海底パイプライン(四百三十六)
風邪を引いている間、カオスになっていた。どうにもならん。
読み返して『マジか』と思うが、続きを書かねばならぬだろう。黒沢の目が『いつまで寝てる。死んだのか?』だし、さっさと続きを書かないと『本当に殺してやろうか』と言いかねない。さてさて。
「オメェら女が見たけりゃ、ココに居んだろうがっ! とびっきりのがよぉ!」(あっはーん)敢えて棒。髪をパサッとやった所で、キューティクルとは無縁なボサノバスタイルであるからにして。
「そうでしたね」「俺達にはママ、いや姉さんが居ました」「エレベーターん中、男ばっかりで早く会いたかったですぅ」「そうだろ」
フンッと話をぶった切って、黒沢は辺りを見回す。誰も反論する輩はいないようだ。最後に出て来た四平が、サッとゲームをしまう。
しらばっくれてロープの端を引っ張り誤魔化そうとするも、手は空中で『謎の動き』をしただけに終わった。慌ててロープを探す。
仕方なさそうに渡されたロープを見てペコリ。そして指導されるまま『こう?』『違う違う』と両手をロープで巻き付けた。
安心した顔で黒沢の方を見る。が、何故か『あぁあぁ?』の顔をされて驚くと、男の後ろに割り込んで列に馴染んだ。
さて、ゲームでもやるか。と、そこへ虎雄がテクテクと。
「馬鹿っ! お前は『先頭』だろうがっ!」「あぁあぁ!」
言われて思い出し、急ぎロープから逃れようとするも外れない。
結び方を教えてくれた男の背中を小突き、『外してくれ』と合図するも外せない。いや首を傾げてないで早く。『ちょっと待ってろ』と腕を捲るが、その瞬間に男からはロープが外れているではないか。
「オメェ運転手なんだろっ! 早く来いよっ!」「イデデデデッ!」
黒沢に髪の毛を掴まれて引っ張られると、ロープもスルスルッと取れる。髪の毛の方は、スルスルッと行くものか。逝ってもおかしくはないが、本人がそれを望んではいない。
そのまま一番前まで連れて来られて、気の毒そうにロープの端を渡される。会釈して片手に巻き付け『逃げるなよ』と一瞥。
本人は『威圧的に見た』つもりなのだろうが、傍からは『お揃いですね』にしか見えぬのが四平の四平たる由縁だろう。
ゲームは黒沢と目が合ったので開始せず、やっと歩き始めた。
「罪人らしく、下向いてて下さいね」「だとさ」「ヘイ」「姉御ぉ」
虎雄のお願いを伝達した黒沢だが、本人に罪人の認識は無いようだ。例え陸軍から追い掛けられていたとしても。まるで罪人の中の罪人で、寧ろ周りを威圧するかのように辺りを見回して。
早速現れた『年増好き』が黒沢を見つけて前へ回り込む。しかし目が合った途端首を引っ込ませると、早々に走り去った。
それ、もしかしなくても『悪寒』って奴だね。うん。お大事に。
「おぉおぉ、可愛いネーちゃんが居るじゃねぇかよぉ。これから御出勤? 何処行くのぉ? もしかして今北産業? 初出勤?」
酔っ払いである。しかも金髪の。いや別にココで『金髪がダメ』ってな訳ではないが、珍しいと言えば珍しい。しかもハーフだ。
オカマとか男の娘とか、そういう洒落たのじゃなくて、外人っぽいという意味のハーフ。又はクオーター。又は何だ? ウオーター。
「おい兄ちゃん、このお姉ちゃんと遊ばせてくれよぉ。イイだろぉ」「良いぞ兄ちゃん。一緒に遊ぼうぜ」(ムギュッ)「ムゴホゴッ!」
虎雄の許可より前に黒沢の腕が男の首根っこに。そのまま胸にまで押し付けられて鼻血が出そう。いやぁ、人の好みは判らんものだ。




