表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
125/1471

アンダーグラウンド(三十九)

 二人乗りのバギーに、四人で乗るのはお勧めできない。

 前二人は良い。イスがあるから。


 荷台の二人は、荷室に足を突っ込み、後ろのフレームにケツを乗せ、目の高さにあるロールバーを、両手でしっかりと持つ。そんな乗車姿勢を推奨する。

 黒松と黒井が、そうだったように。


 しかし帰りは、黒井がドライバーを任された。

 車の運転は、正直久し振りだ。嬉しいではないか。

 隣では、道案内の黒松が、口と腕で、ナビをしている。


「ここを、右かな?」

 一時停止して、左右を確認する黒井。法令順守だ。こんな所でも。


「はーい。右良し、左良し、右に曲がりまーす」

 ウインカーを出しているからか、黄色いライトが点滅している。

 運転席に『カッチンカッチン』という音がしているのだろうが、空しいかな。誰も聞いちゃいない。


「うおりゃぁー。おっせーぞ! 黒井のろま、もっと出せ!」

 後ろで、文句を言っている奴がいる。


「そうだ! そうだ! 全王付いてんだろっ! 根性見せろぉ!」

 おおよそ、女性が言う文句ではない。

 法令順守の安全運転に対し、投げかける言葉ではないだろう。


 後ろの二人は、さっきから喧しい。『ケツを乗せる所だ』と案内した場所に足を乗せ、『両腕で掴む所だ』と案内したロールバーに、反対の足を引っかけて膝を曲げ、体を固定している。


 そして二人は、背中を合わせて押し付け合い、体をしっかりと固定し、両手は自由ときたものだ。

 そんな姿勢で、黒沢と黒田は、騒いでいるのだ。


「ヒャッハァ! ブラック・ゼロのお通りだぁ! パパパンッ」


 ご機嫌だ。満面の笑み。何処から出したか、いつの間に頭に巻いた鉢巻が、たなびいている。


「フヒャヒャヒャァ! 肉を出せ! 肉だぁ! パパパンッ」


 肩からベルト状の銃弾をたすき掛けにして、肉を出せと、騒いでいる。もちろん、誰もいない。


 いや、いても、建物に引きこもって、出て来ないだろう。

 黒沢と黒田が手にしているのは、AKー47。

 鹵獲した自動警備一五型イチゴちゃんの武器庫から出てきた、アサルトライフルだ。


「飛ばせ! 飛ばせぇ! 弾持ってこーい! パパパンッ」

「お前ら、ノリが悪いぞ! 笑えぇ! ヒャッハー パパパンッ」


 空に向かってぶっ放す度に、戸板を叩くような乾いた音と、その後にチャリンチャリンと薬莢が落ちる音がする。


 その後ろからは、一列縦隊で、四機の自動警備一五型イチゴちゃんが、なんとか付いて来ている。

 ラリーカーのようにスピードを出すと、自動警備一五型イチゴちゃんが付いて来れない。だから、ゆっくりなのだが。


「そこ、Cー4、あるみたいだから、注意ね」

「了解です」


 黒松は思う。「うるせーなぁ。まったくぅ。子供かっ」である。口には、決して出さないけど。黒井に道案内をするので、やっとだ。

 二列縦隊にすると、Cー4に引っかかってしまう。だから、一列縦隊にしているのだ。

 離れないように、バギーはゆっくり走る。


「まだ着かないのかぁ! 弾、なくなっちまうぜっ! パパパンッ」

「弾隠してあっから、取りに行くか! ウヒヒッ! パパパンッ」


 黒井は思う。「後で薬莢拾いに行くの、めんどくせーなぁ」と。


 自衛隊では訓練でも、実弾の数を数えるのは当たり前。空の薬莢だって、全部拾うのは、当たり前だった。


 それでも黒井は、五百十二発までは数えていたのだが、苦笑いして、もう、数えるのをやめた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