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うちのお嬢様が破滅エンドしかない悪役令嬢のようなので俺が救済したいと思います。【WEB版】  作者: 古森きり@書き下ろし『もふもふ第五王子』
アミューリア学園二年生編

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番外編【マーシャ】6



6月になりました!

最近訛りがひどいぞって義兄さんに怒られたので、今月は訛り封印月間にする!

そしてついにメグが使用人宿舎に引っ越してきたよ!


「わーい! メグー!」

「マーシャ! えへへ、今日からよろしくね!」

「うん!」


最低限の荷物を持ったメグ。

私もメグが来たことで2人部屋にお引越し!


「え、マーシャと同じ部屋なの?」

「うん。基本的に同じ家のメイドは同じ部屋だったような?」

「なんで疑問形なの…」

「まぁ細かいことは気にしないで! それより、義兄さんから制服預かってるよ!」

「わあ」


紺色のメイド服。

義兄さんにわたしと同じ丈のやつと、それより長いロングのやつの二種類を手渡された。

更にダサいから誰も被らない帽子。

こんなのメグだって被らないんじゃないかなぁ?


「ロング丈と膝丈の二種類だよ。こっちが膝丈! わたしはこっちを着てるんださ。…んん、着てるんだ〜」

「? なんで言い直したの?」

「訛り封印月間なんよ!」

「訛ってんじゃん」

「ふうぅっ!」


くっ、ダメだ。

気を抜くと訛っちまう!

首を横に振りながら、決意を新たにする!


「なんで? あたしはマーシャの喋り方可愛くて好きだよ」

「メグ〜…」


お嬢様もおんなじこと言ってくださったんだよ〜。

…………けど、同時に「でも、学園ではダメよ。貴族社会に飛び込む事になるのだから、少しでも付け込まれる隙は減らさなければ」って言われたんだよね…。


「…うん、でも…少しでも訛りは直さないとなんだよ〜…。来年からアミューリア学園に通うから…」

「あ、そっか…。貴族の人たちに馬鹿にされちゃうもんね…」

「うん。それでなくとも、わたしポンコツで有名だし…」

「ポンコツで有名……」


義兄さんにもいつも怒られてばっかりだもんな〜。

気を付けてるつもりなんだけど…わたしってなんでこう同じ失敗を何度もやっちまうんだべ。


「まぁいいや! とにかくメグにはリース家の使用人の心得とお仕事を教えるね!」

「うん、宜しくね。……。……え、マーシャが教えてくれるの?」

「うん! 義兄さんに「人に教える事でお前のポンコツっぷりが少しは改善されるかもしれない」って言われてるんさ!」

「…………(マーシャ…それはかなり諦められてるよ…!)……そうなんだ、じゃあ、お願い」

「うん!」


とりあえずメグにはメイド服を着てもらう。

メグが選んだのはロング丈のメイド服。

そして耳を隠すために帽子も被った。

……そっか、メグは亜人だから耳と尻尾を隠さねーといけねーんか。

バレたら町にいたおっさんたちみたいにメグのこと叩こうとする人が居るかもだもんな。


「どう?」

「うん! 完璧!」


エプロンのリボンは縦結びになってないし、スカートの裾もまくれてない!

帽子を被ってるからわたしみたいに髪を結う必要もないしね。

…あ、いや、元々メグは髪長くねーけど。


「メグ、可愛いよ!」

「え! ……えへへ、ありがとう」


笑顔で喜んでくれるメグ。

うんうん、お世辞抜きでとっても可愛いさー。


「…………。……このあとなにすればいいんだべ」

「早いよ⁉︎ まだメイド服着ただけだよ⁉︎ ……と、とりあえずマーシャが普段やってる仕事を教えてよ」

「分かったさ!」


ポケットの中から、義兄さんに貰った「やることリスト」の書いてある手帳を取り出す。

教わったことはぜーんぶこん中に書いてある。

私の宝物の一つ!


