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Re:KoboldSaga  作者: 空見鳥
26/33

不穏な影

残酷な描写ありです

あと遅くなりましたことをお詫びします

「チッ!公爵家のクソ共め!お貴族様ってのは庶民の生活っちゅうもんが分かってねーらしい!」


 冒険者ギルドのギルドマスター専用の執務室にある椅子にドカっと座り、先ほどまでとある事情で会談をしていた公爵家の愚痴をこぼすギルドマスターグラディス。

 秘書の男性ギルド職員がすかさず麦発酵酒で満たされたジョッキをグラディスの前に置く。

 それを一仰ぎで飲み干すグラディス。


「あー、チクショー!やってられっかってんだ!そもそもはお前らの対処が遅かったから精霊樹が死んだんだろうが!それを、俺らの所為にしやがって……うぅぁぁあぁああああ"あ"!!」


 怒りを抑え切れなかったグラディスは手にしていたジョッキを頑強な扉にぶつけた。木で作られているジョッキがあまりの衝撃に耐え切れず弾ける。


 確かに、グラディスの言っていることは正しく、その気持ちも分からなくはない。

 今回ギルドマスターであるグラディスと公爵家との会談が行われた理由は、先のビギナーズ大草原を砂漠化した災害指定個体『土地神を喰らう妖魔』の件についてだ。

 


 初めはなんという事もなかった。草食モンスターなどはこの世には何百万種と存在しているので、それのどれかが群れを成して大草原に住み着いたのだろう、とギルドと公爵家の双方が納得していた。

 それならば問題はなかった。草食モンスターのほとんどが温厚であり、大草原は極めて広大、そして彼処には護り手が存在する。植物モンスターとは異なった、一種の精霊がいた。

 精霊樹ドライアド。それはそう呼ばれている。百年と少し前からドライアドとして覚醒した老木。

 大草原には多種多様な薬草や魔草が群生しているのには訳がある。それは近くに干渉力の高い精霊がおり、且つ護られるから。そう、大草原は食い荒らしたり毟り荒らせばドライアドが虐殺をするのだ。それは人間にとって脅威であるが、それ以上にモンスターには激しい恐怖として映る。そのため草食モンスターは直ぐ居なくなる。

 これがギルドと公爵家の共通の考えだったのだ。


 しかし、現実問題はそう甘くはなかった。普通ならばドライアドの存在に感づき、恐怖して直ぐ居なくなるはずの草食モンスターは移動をしなかった。それによって進む大草原の砂漠化。

 これを重く見たギルドは即座に公爵家と打ち合わせに向かった。それというのも、ギルドは国家間を問わない多国籍組合であるので、一支施設に冒険者たちを動かすほどの金はそうそう出ないのだ。なので、普通はその支施設のある街や都市の重役にサポーターとして資金を援助してもらうからだ。ギルドと街の重役の関係は、労働と資金でできているのだ。

 その当時も、グラディスは契約に則り資金の援助を申し出た。

 が、結果はギルドと公爵家との考えの相違により却下された。

 公爵家曰く、『そのようなことはない。精霊樹を怖れぬは知性を持つ上位魔族かドラゴン、もしくはそれらに並ぶ強者のみ。それらは全て災害指定個体となる。それが存在するという情報は無い。よって、無駄に資金を沼に捨てる必要やなし』と。

 それを聞いたグラディスは災害指定個体がいるかどうかの調査をするための資金援助の話をしているのだ、と激昂。

 直ぐに公爵家の館を飛び出し、自らの私財を削り調査を乗り出した。

 が、これといったモンスターを見つけることはできなかった。草食モンスターの群れも見つかりはしなかったが……。


 それから日が経つこと三日。

 ギルドに街の全組合冒険者たちが集められた。

 集められた冒険者たちの顔には絶望の色が見える。

 それもそのはず、その日の明朝、街中に配れた伝報紙に『ビギナーズ大草原に災害指定個体現る。クラスはルークと思しき。急いで住民は東に避難されたし。尚、全冒険者諸君はギルドに集合しこれを討て』と書かれていたのだ。

