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「とある少女の『旅』物語」~これは『魂』の声を聞く一人の少女が、自分の『旅路』と向き合う物語~  作者: たっけん


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初めての共闘

「うーん、、、」

カーテンの隙間から朝日が差し込む中、謎の息苦しさを感じて目を覚ます。

目を開けると、体の上にノクスがのしかかっていた。

ノクスは魔狼ーー全長はリキシアの背丈ほどもある大きな魔獣だ。

こんな風にのしかかられたら、息苦しくなるのも当然と言うもの。

「ノクス、、、?」

でも、その重さは不思議と嫌ではない。

むしろ、ノクスが確かにそこに居る証のようで、安心感すら感じる気がする。


「ノクス、おはよう」

リキシアは少し苦笑しながら、体の上のノクスの背中に腕を回して撫でてあげる。

ノクスは、目を細めると嬉しそうに小さく吠える。


「ほら、ノクス。そろそろ降りてよ。私が潰れちゃうよ」

その言葉に、ノクスは少し名残惜しそうにしつつもリキシアの上から降りる。

「さて、ノクス。今日も早速、新しい冒険をしようか」

「まずは、ギルドに行こう」

「朝ごはんは、、、」

リキシアは、財布を取り出すと中身を確認する。

中には、たったの70シルバー。

「うん、、、今日は我慢ね」

「今は、あまりお金に余裕がないから」


ノクスは、何かねだるように、リキシアの身体に擦り寄ってくる。

「ノクス、、、。そんなことしても無駄だよ」

ノクスは、リキシアを見上げる。

しばらくの間見つめ合っていたが、ノクスは諦めたように小さく息をつく。

「ごめんね。今日も依頼で稼げたら、美味しい物食べさせてやるから」

その言葉に、ノクスの耳がピクリと動く。

もう一度こちらを見上げると、元気に一声吠えた。

どうやら、頑張れば美味しいものが食べられると知り、やる気を出したようだ。

そんな様子にリキシアは笑みを浮かべながら、出かける支度をする。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


部屋を出て一階に降りると、酒場はもうすでに何人かの冒険者で賑わっていた。

女将がリキシアとノクスを見つけると、陽気に声をかけてくる。

「あら、おはよう。早速お出かけかい?朝早くから頑張るね」

「それでお客さん。今日の宿はどうするんだい?」


「今はちょっと懐が寂しくて」

「今日も無事に稼げたら、また部屋を借りに来ますよ」

リキシアは、少し苦笑しながらそう言った。

実際、今の手持ちでは今日の分の部屋代を先に払っておくことは出来ない。

帰ってきたときに部屋がまだ空いているかは、その時の運次第だ。


「あら、そうなのかい?お客さんまだ新人さんなんだっけ?」

「確かにそりゃあ、お金もなかなか厳しいだろうね」

「なら良いよ。今日の分の部屋代はツケで良いから、今から昨日と同じ部屋を取っておいてやるよ」

女将は、優しげに笑いながらそう言った。

正直、予想外の申し出だった。

昨日会ったばかりの新人冒険者を、そんな風に信用してくれるとは。


「そんな、良いんですか?」

「もちろん良いわよ」

「お客さんなら、ちゃんと稼いで払ってくれるだろうし」

「この年になると、信用できる人はなんとなく分かるものよ」

やはり、この街の人々は温かい。

来たばかりのはずなのに、なんだかすでに居心地の良さを感じている。


「そうですか。それなら、頑張って今日もちゃんと稼いできますね!」

リキシアは、嬉しそうに笑ってそう言った。

「ええ、そうして頂戴。ちゃんと、無事に帰ってくるのよ」

「冒険者なんて、多少の無茶をしてなんぼなんでしょうけど、あんまり無理しすぎちゃだめよ」

それは、女将の純粋な心配と気遣いの言葉だった。

誰かにこうやって心配してもらえると言うのは、こんなにも嬉しく温かいものなのだと、改めて実感する。

「もちろん、ちゃんと帰ってきますよ。私の旅は、まだまだこれからですから」

リキシアはそう笑顔で答えると、踵を返して宿の入口へと歩いていく。

「行ってらっしゃい!!」

そんなリキシアの背中に、女将が明るく声をかけてくれた。

リキシアは、少しだけ振り返って、満面の笑みで手を振る。

ノクスも、嬉しそうに尻尾を振っている。


リキシアとノクスは、今度こそ宿を出ると、ギルドへと足を向けた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


