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天魔の子(仮)  作者: タロさ
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待ち伏せ

ビートルの部屋に集まった者達。

それは、彼の私兵ともいえる、金で雇われた王都から来た冒険者達だった。

彼らは、冒険者でありながら、ギルドを通さず、ビートルの依頼を受けている。


勿論、その仕事は、表立って依頼できない内容なので、

ギルドを通しても依頼事態を却下されるのだ。

その為、荒くれ者で、金の為なら何でもする奴らを子飼いにしている。


「今回は、時間がない。

 弱みを探す時間などもないのだ」


「では、どうするんです?」


「あの男には、娘と大事にしているガキがいる。

 どちらでもいい、攫って来い」


ビートルの言葉に、男達は笑みを浮かべた。


「旦那、あっしらもここまで来たんだ。

 仕事をやらねぇとは、言わねぇ・・・・・

 ただ相手は、子爵様の子供だ。

 少しばかり、色を付けてもらわねえと割が・・・・」


男の言葉を聞き、ビートルは答える。


「わかっている。

 ただし、失敗は、するなよ」


「へへへ・・・・わかっていますよ。

 明日にでも、探りを入れてみますわ」


「ああ、頼んだぞ。

 これは、手付だ」


ビートルは、金の入った小袋を男達の前に置いた。

男は、袋を受け取ると中身を確認する。


「これ、前金ですよね?」


「当然だ、後は依頼を終えたら払ってやる」


「ありがてぇ、旦那は、いつも羽振りがよくて助かるぜ」


男は、小袋を懐にしまうと、立ち上がり、部屋を出て行った。



男達が去った後、ビートルは、部屋に用意させていた葡萄酒をグラスに注ぎ

一気に飲み干した。


「この私に逆らった事、必ず後悔させてやる・・・・・・」



翌日、ビートルに雇われた冒険者達のリーダー【ギル】は、仲間を引き連れて

街に出ていた。


探しているのは、情報屋。

日中だが、無理を言い、落ち合う約束を取り付けていた。


市場を抜け、その先の指定された廃屋の1つに入る。

ただし、中に入るのは、リーダーのギルだけ。


それが、情報屋の条件だった。

情報屋は、大勢の前には姿を見せようとはしない。

だが、この情報屋の情報は、信頼のできるものとして、

裏の世界では、有名なのだ。


ギルが廃屋に入るが、誰の姿もない。


「ちと、早かったか・・・・・」


そう呟いたとき、声だけが聞こえてきた。


「金を、そこのテーブルに置け」


「えっ!?」


ギルは、一瞬驚いたが、前もって聞いていた通りだったので、

落ち着いて、金を指定されたテーブルに置く。


「後ろ向け」


ギルは指示に従う。

すると、その隙に、突如、獣が現れ、金の入った小袋を奪って消えた。


どこかに隠れている情報屋が話しかける。


「聞きたい事はなんだ?」


「ヴァイス家の事だ。

 娘やそこ住んでいるガキ。

 出来たら、弱みもあれば教えて欲しいんだがな」


ギルは、できる限り聞き出そうとする。

しかし・・・・・


「この金額では、見合わん。

 欲しい情報を絞れ、そうでなければ、この話は無かったことにする」


『チッ』と舌打ちをするギル。


「ああ、わかった、わかったよ。

 娘とガキの事。

 行動などを教えてくれ」


「・・・・・わかった」


ギルは、一通り情報を得ると、廃屋から出て行った。


「おい、行くぞ」


仲間を引き連れ、直ぐにその場から足早に去る。

向かった先は、貴族街ではなく、市場。


狙われたのは、エンデではなくエヴリン。


メイド達と一緒に、市場に買い物に来ているのだ。

先程、情報屋からその話を聞き、急いで市場まで戻ってきた。


ギルは、エヴリンの特徴を仲間達に伝え、四方に分かれて探し始める。


人の多い市場での探索。

紛れることが出来るので、ギル達にとって好都合だった。


そして、ギルの仲間の一人【グレッグ】がそれらしき集団を見つけた。


綺麗なドレスを着た少女。

その子に伴って歩く2人のメイド。

その後ろから、荷物を持つ下僕と思われる少年。


