陸軍東部第三十三部隊(二十八)
「死んでる人は、手、挙げないですよね!」
何、この雰囲気。え? 何か変なこと言った?
ちょっと待って、ちょっと待って!
技術最高顧問は、真顔で右目だけ大きくしちゃって。
『え? 死んでたって、手ぐらい挙げるだろ?』
な、お顔で、ハングアップ!
突っ込むの? 突っ込みなの? 怖い怖い怖い!
隣の高田部長も、口をパカーンと開けちゃって!
『お前、いっぺん死んでからの、手を挙げるトコロが、本当の、見せ場! だろうがっ』
みたいな顔。いつもと違うじゃん。ボケなの? 突っ込みなの?
何コレ、何コレ、ナニコレー?
えーっと、どっちか説明して下さい。誰か、誰か! 誰かぁ!
どういうことですか? これ、どういうことですかぁぁっ!
もしもーし!
「どういうこと?」
すいません。それ、琴坂課長のセリフ。
「さあ、やっぱり、日本語も通じない? 的な?」
ワターシ・ニホンウマレーノ・ニホンソダーチ。アナタノ・ニホーンゴ・ムズカシイネェ!
琴坂課長は自棄になって、両手で拳銃の形を作り、それを自分の前で振ってみせたのだが、何の進展もない。
「今の仕様は、実装されたの?」
技術最高顧問の鋭い目。
その目を逸らして高田部長を見ても、『お前、ちゃんと飯食ってるか?』の目。
その目を見て、琴坂課長は冷静になった。
「まだ、プロトコルを決めている段階です」
そう答えると、技術最高顧問は頷いた。
どうやら、『正解』だったようだ。
琴坂課長が補足説明をしようと息を吸った所で、高田部長が先に、補足説明を始めた。
「疑似ACKと疑似NAKだけ、決めたんですけど、疑似ENQで揉めてまして」
「あぁ。そこはいつも揉めるよね」
そう言って技術最高顧問は、眉をひそめて両手を前に出し、エッロイ動きをする。
すると高田部長も、頷きながら両手を前にだし、エッロイ動きを始めたではないか。
琴坂課長は、頭が痛くなった。
「最近、ご無沙汰でして」
寂しそうに呟くのが、やっとであった。これで良いのか?
疑問に思っていたのだが、しかし、技術最高顧問と高田部長には『意味』が判ったらしい。
両方から優しく肩を『トントン』と叩かれながら、「そうか。そうか」と慰められた。
「実装、次のバージョンになっても良いからな」
「その方が、売り上げアップになりますからね!」
「おう! そうだなっ。あぁ、そうだ。アップグレードの方法、組み込んであるよね?」
「勿論です。お任せ下さい! 自動警備一五型で実績、ありますからぁ」
「OKOK!」
何か、判ったのか? どうか? 凄く、怪しいのだが。
それでも、何か乗り切った気がする? 琴坂課長なのであった。




