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アンダーグラウンド(四十四)

 ブラック・ゼロの新拠点で、エビチリをがっついている。

 もう、忘れられているかもしれないが、言問橋警備の黒山と黒川も合流し、ブラックタイガーで作ったエビチリを、取り合う。


 その他の警備所からも退避した、黒根、黒岩、黒猫、黒永、黒戸。皆『黒』が付く名前ばかりだ。


 そんな大勢さんが、黒松がナビ、黒井が運転するバギーを先頭に、自動警備一五型イチゴちゃん六機を従え、まるでパレードのような『大移動』をしてきたのだ。


 警備の面々は、M16を手に、自動警備一五型イチゴちゃんの両サイドに掴まって来た。

 黒沢と黒田は、もちろんAKー47を、今度は両手に一丁づつ持って、バギーに『箱乗り』である。


 黒沢が装備していた調理器具は、黒松が鍋を被って引き取り、ナビをするのにお玉を使った。

 残った中華鍋は黒井が引き取り、器用な片手運転をして、無事辿り着いた。


 時々、中華鍋に空薬莢が当たって、カンカン鳴っていたので、ヘルメットの役割も、果たしていたのは間違いない。


 そんなんだから、途中、鼻に白い絆創膏を貼り、右手を三角巾で肩から吊った、ちょっと痛々しい姿の『山岸少尉』と、思わるる人物が現れても、何も起きなかった。


 むしろ、厄介な連中がいなくなって、ホッとしていることだろう。


 拠点で、空になった皿を前に、自己紹介が始まった。

 黒井は一人づつ頭を下げて、名前を必死に覚えようとしたのだが、全員『黒』ばかりで、見分けが付かない。

 しかし、きっと『濃い連中』であることには違いない。


「ブラック・ゼロって、全員『黒』が付くんですか?」

 黒井が、笑いながら質問した。相棒として紹介された黒田が、それについて説明する。


「あぁ。偽名だけどな。『実は一人も黒はいないんだぜっ』という意味で、『ゼロ』が付くんだよ」

 そういうことですか。黒井は納得して頷いた。

 これだけ『黒』が集まるのなんて、珍しいにも程がある。それに、運送屋さんみたいな名前の人が本名なんて、絶対嘘だと思っていた。


「あのー、私は、本名なんですけど?」

 黒井は、右手を小さく挙げて苦言を呈する。すると黒田が、目を見張った。

「うっそ! 本名だったの? じゃぁ、改名しないとな!」

 そう言って笑った。今更何を言う。それにもう、すっかり『黒井』で、定着してしまったではないか!


「じゃぁ、『ブラック・ワン』にするかっ!」

「え? そっち?」

 黒田の改名案に、黒井はずっこけた。それを見て一同は笑った。

 どうやら、黒井は黒井のままのようである。


「ブラック・ゼロはな、諜報活動をしているんだよ」

 やっぱり『ゼロ』のままらしい。黒田が黒井に、説明を始めた。

「アンダーグラウンドの、ですか?」


「そうだ。戦闘集団の『レッド・ゼロ』、電脳集団の『ブルー・ゼロ』、医療集団の『ホワイト・ゼロ』があってな」

 広げた手の指を折りながら、そう説明した。

「へー」

 黒井が頷いたのを見て、続きを話す。


「そこに、情報、武器、弾薬、医療物資、水、食料等、何でも調達して、流すのが『ブラック・ゼロ』の役割だ」

「なるほど。そうだったんですねぇ」

 黒井は、最初にその説明を聞きたかった。それを聞いても、怖い思いをしたことには、変わりないのだが。

 黒田が黒井を見た。手を広げ、笑いながら言う。


「だから、比較的安全な場所で、俺達は活動しているんだけどなっ」

「あははっ」「そうだねぇ」「だなっ」「ちげーねぇ」


 ブラック・ゼロの一同が笑い始める。隣にいた笑顔の黒松から、黒井は肩を叩かれ、そしてそのまま肩も揺すられた。


 しかし、黒井は、仲間と一緒に笑えない。

 それでも、何とか苦笑いをして、雰囲気は壊さないようにした。

 歓迎されているのは、間違いないのだから。

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