グレッグは、近くにいた仲間に合図を送る。


グレッグが見つけた一行は、買い物を終えると馬車を止めている広場に向かう。

馬車に向かう途中、人気(ひとけ)のない道を通るのは確実。

襲撃をかけるのには、好都合。


ギルは、仲間を集め、一行を待ち伏せる。


そこに現れるエヴリン達。

買い物を終え、楽しそうに話しながら歩いている。


━━今のうちに、精々楽しんどきな・・・・・・


ギルは、その一行を眺めていた。

そして、仲間達で囲んだ網に入った瞬間、

ギル達は姿を現し、有無を言わせず襲い掛かる。


「きゃぁぁぁぁ!」


「エヴリン様!」


武器を手に襲い掛かる集団に、悲鳴を上げるメイドと、体を張って守ろうとするメイド。

悲鳴を上げたメイドは、初手で傷つき、その場に倒れた。


周りを取り囲む襲撃者達。


メイドの叫んだ名前を聞き、間違いが無い事を確信すると、ギルが声をかける。


「大人しくしていれば、娘の命は保証してやる。

 まぁ、メイドとそこのガキの命は、保証できねえがな・・・・・」


「でも旦那、このメイド、中々いい女ですぜ・・・・・」


下卑た笑みを見せる男。


「好きにしたらいい。

 だが、娘は逃がすなよ」


「ええ、わかってます」


襲撃者達は、再び襲い掛かろうとした。

しかし、何かに弾かれる。


エヴリン達に、近づくことが出来ない。


「なんだこれっ!」


見えない何かによって阻まれている。

荷物を下ろしたエンデは、傷ついたメイドに近寄り、傷を癒す。


『ヒール』


翳された右手から、放たれる癒しの奇跡。

メイドの傷は、一瞬で完治した。


「あれ、私・・・・・」


エヴリンを守っているメイドが告げる。


「大丈夫です。

 坊ちゃまが、治して下さいました。

 それよりも、悲鳴を上げるとは何事ですか!

 お嬢様を守りなさい!」


「は、はいっ!」


慌てて起き上がるメイド。

そんな2人のやり取りを見ていたエンデ。


「大丈夫、安心して。

 もうあいつ等、近づけないから・・・・・

 でも、そこから動かないでね」


エンデの言葉を聞き、安心したエヴリンは強気になる。


「あいつ等、やっちゃって!」


「えっ!

 いいの?」


「当然よ、私たちを襲ってきたのよ。

 それに、【エイダ】なんて、怪我をさせられたのよ!」


エンデは、街中では、あまり力を使わないように

マリオンとルーシアから言われている。


その為、攻撃を仕掛ける事に、躊躇していた。

だが・・・・・


エヴリンは、違う。

お構いなしだ。


「おねぇちゃんの命令よ!」


「わかったよ・・・・・」


使用人だと思っていた子供がエンデだと知ると、

ギル達の形相が変わる。


「こいつがもう一人のガキだったのか・・・・・」


今回の狙いだった2人が、ここにいる。


「おい、おめえら、どっちでもいい。

 攫ったら、ずらかるぞ!」


「おう!」


襲撃者達は、気合を入れなおす。

しかし、どう足掻いても、エンデの結界は破れない。

呪文を唱えていない、見えない。

襲撃者達は、戸惑っている。


「クソッ!

 これは、なんなんだ!」


エンデは、ゆっくりと結界の外に踏み出す。


「翼は、出しちゃダメよ!」


エヴリンの忠告に、エンデは頷いた。

メイド達も、エンデの事は理解している。


一度、マリオンとルーシアは、メイド、使用人達を集めて、

エンデの事を『我が子』だと紹介し、

その上で、翼を見せ、不思議な力があることも伝えていたのだ。


勿論この事は、外部に漏らさないように厳命している。


だから、この場にいるメイド達も安心している。

傷を治してもらったエイダは、既に元気になり、

掛け声をかけて、応援している有様。


「坊ちゃま、やっちゃって!」


呆れた顔を向けるもう一人のメイド【アラーナ】。


「貴女は・・・・・」



結界の中で、落ち着きはらうエヴリン達。

しかし、結果の外に踏み出したエンデには、襲撃者達の攻撃が始まっていた。




不定期投稿ですが、宜しくお願いいたします。

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