リキシアとノクスは、ギルドの扉を開けて中に入る。

奥のカウンターでは、昨日と同じように、エレナが仕事をしている。

リキシアとノクスに気が付いたのか、顔を上げて微笑む。

「あら、リキシアさん。おはようございます」

「今日も依頼を受けに来てくださったんですか?」

「おはようございます、エレナさん」

「今日は実は、討伐系の依頼も受けてみたいなって思いまして」

「せっかく、ノクスも仲間になりましたし」

リキシアの言葉に、ノクスは元気よく一声吠えて応える。

「そうでしたか。それなら、いくつかおススメできるものを探してみますね」


エレナは、カウンターの下からいくつかの依頼書を取り出して考え込んでいる。

しばらくすると、その中から三枚ほどをカウンターの上に並べた。

「リキシアさんにお勧めできそうなのはこちらですね」

「一つ目は、北部の村からの依頼ですね。畑を荒らす魔犬を討伐して欲しいとの事。難易度はFランク」

「二つ目は、街道付近で目撃されている魔熊の討伐、Eランク。北門を出てしばらくした場所で目撃されています」

「三つ目は、東部の森の中にある廃坑の入口付近での依頼ですね。内容は、魔蜘蛛の討伐でEランク。どうやら、廃坑の奥から魔蜘蛛の群れが出てきているようです」


「なるほど、色々あるみたいね」

リキシアは、並べられた依頼書を見ながら考え込んでいる。

「ちなみに、エレナさんのおススメとかはありますか?」

「そうですね。リキシアさんはノクスさんをお連れですし、Eランクの依頼に挑戦してみても良いかもしれませんね」

「ギルドの規定でも、冒険者ランクの一つ上のランクの依頼までなら、受注可能ですよ」

「難易度も上がりますが、その分報酬金も多くなりますし」


リキシアは、ちらりとノクスに目を向ける。

ノクスは、カウンターに前足を乗せると、二つ目の依頼書を片方の足で叩く。

「お?ノクスはこれを受けてみたいの?」

ノクスは、「俺たちなら大丈夫」とでも言うように、尻尾を振りながらリキを見つめる。

「そうか。なら、それにしよう」

リキシアは、ノクスの脚の下から依頼書を引きぬくと、クレアに手渡す


「エレナさん。この魔熊討伐の依頼にします」

「ちなみに、この依頼の報酬金はどれくらいですか?」

Eランクの依頼ともなれば、昨日の依頼よりも少しはたくさん貰えるのだろうか。

リキシアは、少しの期待と共にそう尋ねた。

「そうですね。この依頼だと、報酬金は8ゴールドになりますね」

「魔熊の牙を討伐証拠としてお持ち帰りいただければ、依頼完了となります」


8ゴールド。

昨日の事を考えると、今日は少し余裕をもって生活できるようになりそうだ。

もちろん、依頼に成功すればだけれど。

「分かりました!頑張りますね!」

リキシアはそう元気よく返事をした。

「それじゃあ、行ってきます!」

リキシアは、ノクスを連れてギルドを後にした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


リキシアとノクスは、北門を出て街道を歩いている。

しばらく進むと、左右を森林に挟まれた道が見えてくる。

一人と一匹はその中を進んでいく。

「ここら辺、ちょっと暗いわね」

左右から伸びた木の枝が頭上にも広がっており、まだ朝だと言うのに暗くなっている。


さらに進んでいくと、道端に何かが転がっている。

壊れた馬車と、荷物の残骸だ。

おそらく、魔熊の被害にあったのあろう。

幸いにも、死体のようなものは見当たらない。

きっと、無事に逃げることが出来たのだろう。


リキシアは魔熊が近くに居ないか周りに注意を配ってみるが、よく分からない。

だがその時、ノクスが突然低い声で唸る。

「ノクス?どうしたの?」

リキシアは不思議そうにノクスに尋ねる。

しかしその直後、左手の茂みが動いた。

リキシアはとっさに剣を抜く。


リキシアが睨みつける茂みから、巨大な魔熊が姿を現す。

(ナビ、あれが魔熊?)