「えーと、まずは6時起床。お嬢様より早く起きるのは屋敷にいた時同様、メイドとして当然のこと!」

「6時起床ね」

「起きたら身だしなみを整える。リース家のメイドとして恥ずかしくないよう必ず鏡で確認するべし! 寝癖、靴下を裏表反対、襟、リボンの縦結びは言語道断!」

「うんうん…。…靴下?」

「た、たまにあるんさ!」

「そ、そう…?(それはマーシャだけじゃ…)」


昨日もうっかり靴下の裏表を間違えて履いてたもん。

…義兄さんが「お前の靴下は全部同じやつにしておいたからな。種類が違うと左右間違えかねない」って言っておんなじやつたくさん揃えてくれなかったら…ほんとに左右別な靴下はいてたかもださ。

…気を付けてんだけどな〜…?


「えっと、身だしなみを整えたら朝食を素早く優雅に摂るべし。朝食は活力! 抜くのは自殺行為!」

「…ふむふむ。…朝食って、どこで食べるの? 食堂がある、とか?」

「うん! あ、あとで案内するね!」

「うん、よろしくね」

「えーと、ご飯を食べたら〜……お嬢様を起こして差し上げる。これはお嬢様付きのメイドになった以上休日以外欠かしてはならない。優しくお声がけすれば目覚めの良いお嬢様はすぐに起きてくださる。…自分が寝坊するのは……論外……………」


…今朝も寝坊したんだよなぁ……。

だ、だって、メグが来るから楽しみで眠れなかったんさっ!


「………。……マーシャ、変な汗出てるよ?」

「う、うん…」

「さては寝坊の常習犯だな?」

「なんでわかったの⁉︎」


メグは特殊能力があるか⁉︎


「やっぱりね。…いいよ、明日からは私が起こしてやるから」

「メーグー!」


なんという頼もしい!

感極まって抱き着くと、メグはあわあわする。

あ、やば…苦しかったかな?


「えへへ、嬉しくってつい…ごめんね」

「も、もう…。…そ、それより、仕事の説明! まだ終わってないよ」

「あ、そうだべな。次はお嬢様のお着替えのお手伝い。そしてお食事をご用意する。女子寮には食堂があるはずなので、そちらへご案内し、朝食を摂っていただく。女子寮の内装もきちんとチェックしてどこに何があるのかを覚えておくと良い…そして、食後のお茶……お茶…」

「お、お茶…?」


やべぇさ…お茶淹れはメイドの嗜み…。

義兄さんがいねぇとお茶淹れに関しては教えられねぇさ…。

ど、どないすんべ。


「お茶がどうかしたの?」

「う、うん…今度義兄さんにお茶の淹れ方教わるといいさ。お嬢様のお好みは義兄さんが一番よくわかってる」

「え? お茶って種類があるの?」


そこから⁉︎


「そ、そりゃそうだべよ! 高地や麓で取れたり、乾燥の度合いや種類、焙煎なんかでもお茶はめちゃんこ味変わるんよ!」

「そ、そうなの⁉︎」

「うちのお嬢様はさっぱりめの口当たりで、甘いお菓子と合わせて食べるのがお好きなんさ! 淹れ方も茶葉もあんまりこだわりがなく、むしろ色んなのを試したいタイプ! 義兄さんは茶葉の特徴や淹れ方を日々研究してるからお嬢様にお出しする時には大体お嬢様好みに仕上げて来るんだよ、おっかねぇべ⁉︎」

「う、うわぁ……」

「その上、最近じゃレオ様やスティーブン様のお茶のお好みまで把握してるんよ! ヤベェよ、あの人!」

「レオ、様……って…」

「あ、レオハール様だよ」


メグ憧れの王子様だべさ。

って付け加えるとボワっと顔が赤くなる。

…いつか会わせてあげてぇな〜。

そうだ、今度のお昼ご飯の時連れてくべ!


「あんた、王子様の愛称呼ぶくらい仲いいの…?」

「え? うーんと、王子様と幼馴染の人と仲良くさせてもらってるさ。恋愛小説仲間でねー、話してたらいつの間にか呼び方が移っちまって…!」

「そ、そうなんだ…」


ぷくぅ、とメグのほっぺが膨れる。

かわいー、けど…なんで拗ねたんさ?


