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翌朝、父に連れられ、家の近くの昔市役所だった建物に行った。
入口で、マイナンバーカードを受付機械のスキャンに翳し、受験票を受け取った。
「2階の201号室へどうぞ」と機械的な音で案内があり、父と二人で階段を上がった。
廊下には僕と同じくらいの年齢の子供が2~300人はいると思う。まぁ、数えた訳じゃないけどね。
この子供全員を201号室から207号室に分けて入室させ、「受験票と同じ番号が書かれた机に座ってください」と監督するAIが流ちょうに説明した。
僕の席は、前から4番目、左から2番目だ。
全員が着席してしばらくすると、チャイムが鳴った。
試験用紙が配られ、「開始!」と監督官AIが言って、試験がはじまった。
内容は簡単な書き取りと計算だった。
多分、大丈夫だと思う。
そして、試験を受けた後、そのまま複数ある医務室と呼ばれる別館の大きな部屋の一つへ連れていかれ、医師によって一人一人虫歯があるかどうか確認され、正しい歯磨きの仕方を習う。
歯磨きのやり方なんかは、一人一人につきっきりで教えなくても、一度に何十人にも分かる様に、映像なんかを投影して教えればいいのにとあおい兄ちゃんが言ってたのを思い出した。
1週間後、受験結果を教えてもらう為と、健康診断を兼ねて、受験をした元市役所へ来いという通知が来た。受験結果は指定された2週間のいずれかの日に元市役所へ行かなければ知る事ができなかった。健康診断と歯磨き教室を何故同じ日にしないんだろうと首を傾げたが、まぁ、どっちにしても受験結果は市役所へ聞きにいかなくてはならないのだ。
いろんな事がネットを使って通知される社会なのに、わざわざ元市役所まで行かなくてはいけないのは面倒だが、医療費が実費になった中、小学校受験の時のみは無料で健康診断してもらえるので、どの親も喜んで子供を元市役所へ連れていった。
僕は、今度も父さんと一緒に元市役所へ来た。
なんと!僕は小学校に合格していた。
合格した子供は左胸に桜の花のシールを付けられた。
もちろん、僕の左胸には桜の花が咲いている。
受からなかった子は、そのまま健康診断を別室で受けるらしく、元市役所の別館へ行かされたみたいだ。
太郎にぃに聞いた事があるが、別館では大きなカプセルみたいな機械に入れられて横になるらしい。
しばらくすると眠くなって、起こされた時には、付き添いに番号札が渡され、後日その番号やマイナンバーカードの番号を特定のHPに入力すると健康診断の結果が分かるらしい。
太郎にぃの時も父がHPで検索したらしいが、親知らずが1本あっただけで、別に大きな病気はなかったとのことで、医者のコメントとして歯の治療だけする様にとだけ言及されており、それで終わりだった。
これは国民には知らされていないが、受験日の歯磨きうんぬんの時に、一人一人新しい歯ブラシを渡され、それを使って歯磨きの仕方を教えられる。
その時使った歯ブラシは、厳重にパッケージされ某所に運ばれる。後日、DNA検査をされ、優秀なDNAとそうでないDNAの持ち主に振り分けられる。
頑張れる人、成功する人、何にもしなくてもいろんな事を苦も無くできる人、これらの人はDNAによって選別できる。
それが上流層の考え方だ。
ただし、上流層の住民は例外なく私立の学校へ行くので、このプロセスを飛ばす事ができる。
つまり、DNAでの選別を受けるのは一般の市民だけということになる。
受験の結果を聞きに行った時、筆記試験の結果で受験に失敗した者は、事前に調査されたDNAによって、更に選別され、男の子はカプセルの中でパイプカットを、女の子は子宮が万全に機能する事がない様、卵管にとある薬品を塗布されるのだ。
これら一連の医療措置は、AIとつながれた精密機器が行うのだが、子供たちの親には知らされない。
つまり、働かない市民の内、小学校受験に失敗し、尚且つDNAが優秀でないと判断された者は、子供を産む自由も奪われるのだが、この頃の市民には、小学校入試が何を意味しているか、知る者は少なかった。
小学校は留年や退学も適用され、一旦入学した後も、気を抜く事なく勉強しなければ、すぐに放校されてしまう。
みのりも弟妹の受験勉強をみてやりたかったが、あおい兄ぃと同じ様に、入学後は自分の勉強だけで手いっぱいになった。
高校、大学も受験があり、一定の学力に達っしているかどうか、日ごろの態度なども加味され、合格不合格が決定される。
大学までちゃんと卒業して初めて、何等かの仕事に就く事ができる。
分かっていても、多少人より多く稼ぐために、何年も勉強するというのは、普通の子供には苦しい。
周りを見渡せば、学校にも行かず、働かず、ゲームして、漫画を読んで、アニメを見て楽しく過ごしている子供が殆どなのだ。
親に怒られても途中で小学校をリタイアする子供も結構な数いるのだ。




