第一話 魔王を倒したのに異形だと言う理由で追放されました
「コージ・イチハラ、よくぞ我らを苦しめた魔王ヴァルドを倒してくれた、礼を言うぞ」
「滅相もございません。姫や仲間の協力があってこそです」
「そうかそうか、やはり姫や仲間の力が大きかったか。勇者のお前が言うなら嘘ではあるまいな!?」
なぜ念を押すのだろうかと思い顔を上げてみると、そこには以前のような優しい顔をした王様ではなく、悪魔のような笑みを浮かべる王冠を被った老人がいた。
「え、あ、はい……皆の力で魔王を倒せたと思っております」
「姫の力が大きかったのなら是非もなし。今日を持ってお前の聖騎士の資格をはく奪し、聖都への出入りを禁ずる。異形の者を勇者として置いておくことに民は反対でな」
転生前は四十四歳のスーパーの店員だった俺には、確かに勇者というのは相応しくない。
この国で赤ん坊からやり直しになったものの、十二歳で魔族に襲撃され連れ去られた。
なんとか生きて帰ってこれたものの、体を魔族の研究のために改造され、戦う際に異形の体に変わってしまう。
俺としては愛した特撮ヒーローの見た目に近く、それだけが救いだったが皆は違った。
見た目がどの種族とも違う異質な存在だとして、国中の誰からも疎まれていたのは知っている。
それでも皆を襲う魔族、そしてその王である魔王を倒せば、きっとみんなの見る目も変わると信じて戦ってきた。
結果として帰って早々変わらなかったことを突き付けられ、やっぱりだめかという諦めの気持ちになる。
「そういえばお前と話していた姫との結婚も忘れてくれ。聖都の主である者がお前のように醜い姿に変わる者では、先祖たちに申し訳が立たぬ」
後ろで誰かが立ち上がり横を通る際に高く浮かれた声で
「ごめんなさいね、コージ」
そう言って前へ歩いて行った。
見るとそれはセットー王の娘であり、俺の元婚約者の魔法使いリースだった。
魔族を倒して国に帰ったら必ず結婚しましょう、そう彼女は言っていたはずなのに何故王の元へ行ってしまうのか。
旅の最中も同じパーティの僧侶、セウトと夜に二人で会っていたのは知っているがまさか……。
「代わりの跡取りはもう決めてあるから心配するな。さぁもうお前は用済みだ、とっとと失せるが良い化け物めが」
王は吐き捨てるように言い、姫はその言葉を聞いて口に手を当て笑っている。
あまりのことに即答することが出来ず、これまでのことが走馬灯のように駆け巡った。
振り返れば幸せだった場面の裏には、いつも密会や俺を除者にした飲み会などがあり、それを偶然こちらが目撃したのを知っている者もパーティにはいる。
誰からも俺をかばう声はなかった。
だとすればこの場に相応しくない者は一人しかいない。
「わ、わかりました……失礼します」
そう言って俺は立ち上がり王の間を出ていくことにする。
全力で命がけで戦ったが皆の見る目は変わらなかった。
悔しく残念ではあるが何もかもが最初から嘘で、元から何一つなかったと考えればすっきりする。
城を出ると空は夕焼け色に染まっており、物悲しさを共有してくれているようで、少し寂しくはなかった。
ードゴォッ!
町を出て当てどなく歩き森に入った瞬間、後方から凄まじい音がした後で、少し間を開けてから強い風が吹いてくる。
振り返ると街が火に包まれていた。
一瞬元仲間だった者たちの顔が過り戻ろうかと考えたが、あれも幻だろうと考え向き直り再度歩き出した。
「待て! コージ!」
どこへ行こうかと考えていると、後ろで誰かが叫びながら近づいてくる。
声の主は例のセウトだが恐らくそれも幻だろう。
そう考え無視して歩いていたが、白い馬に乗って横へ現れた。
「聞こえないのか、コージ! 魔族の残党が攻めてきたんだ! なぜかお前がいなくなったと同時に、聖都の結界もなくなってピンチなんだ!」
「だから何だ?」
「魔族を倒すのはお前の役目! お前の仇だろう?」
「俺の仇はもう済んだし、お前たちを俺を用済みだと言っただろう?」
「そ、それはあの時は……」
「魔族が滅んだと思ったから、だよな?」
馬から降りることもせず押し黙るセウトに対し、王様にでもなったつもりなら自分で何とかしろ、そう吐き捨てて森の中へと進んでいく。
第一話をお読みいただきありがとうございます。
第二話は12時投稿予定です。
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