「冒険者」(改訂版)
しばらく歩いていると、街の門が見えてくる。
門の近くでは、二人の騎士が立っていた。
「あのー、すみません」
リキシアは、騎士に話しかける。
ふと考えると、身分証も何も持っていない。
怪しまれてつまみ出されなければ良いのだが。
「おう、何だ姉ちゃん。見ない顔だな」
騎士の一人が、意外にも気さくな調子で話しかけてくる。
騎士とは言っても、あまりピリピリした感じではないのかもしれない。
この国の治安は良さそうだ、なんて考えながら、リキは少しホッとする
「実は、南の方から来た旅の者なんです。
この街の冒険者ギルドで、冒険者の登録をしたくて。通していただくことは出来ますか?」
この世界で『転生者』と言う者が珍しい物なのかは分からない。
とは言え、分からない以上、下手に話す必要もないだろう。
「おお、旅の者か!ミレアは初めてみたいだな。通って良いぞ。ミレアは良い街だぞ。せっかくなら楽しんでいってくれ」
先程の騎士が、笑顔で答えてくれた。
「ギルドは、門から入って割と近くにある。
受付の嬢ちゃんに言えば、ギルドカードも作ってもらえるぜ。身分証にも使えるから便利だぞ」
もう一人の騎士も、同じく気さくな笑顔を浮かべて話しかけてくれる。
騎士と言うのはなんとなく厳格で怖いイメージがあったが、案外そうでもないのかもしれない。
この世界ので初めての人との出会いが、予想以上に温かなもので嬉しくなる。
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街の中に入ってみると、活気にあふれていた。
どうやら、思っていた以上に大きな街のようだ。
道など全く分からないので、道すがら街の人に尋ねながら、何とか冒険者ギルドの前まで辿り着く。
「ふぅ。やっと着いたよ」
リキシアは、道中街の人から貰ったパンを齧りながら独り言を漏らす。
そのパンは、途中で道を尋ねたパン屋の奥さんが、「若い子ならたくさん食べなきゃだめよ」と言ってわざわざくれたものだった。
新しい世界でどこか不安も感じていたが、想像以上の温かさに触れて、もうすでに新しい「旅」が楽しく感じ始めていた。
「さて、行くわよ!」
リキシアは、冒険者ギルドの扉を押し開けて中に入る。
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ギルドの中に入ると、中は冒険者たちで活気にあふれていて賑やかだった。
壁際には、依頼書が張り出されているのであろう掲示板もある。何人かの冒険者が、その周りに集まっている。
ふと正面を見ると、カウンターに一人の女性が座っている。騎士の言っていた受付嬢だろうか。
「すみません。冒険者の登録をしたいんですけど、ここで出来ますか?」
リキシアは、早速その女性に話しかけてみた。
カウンターの机で何やら書類を見ていた彼女は、顔を上げるとその顔に微笑みを浮かべた。
「あら、新人冒険者さんですか?もちろんですよ。この書類に、必要事項の記入をお願いします」
書類に目を通してみる。受付嬢の彼女は、必要事項に記入するように言っていた。
登録名、年齢、職業。
それぞれの欄に、「リキシア」、「18歳」、「契約術士」と記入して書類を彼女に返す。
「ありがとうございます。確認しますね」
書類に目を通していた彼女が、一瞬目を細めた。
「どうかしましたか?」
「ああ、いえ。えっと、リキシアさん?貴方は、契約術士なのですか?」
「ええ、そうですよ。適正職業も契約術士でした。とは言っても、まだ誰とも契約してないんですけど」
リキシアは、笑いながらそう言った。
我ながら、誰とも契約していない契約術士など、まるで可笑しな笑い話だ。
「そうなんですね。 、、、契約術士になる方は珍しくて。適正を持つ人がそもそも少ない上に、なかなか強くなるのが難しい職業ですから」
「そうなんですね、、、。まぁ、私は強くなれなくても、新しい魔物や精霊の友達が作りたいだけですから」
リキシアがそう楽し気に笑うと、エレナはその言葉に一瞬目を見開いて微笑んだ。
「、、、友達、ですか。 ふふ、もしかしたら貴女みたいな人が、本当に契約術士に向いているのかもしれませんね」
そして、カウンターに一枚のカードを乗せる。
そのカードには、「リキシア」の名前と、大きく「F」の文字が刻まれている
「これがリキシアさんのギルドカードですよ。新規での登録なので、一番低いFランクからのスタートになります。依頼の数をこなし、試験に受かれば昇格していけますよ。頑張ってくださいね!」
リキシアは、カードを手に取ってみる。
これが、自分の「冒険」の始まりの証だと思うと、なんだか誇らしくすら思えてくる。
「はい、頑張ります」
「その心意気です、リキシアさん。そうだ、折角だし、何か依頼を受けてみますか?最初なので、これなんかどうでしょうか。ミレアの街東部の森での薬草の採取。
戦闘の可能性も少ないので、初めての依頼でもお勧めできますよ」
「薬草の採取ですか。確かに、これなら少し安心かも」
実際、いきなり魔獣の討伐依頼など受けても、十中八九怪我をして終わりだろう。
無理に背伸びをして早々に旅が終わってしまってはそれこそ笑い話にもならない。
「それじゃあ、この依頼受けます。ちなみに、報酬はどんな感じなんですか?」
「えーっと、報酬ですね。今回の依頼は薬草の採集依頼なので、採集していただける量によって変わります。具体的には、最低達成数20本で200シルバー、、、つまり2ゴールドですね。20本以上採取していただけた場合は、1本につき10シルバーで追加買取できます。この依頼でよろしいですか?」
「なるほど!そうなんですね、ありがとうございます。この依頼にします」
元気よく答えたはいいが、200シルバーと聞いても、この世界の通貨の相場など分からない。
ただ、そんなことを聞くのもなんだか変な話だし、黙っていよう。
それくらいの事なら、すぐに自分で覚えるだろう。
「それじゃあ、早速行ってみますね」
「ええ、行ってらっしゃい。森の入口は、東門から徒歩40分ほどの所にありますよ。それと、あまり森の奥に入りすぎないようにお気を付けください。奥の方では肉食の魔獣も出るらしいので」
「はい、分かりました!」
「あ、それと。初めての依頼を記念して、治癒ポーションのサービスです」
彼女はそう言うと、後ろの棚からポーションの瓶を二本取り出してリキに手渡す。
「え、いいんですか?ありがとうございます!」
この街には着たばかりだが、優しい衛兵と言い、パンをくれる奥さんと言い、ポーションのサービスと言い、良いことばかりだ。
こんな小さな人の温かさに触れるのも、冒険の醍醐味なのだろうと思う。
「それじゃあ、行ってきます。ちゃんと無事に帰ってきますね!」
リキシアは、ギルドを後にして、早速街の東門に向かって歩き出す。
温かな日差しが、リキシアの初めての冒険を祝福するように、彼女の姿を明るく照らしていた。




