表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
156/1470

陸軍東部第三十三部隊(二十四)

 作戦は三時間余りで、ミント師団の圧勝で終わった。

 南北に走る清州通りと、大横川に挟まれた長方形の区域を、北は本所吾妻橋、南は小名木川までを完全に掌握。


 大堀川、小名木川に架かる橋を全部制圧した所までが、今回の作成だ。

 次の作戦に向けて、現在は第三戦闘配備となっている。


 画面上は、警戒担当のチョコミント部隊が、偵察用にカスタマイズされた『ミントちゃん』を飛ばしている光景が、映し出されていて、あまり動きがない。


 その間、各種戦闘用として、ゴリゴリにカスタマイズされた『ミントちゃん』は、自動警備一五型イチゴちゃんの背中で、一旦充電中である。


「じゃぁ、今日は、ここまでにしようかぁ」

 そう言ったのは、今日も本部本部長エンペラーペンギンに勝てなかった、高田部長イーグルである。


「撤収を、シミュレート、しますか?」

 確認したのは、琴坂課長カイトだ。

 すると、高田部長イーグルは「うーん」と、何だかめんどくさそうな顔をして、首を傾げる。


 琴坂課長カイトから見えていない、他のメンバーも、残業になるのが判っているのか、渋い顔である。


「何回もやってるから、良いんじゃない?」

 高田部長イーグルが両手の平を上にして、終了宣言と同義の言葉を吐き出すと、「後は任せた」の感じで、琴坂課長カイトに敬礼すると、本部本部長エンペラーペンギンの方へ歩き出す。


「じゃぁ、片づけましょうか」

 と、言いながら琴坂課長カイトが振り返ると、他のメンバーの笑顔が見えた。

 今日で、三十回目のテスト。もう飽きたのだろう。


 宮園課長アルバトロスの手が動き出す。そして、琴坂課長カイトの方を見ると、満面の笑みで聞いてきた。


「じゃぁ、やっちゃって良いすか?」

「あぁ、良いよ。まったく、お前も好きだなぁ」

 そう言って右手を縦に振ると、琴坂課長カイトは自席の端末を操作し、フランス基地を呼び出す。


「ヘイ! 神崎朱美シーガァル! そっちはどう?」

 何で、こんな呼出なのか。本人希望とは言え、恥ずかしい。

「ハーイ。フランスは、今日も曇りデェース!」

 そう言う画面の背景には、雨が映っているのだが? まぁ、それは良しとしよう。


「突っついてみて、何かありましたぁ?」

「特にナッシング、デェース! オヤスミナサーイ!」「あ、どもー」

 呼び出したのが琴坂課長カイトだったから、という訳では決してないことを祈りたいが、報告は三秒で終わった。

 琴坂課長カイトは溜息をつく。


「では、作戦名『春巻丼ハルマゲドン』開始!」


 宮園課長アルバトロスが作戦名を指令して、画面が動き出したのだが、隣の山崎ミケは復唱を拒否し、渋い顔である。

 それでも、画面上には『◇』が一斉に動き出し、地図がどんどん真っ赤に染まってゆく。


 一番右の部隊一覧は、モードが全て赤色の『自爆攻撃』に変わっていて、実施済のものから黒色に変わって行っている。

 地図とは対照的だ。


「もしもし『ミントちゃん』、消火してー」

 あざ笑うかのように指示をしたのは、富沢部長ブラックスワンである。横目に琴坂課長カイトも、同調して頷く。

 シミュレートでも、東京で自爆攻撃をするなんて、趣味が悪い。


『消火弾を、使用しますか?』

 ミントちゃんからの提案が、薄荷乃部屋オペレーションルームに響く。

「それは古い!」「前世紀の遺物か!」

 思わず叫んだのは、意外にも富沢部長ブラックスワン山崎ミケであった。またレアな物を、よくご存じで。

 琴坂課長カイトは『消火弾?』で、固まっている。


「人間、古いんですかぁ?」


 うっかり漏らした宮園課長アルバトロスの一言で、彼が指揮したこの作戦は、僅か十三秒で終結となった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