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うちのお嬢様が破滅エンドしかない悪役令嬢のようなので俺が救済したいと思います。【WEB版】  作者: 古森きり@書き下ろし『もふもふ第五王子』
アミューリア学園二年生編

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ラスボ…いや、戦巫女召喚!【中編】



「まず、この世界の事を少し話すね。君を召喚した理由。……そして、僕らに協力してもらえるかどうか……」

「は、はい。お願いします」

「それから、君が元の世界に帰る方法も」

「は、はい」


レオがチュートリアルを語り始める。

この世界が五つの種……『人間』『獣人』『人魚』『妖精』『エルフ』で500年置きに大陸の支配権をかけて戦争をしている事。

そして、クレイたち『亜人』は神々に存在を認められず居場所がない事。

人間と亜人は手を組んで、戦争に勝利しなければならない事などなど。

彼女は食事していた手を下ろし、どんどん表情を曇らせていく。

まあ、無理もない。

だって俺たちは彼女に……こんな年端もいかない少女に「一緒に戦争へ行ってください」と言っているんだ。

とは言え、彼女には今のところ元の世界へ帰る術がない。

その事もレオは申し訳なさそうに説明した。

帰る術がない事に完全に絶望したような巫女殿。

うう、胸が痛い……。


「そ、そんな……帰れ、ない……?」

「今のところ、ね。ミケーレ」

「はい、目下研究中です。巫女殿と女神エメリエラ様の協力が得られれば、帰る方法はいずれ見付けてみせましょう!」

「ほ、本当ですか? わたしは、帰れますか⁉︎」

「あ、そうだ。その君が手に持っているペンダント……その石は『魔宝石』と言うんだ」

「え? あ、これ? す、すみません、ずっと握ってしまってて……」

「いや、君が持っていていいよ。恐らくエメリエラの力で僕たちは今普通に喋れているんだ。手放すと言葉が分からなくなるはずだよ」

「!」

「今は君を召喚した事で眠っているけど……エメが起きたら色々聞いてみるといい。召喚に関しては彼女の案だ。送還に関しても教えてくれると思う。……まあ、僕が聞いても「ないのだわ」の一点張りだったけど……」

「エメ……?」


え? それダメじゃね?

女神エメリエラの事を聞いた巫女殿は肩を落とす。

この『魔宝石』の中の女神が自分を召喚し……そして「帰る方法はないのだわ!」の一点張りをしている。

そんな風に聞いたらそりゃへこむだろう。

憎々しくも感じるだろうに、この石を手放せば言葉が分からなくなる。

うーん、地獄のようだ。


「…………えっと、つまり、わたしが呼ばれたのは魔法を使って……せ、戦争に勝つ為、なんですね……」

「そう。申し訳ないとは思っている。……でも負けるわけにはいかないんだ。この国の民のためにも……」

「我が一族を陽の当たる場所で暮らせるようにする! 神々に我々はここに存在すると言う事を、認めさせる為に!」

「…………で、でも、わたしなんかが役に立つとは……お、思えません……。わたし、取り柄もない普通の人間なので……」

「今まではそうだったのかもしれないけれど、エメは君を選んでこの世界に連れてきた。君でなければ魔宝石の媒体になれないという事なんだ。君の力が必要なんだよ」

「そ、そんな事言われましても……」


段々と泣きそうになってしまう。

そうだよな、気持ちは分かる。

……戦争に行ってくれ、なんて……急に言われてもな……。


「…………。殿下、答えは今でなくともいいのではありませんか?」

「ヴィニー…? ……う、うん、まあ、そ、そうだよね。急に言われても困るものね……」

「ええ、それよりも……マリン様にこの国の事を色々知って頂くのはいかがでしょうか? 知らぬ国に突然来られたのです。マリン様、もしよろしければ、今晩行われる『星降りの夜会』に来られませんか? 本日は特別な日でして、レオハール殿下とうちのケリー様の婚約申し込みの日なのです。エディンテメェは思い直すなら今のうちだぞ」

「お前、俺への憎しみ隠す気本当にゼロだな?」

「? な、仲が悪いんですか?」


あ、そう見えますよね?

仲が悪いと聞かれると、多分悪くはないと思う。

俺はエディンを女関係以外では信用しているので。

しかし!


「いや? どうだろうな? ただ単にこいつの義妹に俺が今夜婚約を申し込む事になっているんだ。それでブチ切れているんだよ」

「! こ、ここっ……! 婚約を、って事は……け、結婚されるんですか⁉︎」

「俺の他にもレオとリースもな。結婚の約束……婚約をしてくれという申し込みだ。そうだな……巫女殿のドレス姿も是非見てみたい。エスコートはそこの暴言執事がしてくれるだろう。せっかくの夜会だ、来てみるといい」

「え? え?」

「え? え⁉︎」


俺⁉︎ 俺が⁉︎

……あ、でも消去法で俺か!


「ドレスは俺が用意してやろう。贈ろうと思って何着か見繕っていたから」

「今殺していいですか?」

「落ち着いてヴィニー。目が怖いよっ」

「? 贈らなかったんですか?」

「陛下が贈ったヤツを先に全部着せるとローナに言われた」

「「「……………………」」」


ケリーがエディンに聞いた質問の答えが哀愁漂ってて思わず押し黙ってしまった。

目が……目が遠い……!

