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TS転生したから野球で無双する  作者: インスタント脳味噌汁大好き


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第197.5話 練習試合

大会初日を迎え、日本全国が甲子園に夢中となる中、裏で秋に向けて新チームとして動き出している高校は多い。大阪の強豪校である履陰社も、その中の1つ。


屈辱的な初戦負けを経験してから、1ヵ月近い時が経過している。新キャプテンの高田(たかだ)を据えて新チームとして動き出している彼女らと戦うのは、神奈川からやって来た湘東学園の2軍メンバーだ。


「あー。覚悟はしてたんだけどなぁ……」

「いやでも、原田さんって試合に出たことはほとんど無いですよね?あと、井原さんも。1軍でベンチに居るよりも、2軍で試合に出た方が楽しいと思いますよ?」

「そうかも、な。というか試合に出たことなんてほとんど無いというか、無い!3人目の捕手って、完全にブルペンキャッチャーだからな」


昨日に2軍落ちをして、落ち込んでいる原田に対して牛山は試合に出る利点を話す。3軍から2軍に上がり、4番バッターとして抜擢をされている彼女は、高谷が抜けた後の2軍のキャプテンにも選ばれている。


「というか、1軍で試合に出られないなら2軍で試合に出た方が良いでしょ。私なんか、高谷さんの気持ち分かるようになったし」

「私も私も!まあ1軍と2軍の入れ替えは秋から多くなるだろうし、元気だしなよ」


続いて原田に声をかけたのは、同じく1軍から2軍に落ちた上田と下田だった。2軍落ち後、勝手に「うえしたコンビ」と呼ばれるようになった彼女達は、今では2軍の1番2番に定着している。


最初から2軍だった面子、3軍から上がって来た面子、1軍から落ちて来た面子。1番メンバーの入れ替えが激しい2軍では、秋から空く3つの枠を狙っている者しかいなかった。



湘東学園 2軍 スターティングメンバー


1番 右翼手 上田 香衣

2番 左翼手 下田 海里

3番 二塁手 水江 麻樹

4番 一塁手 牛山 惠美(めぐみ)

5番 遊撃手 佐原(さはら) 美鶴(みつる)

6番 中堅手 吉村(よしむら) 百合(ゆり)

7番 三塁手 井原 美琴

8番 捕手  原田 文華

9番 投手  浜川 澄江



初回、履陰社の柴原監督は湘東学園の先発である浜川を見つめる。彼女自身、選抜の甲子園で奏音を敬遠する指示に関して負い目はあった。だからこそこの練習試合を引き受けたのだが、1年生しかいない湘東学園の2軍に対して2年生もいる履陰社側が負けることは万が一にもあり得ないと考えていた。


その考えを、浜川の投げる球を見て改める。最速125キロのノビのあるストレートに、スライダーとフォークは1年生らしくない変化量で投げ込んで来る。


既に地方の強豪校の3番手クラスにまで成長している浜川に対し、それでも魔境大阪で強打の強豪校として名を馳せている履陰社打線は容赦なく襲い掛かる。ツーアウトからクリーンアップに連打を浴びて、浜川は初回に3点を失った。


「……点を取られたことに関しては仕方がありません。相手打線、特にクリーンアップは来年のU-18代表に選ばれてもおかしくない面子です。しかし連打を浴びて点を失った後に、6番の藤井(ふじい)さんにまで打たれたのは余計でしたね。まだ初回、たった2点を失ったぐらいで原田さんは動揺しないように」

「は、はい!」

「さて。気持ちを切り替えて攻撃に移りますよ。相手のピッチャーもまだあまり実戦慣れはしていないようですし、初回から様子を見ずにストレートに絞って捉えなさい」


萩原監督の注意に、怯えながら返事をした原田は浜川の隣に座る。すると同じ投手である及川が、浜川に話しかけた。


「調子は良さそうだったけど、やっぱ履陰社の打線は強そうだね」

「うん。でも、うちの打線なら取り返してくれるよ」

「……あの投手から、か?130キロぐらい出てるし、有名なピッチャーだぞ?」

「あの投手から、だよ。今の言葉で察したけど、原田さんは打てるイメージ湧かなかったの?私でも浮かんだよ?」


そして原田が余計な口を挟んだため、浜川と及川は原田と井原が履陰社の投手から打てるイメージを持っていないのかと落胆する。それをフォローするように、上田と下田が口を開いた。


「2軍落ちすると、全然雰囲気が違うから混乱するけど、要するにただの130キロのストレートさえ打てないの?って浜川さんと及川さんは言いたいんだよ。次からは打てる球が何一つ無い時だけ、相手投手は凄いと言った方が良いよ」

「そーそー!そしてただのストレートだけなら、私は200キロでも打つ!」


上田と下田は原田に助言を言った後に、バッターボックスとネクストバッターズサークルへと向かう。履陰社の新エースである2年の井垣(いがき)は130キロのストレートを投げるが、変化球は緩急を付けるカーブとチェンジアップのみである。


その井垣に対して、湘東学園の上位打線はヒットを打ち続ける。上田と下田がセンター前ヒットで出塁した後、水江が右中間へタイムリーツーベースヒットを放ち、牛山がライト線へのツーベースで続く。


初回で3点を取られても、4点を取った湘東学園の2軍は、この後も試合の主導権を譲らない。4回からは左で125キロを出す及川がマウンドに上がり、履陰社打線の勢いを止めた。守備では3軍から上がった牛山と水江がミスをするものの、自らのバットで取り返し、最終的には13対16で湘東学園の2軍が勝利する。


この後、1軍が甲子園を離れる日まで2軍のメンバーは練習試合が続く。その期間中に、負けたのはたったの1回だけだった。

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