第1312話 13番目を探せ⑱おへそ周辺
フォンが鳴った。
兄さまからだ。
「リディー、集落の人は昔は赤い木を見たことがあるけれど、今はそういえば見ないって。沼は南の方や東、そこここにあるそうだ」
それだけじゃない。
さすが兄さま! 痒いところに手が届く采配。転移で集落を訪れる許可を取りつけたそうだ。
おお、これで瘴気が少なくなれば、わたしも移動できる。
ジョギさまにはわたししか話せないみたいだから、わたしが赴かないとね。
赤い木はもふもふ軍団たちが見つけてくれることを祈る。
伝達魔法を飛ばして、一応ロサの方からベクリーヌ国に赤い木のありかを聞いてもらうことにした。使節団として秘密に見せてもらったのは秘密の場所だったみたいだから。公けでも尋ねておかないとね。
兄さまはこれから近辺の沼をチェックするそうで、夜になったら集落で落ち合うことに。
わたしたちもそれまでは休憩だ。
ノエルに勧められて、もふさまとルームへと避難。
ベッドにもふさまと横になって、器のことを考えた。
ノエルと話して、わたしが神留をどう理解していたかが自分でも見えた。
もしわたしの理論が当たっていたら、精霊の悠は神力はないけど、神力の器はあるということになる。
悠が瘴気に変わったっていうのが一番わからない。
神というのは神の器とその中に神力を持つ。
聖なる一派は聖力の器とその中に聖力を持つ。
精霊は神力の器と聖力の器、その中にそれぞれ神力と聖力を持つ。
それ以外は神力、聖力、魔力、瘴気の器を持ち、その中にそれぞれが入ってる。
器が複数あるのはお得感はあるけれど、4つに分けられたものより、2つの精霊の方が特化したパワーになるのだろうし、さらにそれがひとつとなる神や聖なる一派はそのパワーが絶大なんじゃないかと推測できる。
悠が瘴気に変わったのなら、それより前に瘴気は存在しないから、人族たちが〝瘴気〟を持って生まれた論は崩れるけど、別に変わる何かがあったか、器が3つだったということで、安定していたのは変わらないことだと思う。
そう、それぞれがその器で安定した入れ物になっているはずなのだ。人族でもその他の種族も、動物も。
精霊の力は神力と聖力の両方を使うらしい。
その片方が空だった。聖力のみだった。
そこだ。聖力だけの力を使って瘴気になるってかなりわからない。
わたしは精霊と器の数は違うけど、聖力だけを使っても瘴気を生み出しはしない。「魔力の間違った使い方をすると瘴気を生み出す」みたいな例があるならわかるけど。魔法を使って間違ったことをしたとしても、それは暴走したり、何か壊したりとか被害を出すのはわかるけど、だからって違う何かにはなったりしない。
神力は破壊力が桁違いになってくるから、壊すとかそっちに強いけど、それだって力が違ったものに変わるわけではない。魔力はどこまでいっても魔力だし、聖力も神力もどこまでいってもそれは変わらないと思うんだ。
でも、悠は瘴気を産んだ。何か別の要因じゃないかなー。
そんなことを考えたり、うつらうつらしていたら夕方になっていた。
もふもふ軍団が帰ってきた。集落から離れた北の方に赤い木をみつけたという。でも3本あっただけ。禍々しい嫌な気を出していた。その先には沼があって、おどろおどろしいものを感じたという。
おやつを食べてもらっていると、瘴気が落ち着いてきた。
ノエルにお願いして転移して集落へと飛んだ。
兄さまとエリンとも合流だ。
兄さまとエリンは近くの沼を見てきたという。特に何か特徴はない沼だったという。
ロサから返事がきていた。超特急で調べてくれたみたい。
ベクリーヌの王さまに尋ねてみたところ。陛下のお父さんの子供の頃はその辺でも赤い木を見かけたそうだけど、それ以降どんどん少なくなってきてるそうだ。
現在はかなり少なく。場所はベクリーヌ国を抜けた北。神殿が赤い石を持っていたから、神殿のやつに聞くのも手かもと助言をもらったそうだ。
第一大陸の捕まえた神官たちに尋ねたところ、昔は森の中に木があったらしいけど、自分たちが第一大陸に移動になった頃には、赤い石が〝配給〟されてきたので知らないとのことだった。その配給先を尋ねたところ、彼らはどこかの〝神殿〟からだと思っていたらしい。
それに危険なものだと言うことも、用途も知らないようだった。
ベクリーヌの王には第一大陸の魔物の様子も聞いてくれていた。
聞いた感じだとベクリーヌ付近に生息する魔物は、おとなし目ではあるけれど、普通の魔物といった印象だそう。朝と夜で違うみたいな話は出てこなかったそう。
集落の周り、つまり大陸のおへそあたりと足の方では、違いがあるってことかな。
そうだよな。ベクリーヌにいるとき、魔物に昼と夜の顔があるとは聞かなかったもんな。ということは森の中でもおへそ周辺の様子が他とは違うってことだ。
それが事実なら、おへそ周辺は何かがあるのが確定ってことだ。




