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ハズレ聖女してたけど、そんなに言うなら魔王になってやるよ  作者: ちゃっぷ
第3章 はじめてのグラーバ観光

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第16話 初めて感謝された回復魔法

 グラーバ内を大体見て回り、そろそろ帰るのかと思ったけれど、アランさんに待ったをかけられる。


「……ぜひともリサ様にはこの国の防衛ラインを御覧いただきたいのです」

「この国の防衛ライン?」

「人間からの侵攻を防いでいる……アナニアとグラーバの国境です。そこでは先代魔王様のつくられたゴーレムが戦っております」

「あぁ、そうでしたね。人間たちはそのゴーレムのことと亜人さんたちのことを、主に魔物と呼んでいるんでしたっけ」

「覚えていてくださったのですね。そのゴーレムたちの頑張りを、ぜひとも見てやっていただきたいのです」

「? 分かりました」


 アランさんの真剣な様子に、真意は分からないけれど何か裏があるように感じながらも、わたしはゴーレムたちのいる国境まで行くことにした。


 またしてもアランさんのワープで国境までやってくると、念の為、人間たちがいないか周囲をキョロキョロと見回してしまう。


 もし見つかって、戻ってこいだの処刑だの言われたら面倒だからね。


 まぁ、アランさんとハーリヤさんがいる限り、そんなことは絶対に許さないだろうけど。


「わんっ」

「ぴよ」

「ヒヒン」


 まるでわたしの心の中を読んだかのように、『自分たちもいるよ!』ともふもふたちが鳴き声をあげる。


 ふふ……これだけナイトがいれば、安心してどこでもいけるね。


「ありがとう、みんな」


 そんなことを思いながらみんなをなでなでしていると、茂みからガサガサという物音と、重さのある何かが近づいてくる足音がして、思わず身構えてしまう。


「大丈夫ですよ。リサ様」


 けれど、アランさんにそう言われた。なので警戒を解いて、音の主が現れるのを待つ。


 すると、先代魔王がつくったというゴーレムが姿を現した。


 山の麓にいたゴーレムは黄色っぽい色をしていたけれど、ここにいるゴーレムは黒っぽい色をしている。


 そんなことよりも気になるのは……。


「……傷だらけじゃないですか……」


 傷だらけのゴーレムはわたしたちの存在を認めると、敵ではないと認識したのか、アナニアの方を向いて停止した。


 常に戦いの場に身を置いている代償なのだろうか。切り傷に……身体の欠けが目立つ。


 あんなに役立たずな騎士団が、こんなにゴーレムに傷を与えることができるのだろうかという疑問があるけれど、騎士団だって昔は強かったのかも知れないし、長い年月をかけてボロボロになっていったのかもしれない。


 わたしには……ゴーレムがどうしてこんなにボロボロなのか分からない。それでもなお、アナニアを見据えて戦いの準備に備えるゴーレムの辛さを、すべて理解してあげることができない。


 そんな自分が情けなくてしょうがない。


「……ご覧の通り、先代様のつくられたゴーレムは傷だらけでして、その……リサ様のお力で治してくださらないかと……」


 アランさんが言いにくそうにそう告白する。


 魔王としてグラーバに来てから、回復魔法を求められたのは初めてのことだ。


 まず怪我をしている人や魔物がいなかったからというのもあるけれど、もしかしたらアランさんやハーリヤさんは、聖女時代のことを思い出さないように気を使ってくれていたのかも知れない。


 そんな優しさも、わたしは知らなかった。


 情けない……情けない……!


 手を力強く握りしめて、自分の不甲斐なさを殴ってやりたい気分になる。


「……リサ様?」

「……リサちゃん、俺からもお願いできないかにゃ?」


 アランさんとハーリヤさんにそう言われて、傷ついているゴーレムを目の前にして、断る理由なんてあるわけがない。


「……もちろんです。任せてください!」


 わたしはゴーレムのそばへと歩いていき、断りを入れてからゴーレムの身体に触れる。そして手のひらに力を集め、傷を治すイメージを思い浮かべる。


 すると手のひらに温かな光が現れ、わたしの手からゴーレムの全身へと光が広がっていく。


 治れ、治れ。傷なんて、一つも残すな。


 そう願いながら、ひたすらに集中する。


 しばらくして、ゴーレムから光と共に、身体にあった傷や欠けが跡形もなくなっていた。


 成功だ……。ふぅ……久しぶりだから緊張したぁ……。


 ゴーレムは自身の身体を見て、傷がなくなったことに少し戸惑っている様子だった。けれど、すぐに胸に手を当てて、腰を折って感謝の意思を伝えてくれた。


「ふふ……回復魔法をして感謝されたのは初めてです。こちらこそ、いつもグラーバを守ってくれてありがとうございます、ゴーレムさん」


 ふっとアランさんの方に視線を向けると、感激したような申し訳なさそうな表情をしながら、バッと頭を下げて「ありがとうございます、リサ様」と、こちらもまた感謝を伝えてくれる。


「そんなに気にしないでください。それよりも、まだわたしの仕事は残っていますから」

「え?」


 だってゴーレムはこの子だけじゃない。


 国境沿いに何人もいるんだ。


 きっとみんな、似たような状態なんだろうと思うと、耐えられない。


 今すぐに治してあげたい。


「ゴーレムたちの正確な位置は分かりますか?」

「は、はい。魔力探知を使えば……」

「ではそれでわたしの回復魔法を補佐してください。わたしが回復魔法をフルパワーで流すので、魔法の行先を指定するイメージで」

「……! かしこまりました!」


 アランさんとそんなやり取りをして、わたしは意識を集中させる。


 この感覚、ジェイド様を蘇生させた時に似ているな……なんてことを思ったけれど、雑念はすぐに捨て去る。


 アランさんが「失礼します」と断りを入れてから、わたしの背中に手を置く。


 こんな場面でも断りを入れるなんて紳士だな、なんて雑念もすぐに捨て去る。


 とにかく力を溜めて、溜めて……これから放つ回復魔法に集中した。


「準備できました。いつでもいけます」


 アランさんにそう言われて、わたしは閉じていた目をゆっくり開く。


「では、行きます。……遠隔回復魔法ディスタントヒール自動回復魔法オートヒール


 そしてわたしの身体からぶわっと強い光が放たれる。


「くっ……」


 アランさんが苦しそうな声を上げているけれど、ここは踏ん張ってくださいと心の中で声をかける。


 そしてアランさんの補助のおかげで、わたしの身体を包んでいた光は上空へと伸びていき、アナニアとグラーバの国境沿いにいるであろうゴーレムたちの元へと無事飛んでいった。


 目の前にいたゴーレムにも光が降り注ぎ、ヒールだけではなくオートヒールの魔法もかかる。


 う、うまくいったかな……?


「……はぁ……」


 さすがにフルパワーでの回復魔法に、疲労が隠しきれない。ジェイド様を蘇生させた時よりも魔力を使ったかも知れない。


 アランさんも、同じように疲れ切っている様子。


 大丈夫か声をかけたいけれど、自力で立っていることも困難で……ふらついた時、ハーリヤさんが咄嗟に支えてくれた。


「お疲れ様。リサちゃん」


 そう言われて、一気に気が抜けて……にへらっと笑みだけを残して、意識を手放した。

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