模擬戦
広間の中心を挟んで向き合うリキシアたち。
リキシアの視線の先には、楽し気に笑みを浮かべているアウレアがいる。彼女はまだ構えても居ないが、素人目から見てもどこか圧倒的な強者の雰囲気を感じる。
「やるよ、ノクス。良い、無茶はダメだからね?」
そう言いながら腰の剣を抜き放ち深く息を吐く。
ノクスもそれに応えるように姿勢を低くして牙をむきだす。
「はっ! そうかよ、迷わず剣を抜くのか。 なら、覚悟は出来てるんだろうな?」
アウレアはそう言いながら、腰に下げていた一本の剣を勢いよく抜き放つ。
「……アウレア、分かっておるな? やりすぎは絶対に許さんぞ」
「分かってるよ、爺さん。 それに、先に抜いたのはあっちだぜ?」
その口調には決してリキシアの行為を責めるような響きはなく、むしろ楽しんでいるようだった。
そんなアウレアを、藍色と金色の瞳が真っ直ぐと射貫くように見つめている。
エリアスもそんな彼女たちの様子を見て諦めたのか、軽く息を吐くと広間の端にあるベンチにゆっくりと腰掛けた。
「さぁ、やろうじゃねぇか、嬢ちゃん。 遠慮なく来て良いぜ?」
アウレアがそう言って剣を構えなおしたのが開戦の合図だった。
「炎槍、七連。……穿て!」
魔法を展開するリキシアを傍目に、ノクスももうすでに動き出していた。
宙を鮮やかに翔ける七つの炎と、それに合わせて地を駆けるノクスがただ一点、アウレアに向かって突き進む。
「いいじゃねぇか! 面白い!」
その瞬間、満面の笑みを浮かべたアウレアから何か大きな力が溢れ出したのが感じられた。
初めて感じたその感覚に、リキシアは一瞬目を見開いて動きを止める。
「……魔力、じゃない?」
「はっ! 剣士の戦いを見るのは初めてか!?」
その言葉と共にアウレアが剣を一閃すると、彼女に向かって突き進んでいた魔法が全て一瞬にしてかき消えた。ノクスは、その刃の軌跡を身をかがめて何とか避けると、それでもアウレアを爪で引き裂こうと跳びかかる。
「おっと! 悪いね!」
アウレアは軽く笑ってそう言うと、少し後ろに下がってノクスの爪を避けるとその勢いのまま足を振り上げてノクスの腹を蹴り飛ばす。
そしてアウレアはそのまま、吹き飛んだノクスに向かって一直線に距離を詰めようとする。
「……障壁展開、五層!」
アウレアとノクスの間に五枚の薄い魔力の壁が立ちはだかる。
アウレアの剣がその障壁を紙のように切り裂くが、その一瞬、ノクスはその刃の向かう先から外れて距離を取る。
(さっきの魔法じゃ届かなかった……それなら!)
アウレアの一撃を凌いだノクスを視界の端に収めながら、アウレアを真っ直ぐ見つめて言葉を紡ぐ。
「炎よ集え。風よ嵐のごとく吹き荒れよ。 炎嵐の槍、三連!」
炎の魔力に風の魔力を合わせて威力を跳ね上がらせる。
二種の魔力の制御が大きな負荷になる分、数は控えめに、、、。
炎と風の魔力が混じった先ほどと比べても一段と大きな魔法の槍がリキシアの周囲に浮かび上がる。
それを見てアウレアはその隙に一気に距離を詰めようと踏み込む。
「障壁展開、三層!」
今度は、ただの壁ではなくアウレアの周囲を囲む小さな檻のように、、、。
「面白い!!」
周りの進路全てを塞がれたアウレアはそう叫ぶと、再び剣を一閃させる。
鋭い刃の一撃がまたもや障壁をいとも簡単に切り裂くが、その一瞬、リキシアの言葉が紡がれる。
「……穿て!」
三本の魔力の槍が一瞬立ち止まったアウレアに向かってそれぞれの方向から勢いよく飛んでいく。
アウレアはそれらを一瞥すると、素早く体を動かし全てをものの見事に避けて見せる。
また、魔法は全て彼女に届かなかった。
しかし……
「……避けた!」
「ははっ! そうだな、今のは良かったぜ?」
アウレアはリキシアの素直な喜びの言葉に楽し気に笑みを浮かべながら一瞬動きを止めてそう返した。
そして、その背後から飛びかかろうとしたノクスを軽くいなして再び振り飛ばすと、剣を構えなおしてリキシアに向き直る。
「だが、次は私の番だ! 避けて見ろ!」
その言葉と同時に、アウレアが地を蹴り一気にリキシアの方に距離を詰めて、剣を振りかぶる。
きちんと手加減もしてくれているのだろう。
自分でもなんとか目で追えるだけの速度、、、。
だが、一度避けたところでどうにかなるわけではない。
一瞬、リキシアはその口にわずかな笑みを浮かべる。
「障壁展開、十層」
自身の周りに障壁を重ねて展開する。
そして次の瞬間、アウレアの動きに合わせるように、むしろ前に踏み出すと、右手に持つ剣を捨てる。
「纏え、雷光」
目の前に迫った剣を正面から受けるように左手を掲げ、もう片方の右手には限界まで凝縮された雷の魔力が纏う。
「……ちっ!」
口元に笑みを浮かべるリキシアと、驚愕に目を見開くアウレア。
一瞬二人のその視線が交差し、次の瞬間、障壁を全て切り裂いた刃はすんでの所で軌道を変えてリキシアの左腕のすぐそばでひらめいた。
それと同時に、さらに一歩踏み込んだリキシア右手が、アウレアの腹に当てられる。
次の瞬間、リキシアの右手の雷の魔力が思い切り爆ぜ、アウレアが吹き飛んだ。
「炎嵐の槍、三連。 穿て!」
間髪入れず、魔法を展開して追撃を放つ。
その時、吹き飛ばされた後起き上がったばかりのアウレアの瞳が鋭く光る。
次の瞬間、アウレアの姿が視界から掻き消えた。今度は、目で追うことすらできなかった。
そして、気が付いたときにはリキシアはアウレアに地面に組み伏せられていた。
「……あーあ。 終わっちゃった」
リキシアはどこか満足気にそう呟いたが、それを見るアウレアの瞳は笑みを消していた、、、
本当に久々の後書きに登場した作者のたっけんです(/・ω・)/
今回のお話、どうだったでしょうか、、、?
やっぱり、リキシアの戦い方がどこかおかしいような、、、?
まぁ、本人が楽しそうなのですべてよし! ですね(・∀・)
次のエピソードではアウレアとエリアスがどんな反応をするのか、、、
楽しみですね(*'▽')




