「封印司書」
図書館中の本が、
一斉に震え始めた。
ページがめくれる音。
無数。
終わらなかった物語たちが、
ざわめいている。
鍵守セラ
は、
静かにレンたちを見つめていた。
背後では、
何千本もの鍵が浮遊している。
LOST STORY 封印鍵
一本一本に、
消えた物語のタイトルが刻まれていた。
神代レン
は、
白いペンを握る。
AUTHOR MODEの負荷で、
右目が焼けるように痛い。
それでも、
視線を逸らさなかった。
「二度と外へ出さないって、
どういう意味だ」
セラは、
感情のない声で答える。
「ロストストーリーは危険です」
「存在が不安定」
「物語法則が破損」
「世界崩壊率が高い」
「他作品汚染の危険性あり」
クロウが眉をひそめる。
クロウ
「だから閉じ込めるって?」
セラは頷く。
「それが最適解です」
静寂。
その言葉に。
図書館の本たちが、
微かに震えた。
まるで。
悲鳴みたいに。
ノアが、
小さく呟く。
ノア
「……閉じ込めるだけ?」
セラは彼女を見る。
「はい」
「消えるよりは、
安定しています」
ノアが唇を噛む。
その表情を見て。
レンの中で、
何かが引っかかった。
レンは、
図書館を見渡す。
無数の本。
全部。
“終われなかった世界”。
その時。
近くの本棚から、
小さな声が聞こえた。
『ねぇ』
ユイが振り返る。
白銀ユイ
「……今の」
一冊の本。
半分焼け焦げた表紙。
そこから。
小さな手が伸びていた。
クロウが目を見開く。
「は!?」
本の中から、
少年が顔を出す。
ボロボロの服。
泣きそうな顔。
ルカ
ルカは、
レンを見て言った。
「外って……
まだ空あるの?」
静寂。
レンの胸が痛む。
その質問だけで、
全部分かってしまった。
この子たちは。
ずっとここに閉じ込められていた。
セラが、
静かに鍵を向ける。
「ルカ」
「収容違反です」
ルカが怯える。
「ご、ごめんなさい……!」
鍵が飛ぶ。
本へ戻そうとしている。
その瞬間。
レンが、
鍵を掴んだ。
ガキィン!!
火花。
セラの白い片目が、
僅かに揺れる。
「やめろ」
図書館が静まり返る。
レンは、
ルカを背中へ隠した。
「こいつら、
物扱いじゃねぇだろ」
セラは無表情のまま言う。
「ロストストーリーは、
管理対象です」
レンは即答した。
「違う」
「生きてる」
その瞬間。
図書館中の本が、
一斉に光った。
【観測者ゼロへの反応を確認】
ページがめくれる。
声が響く。
『助けて』
『出たい』
『終わりたくない』
何千冊。
何万冊。
ロストライブラリ全体から、
声が溢れ出す。
セラの表情が、
初めてわずかに変わった。
困惑。
「……なぜ」
彼女は、
小さく呟く。
「なぜ、
反応しているのですか」
アキが、
静かに笑った。
白紙アキ
「簡単だよ」
セラが見る。
アキは、
レンを指差した。
「こいつ、
本気で続きを書こうとしてるから」