あれ、俺が把握してる数より贈られていた着数多かったんだろうか……?

あとで確認しておこう……。


「……まあ、夜会に巫女殿が来られるのは俺も賛成です。ただ、良からぬ事を思う輩も多いはず。ヴィニー1人で大丈夫でしょうか……?」

「どういう意味ですか、ケリー様?」

「そういう意味だ鈍器」

「ぐ、ぐううぅ」

「うーん。クレイも来る?」

「断る」


即答!

清々しいクレイ!

でもレオ、クレイが来ると多分逆効果!


「それと、巫女殿が今後生活される場所ですね。巫女殿、城とアミューリア学園にそれぞれお部屋を用意しているのですがどちらになさいますか? 今のところ巫女殿が帰る術は見つかっていない。我々に協力頂けずとも生活は保証させて頂く所存ですが、せっかくなのでアミューリア学園で色々学ばれてはいかがです? 学園には寮があります。我々も今は学園で寮生活なので、その方が巫女殿も安心ではないでしょうか?」

「が、学校……ですか?」

「はい。本日の夜会は学園のダンスホールで行われるんです。夜会に来る来ない関係なく、今後何もせずぼんやり過ごされるよりは学園で色々、この世界について学ばれるのもよろしいかと。いかがでしょう?」

「……………………」


意外とケリーがグイグイ押すなぁ?

ゲーム補正?

マリアンヌ姫が居ないから?

……でも、確かに学園に通う方が巫女殿にとっては良いはずだ。

城に居てもあの陛下とあの宰相とおっかないルティナ王妃、唯一の良心はディリエアス公爵くらい……。

それなら歳の近い子供が集まる学園の方が過ごし易いのではないだろうか?

巫女殿に使用人の真似事をさせるわけにもいかないし、平民のように職について働きたいと言い出す歳にも見えない。


「わ、わたしが通っても大丈夫なんでしょうか……?」

「問題はないですよ。巫女殿は……、失礼ですがお歳はお幾つなのですか? 見たところ私とあまり変わらなさそうですが」

「あ、えーと、今年で15になりました!」

「では私と同い歳ですね」

「では2年生に編入かな? ケリー、君のクラスで構わない?」

「…………。若干一名ほど不安要素はありますが、さすがに女性に無体は働かないと思いますので大丈夫ではないでしょうか。……私とルークでお守りしますよ」

「あ、うん……」


話がどんどんまとまる中、若干の不安要素。

ハミュエラな……。

この場の全員の目が遠くなる。

ミケーレもなにやら思うところがあるのか、あいつまで目が遠い。

ハ、ハミュエラ……ミケーレにまでなにかしたのだろうか?

こいつ一応教師だしな……ハミュエラになんかされた可能性もゼロではないよなぁ。


「…………。あ、あの……でも、わたし……」

「はい?」

「……戦争に、その協力なんて出来ないのに……そこまでしてもらうわけには……い、いかないので……」

「答えは今すぐでなくともいいよ。……うん、まずはこの国や我々の事を知って欲しい。強制しても、きっと魔宝石の力は引き出す事が出来ないだろう。…………。でも、もし、協力してもいいと、少しでも感じたら……従者を選んで欲しい」

「……じゅう、者?」

「『魔宝石』には『従者石』というものが付属するんだ。魔宝石から魔力を供給され、従者石を持つ者は魔法を使えるようになるそうだよ。戦争に勝つためには魔法が必要になる。……人間族は……脆いからね……」

「っ……」

「従者石は魔宝石から取り出せるようになっている。……詳しくはエメリエラに聞いて。……えーと、では……パーティーはどうする? 出席してみるかい?」

「…………」


俯いてしまう巫女殿。

こっちの切羽詰まった状況を、少しでも理解してくれたならいいんだが……。

まあ、無理強いは出来ないんだよな。

戦争に行く……戦うのは怖い……。

これは、理屈じゃない。

無意識に支配してくる。

自分では平静を保っているつもりでも、意外と周りにはバレてしまう。


「い、いえ……こ、混乱していて……少し、落ち着いて考えたいので……」

「そう……」

「ま、パーティーは夜だ。行くか行かないかは夕方までに決めたらいいんじゃないか? それで? 今日はこの後どうする?」

「え? …………あ、あの、今、夕方じゃないんですか?」


ん?

彼女の言葉に全員「は?」となる。

そしてつい、全員で窓の外を見た。

朝陽がだいぶ登ってきたなー?

思わず懐中時計を取り出して時間見る。


「…………。現在朝の6時57分ですね」

「え……⁉︎ わ、わたし、家に帰ろうと思っていたところで……」

「時差的なものかもしれませんね。ええと、それではもしかして本来ならば夕飯を食べて寝るところ、だったのでしょうか?」

「ね、寝るにはさすがに早いですけど……」


時差!

思いもよらなかった!

15歳という事は学生さんだろう。

受験生、かな?

でもどちらにしても俺たちの朝食は彼女にとって夕食……みたいなもの?