《質問を受諾》

《対象を解析》

《解析結果--種族:魔熊 危険度:Eランク相当》


「やっぱり。あれが魔熊なんだ、、、」

こげ茶色の毛並みに、深紅の瞳。

体は、リキシアの一回りも二回りも大きく見える。

そして、魔熊がリキシアとノクスに気が付く。

魔熊は、大声で吠えてこちらを威嚇する。

当たり前だが、仲良くする気は無いようだ。


「ノクス、行くよ」

ノクスが、それに応えるように短く吠える。

魔熊が勢いよく飛びかかって来るが、リキシアはとっさにそれを避ける。

その拍子に、フェンが魔熊にとびかかり、爪を突き立てる。


「炎よ集え。そして槍となれ、、、」

『言葉』によるイメージの固定化。

初めて魔法を使った時と同じだ。

自分の口ではなく、『魂』そのものから『言葉』が湧き出る感覚。

一切の揺らぎもなく、何かが『確定』する感覚。


魔熊はまだ、ノクスが引き付けてくれている。


「炎槍、三連」

また、頭痛がする。

三つの炎槍を個別に『イメージ』して処理する。

複数のイメージの並列制御による精神への負荷。

だが、リキシアはその痛みを、どこか他人事のように気にしない。

「、、、四連」

一段と頭痛が酷くなる。

リキシアはその痛みも無視するように、言葉を続ける。

「穿て!」

四つの炎槍が魔熊に向かってそれぞれの軌道で飛んでいく。

ノクスが、示し合わせたかのように完璧なタイミングで魔熊から離れる。

魔熊の鈍重な巨体では咄嗟に避けることは出来ない。

正面の炎槍二本を腕でかき消すが、背後から回り込んだ残りの二本が直撃する。

魔熊は、苦痛の声を上げた。


怒り狂った魔熊が、ノクスを無視してリキシアに向かって突進してくる。

どうするか。

避けるか、正面から受けて立つか。

迷う間もなく、リキシアは一つの『道』を選んだ。

再び、その口が開かれる。


「氷よ集え」

周囲に、氷の魔力が漂う。

リキシアの周りの空気が一気に下がる。


「私を護る壁となれ」

魔熊がすぐそこまで来ている。

「氷壁!」

リキシアと魔熊の間に、分厚い氷の壁が立ちはだかる。

魔熊の爪は、その壁に阻まれる。

その隙に、ノクスが魔熊の背後から再び飛び掛かる。


リキシアは魔熊から少し距離を取りながら、試行を巡らせる。

(魔法は、魔力による事象の具現化、、、)

(魔法として出力した後も、魔力の性質は残るはず)

リキシアの視線は、まだそこにある氷の壁に注がれている。

(なら、、、)


「氷よ砕けよ、、、」

氷の壁が砕け散り、氷の魔力の粒子になってその場に漂う。

「再び集い、槍となれ」

氷の魔力の粒子が、新しい形を作り始める。


(あの魔力量なら、作れて一本程度、、、)

(でも、それでいい)

「氷槍」

氷の魔力が、細長い槍の形に完成する。

魔熊がその変化に気が付くが、ノクスが掴みかかり逃がさない。

体格に差はあるが、さすがはDランク相当なだけあり、ノクスは魔熊相手にも一歩も引かない。


「穿て!」

氷槍が、魔熊に向かって一直線に飛んでいく。

たった一本。

だが、その一本が魔熊の左目を貫いた。

魔熊は、大きな苦痛の声を上げる。


そして、魔熊が怯んだその隙。

ノクスが、魔熊の首に噛みついて深々と牙を突き立てる。

リキシアも、魔熊に向かって走ると、魔熊の胸に向けて全身を使って剣を突き立てた。

剣を一気に引き抜いた瞬間、魔熊の血が周りに飛び散る。

リキシアの体を、銀の髪を、その血が染め上げる。


魔熊はしばらく抵抗しようとしていたが、すぐにその体から力が抜け、倒れ伏した。


--魔熊の、討伐成功だ。


リキシアは、剣を鞘に納めると、笑みを浮かべる。

「ノクス、やったね」

ノクスも、嬉しそうに尻尾を振って応える。


リキシアは討伐証拠のために魔熊の牙を一本折ると、ポーチに入れる。

「さぁ、帰ろうか」

空には、太陽が高く昇っている。

そろそろ、お昼時だ。

街に帰って報酬を貰ったら、今日のお昼ご飯は、少しだけ贅沢をしてみても良いかもしれない。

そんなことを考えながら、その場を後にする。


森の間を抜けて開けた場所に出る。

森の木々のせせらぎが、街に向かって歩くリキシアとノクスを見送っていた。

<本日のおまけ>

リキシアの所持金:70シルバー

*変動なし

初めての討伐依頼を成功させたリキシア。

報酬の8ゴールドの事を考えると、リキシアもきっとウキウキでしょうね(´ω`*)


...ところで、リキシアはどうやら戦闘中に頭痛がしていたようですね。大丈夫なんでしょうか?

まぁ、きっと、本人が大丈夫だと言うなら、大丈夫なんでしょうね(・∀・)

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