「もう! ほら、仕事の説明の続き! それで終わりじゃないんでしょ!」

「あ、うん! …そのあとは…お嬢様をお見送りする。お嬢様のお部屋を掃除する。布団を干し、お嬢様が快適に過ごせる空間を作るべし…!」

「いよいよメイドっぽい仕事ね」

「うん、そしてお掃除の後はお洗濯…シーツや下着などは毎日洗い、お嬢様に清潔に過ごしていただく…」

「毎日! …さすが貴族様ね…」

「…お嬢様のお休みになるベッドを整えるのを忘れてはならない。人間は人生の半分眠っている。睡眠はお嬢様の健康を維持する上で重要なものの一つである…!」

「う、わ、そんな事考えた事もなかったよ! …でも言われてみるとそうか…」


ここまで読んでから、義兄さんにもらったメモが改めてすごいと実感だ。

義兄さんはこれ以外にもお嬢様のドレスや靴や装飾品の発注、スケジュール管理、体調管理、朝食とお弁当の準備…などなどをやってるんだもんな…。

あとはお嬢様が欲しがっとる資料作ったり、新しい料理のレシピを作ったり…。

義兄さんがゴリ押しで作った『ダイズ』から作られる『ミソ』と『ショウユ』なる調味料は、今リース家で量産出来ないか研究が進んでるんだ。

これが量産され、販売されるようになると新しい利益になること間違いねぇって義父さんが言ってたし!

…やっぱうちの義兄さんはすごいなぁ…。


「掃除洗濯料理…概ね考えてた通りか…」

「うん、あとお風呂のお手伝い!」

「お風呂のお手伝い⁉︎ なにそれ⁉︎」

「そりゃあもちろんお嬢様のお手を煩わせないように、お身体を隅々まで洗って差し上げるんさ!」


まあ! わたし一度もお嬢様のお風呂にご一緒したことないけど!

何故ならお嬢様に「お風呂くらい一人で入れるわ」って言われるし、義兄さんにも「お嬢様に余計な手間を掛けさせる羽目になるからやめておけ」って言われるんさ!

……否定出来ない自分が虚しいね!


「…マ、マーシャとお風呂…」

「は?」

「あ! な、なんでもないよ! 他には⁉︎」

「えーと…あと勉強だな!」

「勉強が仕事なの⁉︎」

「うん! …食器の置き方とか、お皿の選び方とか、お掃除のやり方とか…お客様のご案内の仕方から、お客様のご主人様との親密度や爵位が上の方に対する接客対応の仕方とか…そういう細かい仕事のマナーのお勉強! …これが果てしなくて心が折れるんだよ〜…」

「…や、やめてよ! 早くも不安になってきたじゃん!」


あと、今のわたしはダンスやお茶会、夜会のマナー。

テーブルマナーに、婚約に関する勉強も加わってる。

あ……思い出したら心が重く……。


「お嬢様はマナーにすごく厳しい方だから、最初は許してくれるかもだけど……容赦はしてくれねーさ…」

「それ許されてなくない?」

「いやいや、許されてるよ! だってほら! わたしはまだクビになってないよ!」

「……………………」


前にお仕えしてた令嬢はみーんなすぐにクビって言うさ!

…まあ、わたしがドジなのが悪いんだけど…。


ぐーーーー……。


「あ…」

「え?」


お腹を押さえる。

や、やばいべ…聞こえたよね今の…はわわ…。


「まさかあんたご飯べてないの?」

「うっ……だ、だって! メグが来るからと思ってワクワクしてたら夜更かししちゃったんだもん! いつもの寝坊とは一味違うさ!」

「いや、寝坊は寝坊でしょ」


その通りだけどメグも容赦ないさー⁉︎


「……でも、あたしも今日が楽しみで昨日寝れなかった」

「ほんと⁉︎」

「うん。…でもつまりそれで寝坊して朝ごはん食いっぱぐれたと」

「うぐぶっ!」


メ、メグにはわたしのドジを見通す力でもあるんだべか……?


「仕方ないやつだなー……。…食堂案内してよ。少し早いけどお昼ご飯食べよ」

「あ、うん!」

「…確か使用人宿舎にもシェフの人がいるんだよね?」

「うん、今の時間は……いたかなぁ?」

「まあ、行ってみよ」

「うん!」


一緒に部屋を出る。

これから毎日メグと一緒なんね!

そう考えたらウキウキだべ〜!



…………ちなみに、宿舎の食堂にシェフはいない時間だった。

とほほ〜。




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