陸軍東部第三十三部隊(七)
「野郎共! 準備は良いかぁっ!」
「おう!」
「OKでさぁ!」
「いつでも行けるぜ!」
ノリの良い戦団だ。モヒカンが似合うスタイルで、意気揚々と拳を挙げて、鼓舞している。
「俺に付いてこい!」
「ヒャッハー」
「行くぜー」
「祭りだ! 祭りだぁぁっ!」
先頭を走るのは、部隊を鼓舞した山岸少尉だ。バギーの助手席に乗っている。
大佐の部屋で十分な睡眠を採ったので、調子が良い。
その後ろから、一編成七機の自動警備一五型と、サポート部隊A、B、Cのバギーが付いて来る。
「よし、ここで散開!」
山岸少尉が振り返り、左手を振って指示を出した。
「三回?」
「何を三回ですか? ボスゥ?」
「馬鹿。そりゃぁ、決まってますよ。ねぇ」
にやけながら、たなっち、きよピコ、山ピーが、山岸少尉に言っている。
四台のバギーは散開せず、止まったままだ。
「散開と言ったら、散開だ!」
「あ、判った。元気だって、言いたいんですね?」
「俺達は、二回が限界っすぅ。流石っすぅ」
「あぁ、俺は一回でも良いから、拝みたいっすぅ」
相変わらず、たなっち、きよピコ、山ピーが、山岸少尉に向かって、親し気に言う。
どうやら山岸少尉は、部下に慕われているようだ。
「お前ら遊郭が近くにあるからって、ココからは入れないからな?」
「そうなんですか?」
「ちらっと拝むだけでも、良いっすぅ」
「そうですよ。少尉ばっかり、三回もずるいっすぅ」
流石に山岸少尉も呆れて、うな垂れる。
俺の部下は、こんな奴ばっかりだ。と、後悔しても、もう遅い。
「良いか、今日の作戦は、貨物列車の警護だ。広小路から地上に出るから、そこから秋葉原駅までを、重点的に警備だ」
やっと任務を説明したのであるが、部下は判っていないようだ。
「えー、どうせだったら、何とか寺の世界遺産に行きたいっすぅ」
「そうそう。金髪が歩いているって、噂っすぅ」
「いいすね! 俺も金髪拝みたいっす」
山岸少尉は渋い顔で、両手を上下に振り、『落ち着け落ち着け』を繰り返す。
「良いか? そういう所には、フェンスがあってな? 向うから見えないように、なっているんだよ」
そう説明すると、部下三人は大人しくなった。山岸少尉はホッとする。頷いて、続きを話す。
「と、言うことは、こちらからもぉ?」
笑顔で右手をヒュッと出し、部下三人に、結論を考えさせる。
「見放題! って訳ですね!」
「覗き見っすか! ボインすか?」
「流石少尉殿! 良いとこ知ってるんですね!」
グッと寄って来るではないか。山岸少尉は呆れて溜息だ。
「馬鹿。今日は、双眼鏡がないから、無理だ!」
そう言うと、部下三人は渋い顔で、バギーに崩れ落ちた。