体内時計が真逆となると、仮眠でもとってゆっくり体をこちらの時間に合わせてもらう方がいいな……。


「成る程、しばらくの間は時差でお辛いかもしれませんね……」

「じさってなに? ヴィニー?」

「えっと……そうですね、例えば……我々の国が昼間の時に巫女様の世界は夜なのでしょう。この時間の差を略して時差と呼びます」


もうざっくりこんな説明でいいや。

これで通じるだろう。

そんな太陽の当たる時間帯と惑星の回転がどーのと説明しても『ウェンディール』以外の国がどの辺にあるのか、正確に誰も知らないから説明が難しい!


「そうなのか。じゃあ巫女はこれから寝る時間だったんだね」

「……そ、そうですね……お風呂に入って……勉強して…。………………」

「巫女殿?」


さすがタラシ男、巫女殿の方に顔を近づける。

巫女殿はエディンが近付いてきても気付かず俯いていた。

……帰れないことを、思い出させたのだろうか……。


「………………」


帰れないか。

……俺は……俺もあの世界に、前の世界に……未練がないというわけじゃない。

残した家族の事もちゃんと覚えている。

行方不明になった妹がどうなったのか。

俺が帰る便を早めたせいで、死んだ事……親父はともかく母さんは自分を責めたりしていないといい。

彼女もまだ若いしやりたい事や行きたい学校、なりたい夢もあっただろう。

この国では限定される。

親にも、まだ甘えたい年頃だろうし……。

いや、彼女のご両親の事を思えばさぞや心配しているだろうな。

…………娘が急にいなくなる。

ああ、心配するに決まっている!


「勉強ならこの国でもできるぞ?」

「お風呂か……。レオハール殿下、そういえば巫女殿にメイドはお付けしないのですか?」

「メ、メイド⁉︎」


落ち込んでいた表情から一変。

ケリーが口にした「メイド」に肩を跳ねる。

あー、現代日本で「メイドをつける」なーんて日常会話で出てこないもんなぁ。


「あ、一応アンジュに頼んで1人見つけてもらったよ」

「何故アンジュ……」

「知り合いのメイドで人脈があるの彼女だったから。あと、偶然にも彼女って僕の愛馬と名前が同じで覚えやすくて!」

「……………レオハール様、それ、アンジュに直接言ってませんよね?」

「え?」


あ、これは言ったな。

……アンジュ、馬と同じ名前とか言われたらさすがの彼女もイラッとしただろうなぁ!

うちの異母弟がすみません……!


「分からない事も多いだろうし、彼女に色々聞くといいよ」

「あ、あの、でも……」

「学園で生活するならメイドはいた方がいいぞ。それに、巫女殿とこの国は文化も違うのだろう? 着ているものを見てもその違いが分かる」

「あ、ああ〜……」


と、レオが思い切り窓の方へ目線を泳がせる。

ケリーとエディンは気にしていなさそうだが……そ、そうだな〜、確かに〜……ニーハイから覗く絶対領域は……この国では淑女が足を出すなんてはしたない……。

メイドもロングスカート、マーシャのようにコケるので膝下丈であってもソックスはしっかり履く。

まして腿など出すはずもない!

膝上スカートなんてもんは平民でも着ないだろう。

というか、こんなスカート丈は存在しない。


「確かに少々過激というか……破廉恥ですね」

「ハレンチ⁉︎」


お、俺も目を逸らしてしまった。

む、昔ならいざ知らず……ニーハイの絶対領域……しかも女子中学生だろう、年齢的に……。

なんという破廉恥感!

いかん、これはいかんぞ!


「巫女殿、この国は少々お寒いかもしれません。私のもので申し訳ないですが、今はこちらをお使いください」

「え、あ、あの……あ、ありがとうございます……?」


ケリーのなんという紳士的な事か!

巫女に自分の上着を脱いで、足を覆うようにかけてやる。

レオも顔を赤くしつつわざとらしく咳払いし「ふ、服は着替える?」と巫女に問う。

文化の違いに巫女殿も困惑気味。


「上着のコートは暖かそうですが、雪が積もっておりますので確かに着替えられた方がいいかもしれませんね。学園に行くのであれば、馬車の中も少々冷えますし……」


そんな絶対領域晒してたら寒イボたちまくりだぜ巫女殿!

うちのお嬢様やマーシャですらこの時期は毛糸のパンツ着用だ。

…………。

メ、メイドさーーん!

俺にはその辺色々限界があるので今すぐ! 今すぐそのお力をお貸しくださぁぁぁい!


「そ、そうですね、メイド……巫女様の世界とは文化が大分違うようですし……、……巫女様も同性の女性が近くにいた方がきっと安心されると思いますし!」

「……そ、そう、ですね!」


スカート丈が破廉恥と……俺に言われたのが効いてくれたのかな。

彼女も少しだけ困った笑顔で頷いてくれた。

とりあえずゲームの中で巫女にメイドなんて付いてなかった気もするけど……差違は多いに越した事はない! 多分!

それに、ゲーム通りなんて不憫すぎる!

彼女には少しでも快適に過ごして欲しいもんな!




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