アータルマトン
「ーーっ。ゆーー」
目がさめると、窓から光が射していた。辺りを見回すとカータルナが見当たらない。ただ、それだけで心が押しつぶされそうになる。
「っ、かな。ーーどこ、かな!」
俺の精神は、ほぼ今の体に見合ったものとなっている。だから、カータルナがいないということが悲しい。もう、目に涙が浮かんでいる。まるで、母親から離れた子供みたいだ。
「かーーなーーー!ーーっ。ゆーーーーーーーーーーーーーーー!」
泣き叫ぶ。カータルナが見当たらないということだけで。すると、部屋の扉が開かれる。
「どーしたの、ゆーちゃん!」
カータルナだ。カータルナ。カータルナがいた。
「ゆーーーーーーーーーーーーーーーーーー!かーーーなーーーーー」
俺は腕を伸ばしてカータルナを掴まえて、自分に引き寄せる。
「えっ、なんなの、ゆーちゃん?」
「かーーーなーーー」
「どうしたの、ゆーちゃん?」
「かな、いなかった。こわい、つらい、さみしい。ゆーを、わたしを、おいていかないで」
自分が思ったことを素直に伝える。まぁ、子供だから素直に伝えるしかないんだけどね。
「大丈夫だよ、ゆーちゃん。私はゆーちゃんを置いていかないから」
「ゆーー、ほんと?」
「本当だよ、ゆーちゃん」
「かな、だいすきー!」
こんな事、高校三年の佐倉翔なら言えない。けど、今の俺はゆーだ。だから、真っ直ぐに思いを伝える事ができる。
「かな、ぎゅー!」
「ふふっ、可愛いね。ゆーちゃんは」
俺は、カータルナに抱きつく。カータルナの胸は、慎ましやかだが今の俺には絶対的な安心感を与える。
「かな、やわらかーい!」
「そう、よかったね。ゆーちゃん」
「うん!ーーかーーなーー・・・・」
電池が切れたみたいに、眠る。100か0しかないみたいだ。
「おやすみ、ゆーちゃん」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ゆーー、かーなーー」
目が覚めると、太陽が真上から光を射していた。それに、ゴトゴトと言う振動が伝わってくる。
「どーしたのー、ゆーちゃん?」
「かな、ここどこ?」
「ここはねー、馬車の中だよ。ゆーちゃん」
「どこに、むかってるの?」
「ここらの地域で一番でかい国、アータルマトンだよ」
「どれくらいで、つくの?」
「大体、二週間かな」
「わかった」
俺は、カータルナの膝枕で寝ていたらしい。膝枕から起きあがって、カータルナの膝の上に座る。
「どうしたの、ゆーちゃん?」
「こう、してほしい。だめ?・・かな」
俺はカータルナに上目遣いで聞く。
「いいよ、ゆーちゃん。好きなだけ、してあげるからね」
「ゆーーーー!かな、すきーー」
「私も好きだよ、ゆーちゃん」
そんな事を話していると、周りから声が聞こえる。
「お嬢ちゃんは、お姉ちゃんの事が好きなんだねー」
「ああ、見ててもわかるよな」
「そんなに可愛い子に好かれて羨ましねぇ。私の孫なんかなかなかなついてくれないんだけどねぇ」
「ゆーーー!かな、すきーーーー!」
「ふふっ、ありがとう。ゆーちゃん」
剣を持った二人の男に眼鏡をかけたおばあちゃんがこの馬車に乗っている。三者三様に話すが、内容は全員似たり寄ったりだった。
「これから、二週間よろしくお願いします。ほら、ゆーちゃんも」
「ゆーー、よろしくーーー」
「ああ、よろしく」「よろしくー」
「はい、よろしくねぇ」
「ゆーー。さっきの、ひとつ、ちがうー」
「何が?」
「何が違うんだ?」
「何が違うんだい、ゆーちゃん?」
「かな、おねえちゃん、ちがう」
「えっ、ちょっと、ゆー・・・」
「かな、わたしの、ごしゅじんさまー!」
無邪気な俺は、爆弾を落とした。
「あんた、こんないたいけな子に・・・」
「人の趣味にどうこう言うわけじゃないが、コレは・・・」
「あんた、いい人だと思ったのに見損なったよ!」
「ち、違いますよ、貴方達が想像しているような事じゃありません!」
「ゆー、かな、ごしゅじんさまー」
「ゆーちゃん、ちょっと黙っててねー」
「ゆーー、かな、いじわるー。ゆー、はなしたい」
「お願い、ゆーちゃん。ちょっとだけだから、ねっ?」
「ゆー」
俺は首を縦にふる。それから、カータルナは自分の名誉の為に奮闘した。最終的に、分かってもらったが丸一日を用いた。




