「選択」
【最終選択】
1:
“永遠に続く物語”になる
2:
“誰にも読まれない現実”へ進む
世界が、
答えを待っていた。
空を覆う図書館。
静止したページ。
無数の世界。
そして。
神代レン
の前に浮かぶ、
二つの選択肢。
誰も、
すぐには喋れなかった。
風だけが吹いている。
静かな、
終わりの前の風。
最初に口を開いたのは、
クロウだった。
クロウ
「……永遠に続く物語」
「最悪だな」
レンが苦笑する。
「お前らしい感想」
クロウは肩をすくめた。
「だって終わんねぇんだろ?」
「敵倒しても、
また新しい敵」
「平和になっても、
また問題」
「読まれる限り、
ずっと続く」
静寂。
それは、
物語としては幸せかもしれない。
永遠に忘れられない。
永遠に存在できる。
でも。
終われない。
ユイが、
震える声で言う。
白銀ユイ
「“誰にも読まれない現実”は……?」
アキが静かに答えた。
白紙アキ
「物語じゃなくなる」
「ログも消える」
「観測者もいなくなる」
「たぶん、
普通の世界になる」
ユイが小さく呟く。
「普通……」
レンは空を見る。
普通。
その言葉が、
少しだけ遠く感じた。
異世界。
観測者。
世界改編。
そんなものがない日常。
最初は、
退屈だと思っていた。
でも。
今は違う。
レンは、
踏切の夜を思い出す。
雨。
警報音。
ユイを助けた瞬間。
あの日。
自分は確かに、
終わるはずだった。
なのに。
終われなかった。
“続きを望まれた”から。
最終観測者が、
静かに問う。
『選べ』
その声には、
もう強制はなかった。
ただ。
本当に、
レンの答えを待っている。
レンは、
ゆっくり目を閉じた。
そして。
長く息を吐く。
「……なぁ」
彼は、
小さく笑った。
「俺、
結構楽しかったんだよ」
クロウが鼻で笑う。
「知ってる」
レンは続ける。
「ユイに会って」
「お前と戦って」
「世界壊して」
「意味わかんねぇことばっかだったけど」
ユイが泣きながら笑う。
レンは、
その顔を見て。
静かに言った。
「今度こそ、
ちゃんと終わりたい」
その瞬間。
世界が、
静かに震えた。
最終観測者が、
目を閉じる。
図書館のページが、
ゆっくり閉じ始める。
レンは、
二つ目の選択肢へ手を伸ばした。
“誰にも読まれない現実”へ進む
白い光。
無音。
ログが消えていく。
タイトルが消える。
キャラクター情報。
世界設定。
全部。
真っ白になっていく。
ユイが、
涙を流しながらレンの手を掴む。
「……後悔しない?」
レンは少し考えて。
笑った。
「わかんない」
「でも」
彼は、
静かに続ける。
「次は、
物語じゃなくていい」
その瞬間。
『世界ログ:観測者ゼロ』
というタイトルが。
空から、
完全に消えた。




