第1308話 13番目を探せ⑯湿気
わたしは第一大陸であったことをノートに綴った。
サブハウスの自分の部屋に戻ってきて、ひたすら思い出して書くようにしている。
何かすることがないと気持ちが引っ張られてしまうからだ。アダムの安否に。
でもロサが言ったように物事は動き出してしまっている。
だとしたら、これからどうしていくかを考えながら行動していくことが大切。とりあえずアダムは今どこかに行っているはずで、偽物アンドレ殿下と同一人物と思ってはいけない。謀反人たちの対処は国が決めること。一介の令嬢が悩むことではない。
だから、わたしはわたしのできることをしようと、自分に言い聞かせる。
今のそれは、悠を探すことだ。
数日前、再び第一大陸を訪れた。
相変わらず瘴気がすごくて、テントに篭ることになった。
幸い作った魔具が威力を発揮して、テントの中の瘴気を清浄してくれた。
そこにノエルとこもっていたら兄さまからフォンが来て、森の中の魔物は人懐っこいって聞いた。
第一大陸の森は人が住めないと聞いていたから驚いたっけ。
それでテントにも何か当たった音がして、窓から見ると朱色のバレボールサイズのイガイガがいた。
もふさまに魔物の気配だけど違う何かも混ざっているって言われ。
それでもふさまがまず出たんだけど、もふさまから助けてって言われたのよね。
もふさまからヘルプコール。驚きながらも二人でテントの外に出たら、もふさまにイガイガがくっついていた。
イガイガとかイガガって鳴き声だった。
もふさまからひっぺがして投げたら楽しかったみたいで、もっとやってみたいに手に登ってきて、しばらく遊ぶ羽目になった。
夜、テントを張ったままそこで休むことになった。
わたしはルームを拵えてそこでもふさまと休んだ。簡易仮想補佐の代わりに虫をテイムしてもらって何かあったら教えてもらうことにした。
夜中に虫から知らせを受けテントに戻ると、魔物がテントを窺っていた。
子供サイズの魔物の鳥。
テントがあるってバレてるなって感じで。それならこっちから出て行こうと武器を持ってテントから出たら、その魔物をもっと大きな鳥の足がつかんで空にいき、そしたらもっと大きい恐竜みたいな何かが子供サイズをつかんだ大きな鳥をパクッと。
夜には危険な魔物が出現。わたしたちは周りを少し見ることにした。あんなに酷かった瘴気がそうでもないことに気づいた。
クイとアリの攻撃で倒されたけど、他にも強そうな魔物がいた。
倒された魔物に聖力を当ててみたら、サイズダウンをしたし、毒々しい斑点が皮膚から消えていた。
聖力が他の魔物死骸にも効くか検証するのに、もふもふ軍団たちに魔物を倒してきてとお願いした。もふさまともふもふ軍団は喜んでと夜の森を駆け抜けて行った。
待っている間に、触手の影みたいのがわたしたちをすり抜ける。向こうからの攻撃もなかった。だからこちらからも攻撃はしていない。ただ通り過ぎて行っただけ。
その後、襲ってきた魔物をエリンが倒して。それは様子が違ったけれど、昼間懐いてきた魔物だったそうだ。
そこに昼間テント組の方が出会ったイガイガが凶暴になって現れた。みんなで倒して。そのあと、エリンの具合が悪くなり。光魔法では治らなかったんだけど、聖力を当てたら治った。手の甲に傷があった。イガイガにつけられたみたいだった。
それからもふもふたちが持ってきてくれた魔物で検証。
聖力を当てるとみんなおとなしめな姿になり、それは昼間人懐っこく匂いを嗅いできたものの、決して何かしてくる魔物ではなかったと判明。夜は姿が変わり凶暴になる。聖力を当てると元の姿に戻った。
一旦、ユオブリアに戻ってからまたこちらにきて、兄さまたちには大陸を人の丸まっている姿に見立てた時のおへそ地点に向かってもらった。
わたしとノエルはテントで待機。
そしたらテントに原住民であるグレナンの生き残りが槍でツンツンしてきた。
腰蓑姿に驚いたけど、夜もここにいると危ないぞって教えてくれにきたんだよね。
そして森の中に住んでいるって聞いて。夜は危険になる森にいられるわけを尋ねたところ、それはジョギさまに守られているからだっていう。悠に何か関係があるかもって思えて、連れて行ってもらった。集落は本当に守られた場所だった。そこには兄さまとエリンが連れてこられていた。
ジョギさまは大きなフクロウで悠のことを知っているみたいだった。
教えて欲しいと言ったら、なんで教えなくちゃいけないんだって言われちゃって。
……確かにそれもそうで。
どうしたら教えてくれるか尋ねたら、夜になると魔物が凶暴になる。その原因を突き止められたら、教えてくれるという約束を取り付けた。
瘴気が昼間は強く、夜は弱まる。
瘴気の少ない夜魔物は凶暴になる。
凶暴な魔物に聖力を当てると昼間のおとなしい姿に戻った。
聖力で消えた凶暴性。それは瘴気?
夜、瘴気は弱まるけど、それが丸ごと〝魔物〟に取り憑いて凶暴になる。
現在までのことをまとめると、そう思うのが一番ピッタリくる。
ではなぜ瘴気は弱まり、魔物に取り憑くのか。その原因を探らなくてはならない。
でも逆かもしれない。
だって魔物って強い証明をし、活動的なのが一般的だ。
夜の姿が本当の姿で、あの人懐っこいのがなんらかの作用が働いているのかもしれない。
でも夜の姿はかなり面妖だった。
あの黒い影のような触手も謎だ。
文献を漁ったけれど、第一大陸自体秘められた大陸だから、特にわかることはなかった。
兄さまもお城でナムルやトルマリンさんに瘴気のことで何かわからないかと話を聞き、それから第一大陸の情報をみんなも集めてくれていた。
ルシオは第一大陸で暮らした神官の日誌を渡してくれた。
特に気になるところはないけれどと言って。
かなり昔からのものだった。日誌も当番の人が書いて順繰りに回している。
湿気が身体に合わないとみんなまず書いているところが面白い。
そうなんだよ。なんでこんな湿気があるのか。
でも瘴気のことには一切触れられてない。わたしみたいに瘴気が苦手な人はいなかったのかな?
昼間の森は穏やかで、夜になると恐ろしい獣の咆哮などが聞こえ、恐ろしくてお酒を飲む人が増えたとか。おいおい。
でもある日、神官たちは気づいた。
森の南側に神殿があったので、南側には恐ろしい魔物は来ないんじゃないかってね。ベクリーヌも夜に魔物に襲われた話は聞かないし。
それでどうしても夜に転移場に行かなくてはいけなくなって。南側だから大丈夫って必死に思い込んで。それで聖水を撒いたらそこから寄ってこなくなったということだ。
さらに戦ったこともあり、聖水を凶暴な魔物に聖水を撒いたところ、苦しみ、そして凶悪になったという。剣の攻撃、火、水、風、土の属性魔法はあまり効かない感触で、神属性の魔法は効いたそうだ。
ふむ。森の夜の魔物。生きているときは聖力で苦しみ凶暴性が増すのか。
それは試さないとだな。いやだけど。
聖水を撒いておけば寄ってこないって苦手ってことなんだろうけど。凶暴性が増す。でも屍になってからは、普通の魔物に戻る。
うーーーむ。どういうことだろう?




