たぶん、俺は三歳児位の体をしてるから精神も三歳児位になっているのだと思う。スライムの時は何も無かった理由だが、スライムって意思自体が薄かったからだと思う。
「ほーら、ゆーちゃん。この服を着てー。着たら許してあげるから」
「ゆーーーーーーーーーー、ゆーーー!」
「はーい、足あげてー。はーい、ばんざーい」
「ゆっーーーーーーーー!っ、ゆーーー!」
「はーい、ゆーちゃんはえらいえらい。だから、泣き止んでー」
カータルナは、俺を慰める。俺を抱きしめて、頭を優しく撫でる。そんなので、泣き止むのは子供だけだ!と言いたいけど
「ゆーーーっ、ぐすっ、ゆーは、なき、やむ」
今の俺は、簡単に泣き止みました。だって、しょうがないじゃないか!精神年齢が低いんだから!
「うん、ゆーちゃんはえらいよー」
「ゆー、えぐっ、えらい」
「えらいえらい」
「っ、ごごめんなさい、かーたりゅな」
「いいよー、ゆーちゃん。それと、私のことはカナって言ってね」
「わ、わか、った。かな」
「よしよし」
「ーーゆーー・・・」
俺は泣き疲れたのか、気を失うように眠った。