表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
138/1471

陸軍東部第三十三部隊(六)

「何? 靖国に逝っちゃってるの?」

 大佐が聞き直すまでに、三秒掛った。真間少尉は頷く。

「はい。一カ月程前に」

「じゃぁ、この人、誰?」

 スクリーンに映る『黒井大佐』を指さす。真間少尉は額の汗を拭いてから、答えにくそうに答えた。


「同姓同名、姿形がそっくりな『別人』と思われます」

「同じ『空さん』という経歴を持つ?」

「おっしゃる通りです」

 そこで再び沈黙が訪れる。


「是非、会ってみたいものですな」


 口数の少ない右井少尉が、沈黙を破った。

 大佐は眉をしかめる。

 最近加わった右井少尉は、口数も少ない陰険な奴だが、それ以上に気味が悪い。


防疫給水部きみのところで、彼が、何の役に立つんだい?」


 その問いに、右井少尉は何も答えず、ただ微笑みを返しただけだった。大佐は、その微笑みが苦手だ。

 やはり右井少尉は、頭が切れる。


 しかし、真間少尉と違い、傍には置きたくないタイプだ。まぁ、それは向こうも同じだろう。


 中央からの指示で加わった『防疫給水部』が、何をしている部署なのか、良く判らない。

 それに、『あまり詮索するな』とも念押しされた。


 言い方からして、『あまり』と接頭語が付いていたが、それは『絶対に』と言っているに等しかった。


 陸軍東部第三十三部隊ここだって、架空の部隊。

 かなりやヴぁい所なのに、そこへ『絶対に詮索してはいけない』部隊が、追加されたのだ。おいおいだ。


 どうせ、碌でもないことでも、しているんだろう。


 一応、表向きは、『美味しいお水』を作っている、ということであるが、集めている薬品が『塩素』だけでなく、『おいおい?』『え? なにこれ』みたいな薬品まで、決済した記憶がある。


 それに、淀橋浄水場を接収して、広大な研究所にしちゃって。本当に、『美味しいお水』を作っているのか、怪しいものだ。

 正直、あんまり変な『片棒』を担がされても困る。


「とりあえず『地上に舞い降りた鷹』ということに、しておこうか」


 大佐がそう言って、緊急会議はお開きになった。


 最後に、真間少尉が心配そうに、二人の向かった先が、山岸少尉の管轄内であることを付け加えた。

 そこで全員の目が、再び山岸少尉の方に向く。

 山岸少尉の方を見ると、今度はちゃんと目を開けてる。全員が安心して席を立つ。


 山岸少尉は、うつむいたままだ。何か作戦を考えているのだろう。


 しかし、大佐には判る。

 あの首の角度を見るからに、夢の中なのは間違いないと。


 部屋が明るくなり、大佐も「二次会には間に合うかな」と、急いで部屋を後にする。


 山岸少尉は、やはり椅子に腰かけたままだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