アンダーグラウンド(四十一)
「ミントちゃんの情報は? 何かなかった?」
黒田が黒松に聞く。それを聞いた黒松は、パッと笑顔になった。
「それそれ。なんとねぇ、あったんですよぉ」
嬉しそうに答える。再びキーボードに向かい、今開いている画面を全部閉じ、また別の黒い画面を呼び出した。
「本当に動いちゃうと不味いから、表示だけね」
そう言って、三人の顔を順に見る。全員が頷いたのを確認して、もう一度画面に戻る。
カチャカチャとコマンドを入力すると、ボンと画面が表示された。
「おぉぉっ!」
「おぉぉっ!」
「おぉぉっ!」
黒沢、黒田、黒井が、揃って唸る。
黒松は「どうだ」と言わんばかりだ。
「ドローンだったのかぁ」
黒田が唸る。そして、渋い顔で覗き込む。黒沢も頷いて続く。
画面に映し出された『状態表示』は、明らかにドローンの形をしている。
六つのプロペラに囲まれた四角い箱。それが『ミントちゃん』の正体であった。
「大きさは?」
黒井の質問に、黒松は答えない。
ただ、色々な画面を表示させ、それに関する情報を探している。
「結構大きいと思うよ?」
そう言って、七十センチ位の幅で手を広げる。
「意外と、小さくない?」
「本体がね。プロペラは別よ」
「あぁ。なるへそ」
黒井の指摘に、黒松が即答し、黒井も直ぐに理解した。
「何で、みんな殺られちゃうん?」
黒沢の質問に、今度は苦笑いする黒松。一度黒沢の方を見た。
「オプションが、すんごいんですよぉ」
そう言って、また別の画面を出す。そこには、多種多様な『兵器』の一覧が表示されていた。
みんな『ミントちゃん』に装備できるものらしい。
「圧縮空気で飛ばす『吹き矢』がヤバそう」
そう言って、兵器一覧から『吹き矢』の詳細を表示させた。
「まるで、忍者だなぁ」
黒田が呆れて溢す。デジタルの世に、アナログ技術万歳だ。
「プロペラ、無音らしいっすよ」
また別の画面を表示して、黒松が両手の平を上にあげ、首を傾げる。黒松に言わせれば、こんな『殺人兵器』を作った奴の、気が知れない。
「最大二百キロメートル毎時か。こりゃぁ、逃げられんなぁ」
黒田が、画面の端にある数値を指さして言った。
黒田でも『逃げられない』という、最悪の事態が思い浮かんでしまったのだろうか。
「オプションによっては、もっと出るみたいですよ?」
黒松が涙目で言うと、黒田は目を剥いて驚いた。
そして、大きく息を吐く。
「はぁぁぁ。おい、どうするよ?」
「えぇぇ。俺なんですかぁ?」
黒田が真顔で聞いたのは、現役軍人だった黒井だ。
それにしても、急に聞かれたって、困る。
黒井だって、まだ死にたくはないのだから。