sideマリー「お姉ちゃんに任せなさいっ!」
見逃せない一瞬がある。
ある所にマリーとアリーと言う二人の仲良し姉妹がいました。
彼女たちはそれはもう仲良しで、寝食も一緒。お風呂に入る時も、街へお出かけする時もずっと一緒で、二人は片時も離れたことはありません。常に二人は寄り添いました。
そんなある日、村で原因不明の感染症が流行り、多くの村の人々が床に臥せました。村人総出で解決に当たりましたが一向に治る気配はありません。見たことない症状にお医者さんも悪戦苦闘しています。村の人々は苦しむ家族を見ても何も出来ませんでした。悔しい。ですが、残酷にも死へのタイムミリットは一刻一刻と過ぎていきます。こうしている間に大切な家族が死んでしまうかもしれないのにっ!
ある二人の姉妹がいました。そう、マリーとアリーです。
彼女たちの内、アリーもまた村で原因不明の感染症に感染してしまった者の一人です。
どんな時でもアリーと一緒にいたいマリーは、アリーの傍を四六時中ずっと看病し続けました。
「アリー大丈夫だよ!お姉ちゃんが付いてるからねっ!」
「ごほごほっ……お姉ちゃんに病気が伝染っちゃうよ」
ふっふっふっ、とマリーは心配そうな顔をするアリーに不敵な笑みを返しこう言う。
「バカは風邪引かないから大丈夫だよっ!」
「お姉ちゃん、それ意味違うよ……」
妹のアリーはお姉ちゃんの言動にちょっぴり頭が心配になった。もしかしてお姉ちゃんも感染症に……?しかし熱で寝込んで心細い自分を、四六時中看病して、時折こんな冗談まで言って辛い気持ちを紛らわしてくれる。そんなお姉ちゃんのことがアリーは大好きだった。
「ごほごほごほっ」
「熱が下がらないわねぇ……」
「ねぇお母さん、アリー治るよね?」
「そうねぇ、マリーが一生懸命看病してくれてるからきっと治るはずだわ」
と私の頭を撫でてくれるお母さん。その顔は何故か悲しげだった。
その晩、アリーの熱は急激に上がった。まるで燃え盛る炎のようにあっちっちだった。「大丈夫」って言ってるけど、凄く辛そう……。
アリーは昔から我慢強い子で、同い年の男子たちに苛められても家では何事もなかったかのように振る舞ってしまう。勿論その男子たちには説教してちゃんと謝らせたけどねっ! アリーに手を出すなんて許さないんだからっ!
アリーは家族に心配を掛けないように何て考えてるみたいだけど、私はアリーにもっと頼らせて欲しいの! だってアリーは可愛い可愛い妹なんだから!
それから数日経ってもアリーの症状は良くならなかった。それどころかもっと悪化していってお医者さんは「このままでは危ない」って言ってる。他の家でも危篤な人が出てきているらしく、お医者さんも必死で特効薬を探しているけど、このままじゃアリーは……
その日以降アリーは目を覚まさなくなった。私の声にも反応を示さない。このままじゃ本当にアリーが死んじゃうよ!?
私はアリーを救うため本を読み漁った。本には色々なことが書いてあるからアリーを救う手も載ってるはずだ。
私図書館で色々な文献を調べていくと……
「あった!」
遂に見つけた!
150年前に文献を、どんな傷や病もたちまち治してしまう花の話を。
その名も『天上墓褝』。山の奥深くに咲く赤い花だ。その花の蜜を飲んだものはたちまち天にも昇るような気持ちになると言われるらしい。本には薬の作り方も載っていた。
「山の奥深くねっ!」
アリーが助かる方法が判ればやることは一つ!
「今すぐ探しに行かなきゃ!」
マリーはアリーを救うため天上墓褝を探すことを決意した。
彼女は眠ったままのアリーを置いていくのは心が抉られるような辛い思いだったが、アリーを治すためだ!と涙ながらに
「お姉ちゃんに任せなさい!アリーの病気は私が治すからねっ!」
とみんなが寝静まった頃を見計らって、『薬草を探しに行きます』と手紙を一つ置いて。早速マリーは天上墓褝を探しに行った。
マリーは重大なミスを犯していた。見逃してはいけないことを。
本の右上に書いてあるドクロマーク。
そう、猛毒の印を。
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一方その頃リンとバステトは町を目指し歩いていた。
鬱蒼とした森の中をバステトの案内で進むリン。だが既にバステトの案内から3時間は過ぎ、日は沈み、辺りは既に真っ暗だ。
「バステトー、これ迷ってないかにゃ?」
『も、問題ないのですよー』
怪しい……。そう思いながらもバステトの案内通りに進むリン。
バステトは
(まさかマップが使えなくなっているなんて思わないのですよ)
本来ドライブにはマップ機能が搭載されており、間違っても迷子になることはないのだが……。
(これ完全に迷いました)
リンとバステトは絶賛迷子中である。
バステト『迷子の迷子のリーン、あなたのお家はどこですかー?』
リン「……シャキン」
バステト『ごめんなさいなのですっ!?』