 それはほとんど死刑宣告と同じ。

 災害指定個体は総じて出逢えば必死の事故のようなもの。それに自ら飛び込めと言われたのだ。

 人は脆い。それは幾らそこらの兵士以上に練度の高い冒険者であっても同じこと。

 もし冒険者たちの中に治癒魔法使が居たならば少しは気は楽だったかもしれない。が、居ないものを仮想しても意味はない。

 士気はほとんど底についていた。それでも気が触れた者がいないのは、むしろ褒められた点であったろう。


 グラディスは激しく後悔した。

 今回の災害指定はモンスターの姿形も分からぬまま、実害をもってルークというクラスを充てがわれてしまった。

 そして、昨日分かったことだが、大草原の護り手が跡形も無く消えていたのだ。

 恐ろしい話だ。魔法でなく、律を従える精霊が広がる砂漠に飲み込まれたのだから。

 このままでは全滅することとなる可能性が極めて高い。

 少なくとも士気の向上が急がれる。士気の低い冒険者など、もともと悪い連携に加えて個人としても弱くなるのでそこらの憲兵団よりも弱くなる。

 悩んだ挙句グラディスが取った行動は、飲み明かすこと。冒険者たちを全員引き連れて食事街の七店舗を貸し切り、翌日の依頼実行までどんちゃん騒ぎをやったのだ。

 それは功をなし、死ぬ前に食ってやるという決意を持った冒険者たちは息を吹き返したかのように食いまくり、グレイラビの外壁を出る頃には皆精力万端といった顔をしていた。

 結果、陽が中天から下り、暮れる西陽なろうとも発見には至らず、帰還する。

 全冒険者たちはこの時なんとか運命の糸を手繰り寄せたことで、より一層の精進に励み平均一階梯の向上を達成した。

 ギルドとしても、組合員の冒険者全てが死んでは他方からの冒険者が来なくなり、運営していけなくなるので胸を撫で下ろした。



「だと言うのにだ!あいつらときたら自分たちが死ぬわけじゃねーからって、冒険者を樹海に行かせろだと!?ふざけんじゃねー!!」


 執務用の机に拳を力の限り振り下ろすグラディス。

 ドゴッと鈍い音が部屋に響き、秘書の溜息が溢れる。


「そうは言ってもギルドマスター、街の(まつりごと)を担う公爵家としては致し方ない決断かと」

「あ"ぁ"!?」

「私に凄まないでください。それに、公爵家が考慮していることはギルドも問題視していたことです。資金援助があるだけでもマシかと思われます」


 グラディスに睨まれようと動じず、淡々と自身の主張を述べる。

 冒険者とギルドのことをしっかりと考えるが、あまり気が長くないグラディスを支える良い秘書だ。



 安堵する冒険者たち・ギルド側とは異なり、焦った公爵家。

 何故ならば、発見できなかった(・・・・・・)だけであり、存在しないとは限らないからである。

 災害指定個体は当初から確認されておらず、居るのかどうかも怪しいところではあるが、もし居なかったとするならば砂漠化の原因が分からない。それは形なき恐怖として永遠と後世まで残ることだろう。

 次いで、大草原の護り手たる精霊樹の消滅による第二次・第三次災害。

 精霊樹が居たおかげでグレイラビの街が助けられていたことは多い。

 先ず、経済的問題だ。肥沃な大地を精霊樹自ら作り出していてくれたため大草原とその近隣の土地は肥料を撒かずとも、栄養価の高い美味なる野菜や果物が生っていた。それを特産品に少なからずしていたグレイラビの経済は赤字を齎すことだろう。

 次に、街の防衛的問題。精霊樹は上位魔族かドラゴンに並ぶ強者以外には負けることはまず無い。そしてビギナーズ大草原を奥へと進むと、それら強者には劣れど粒揃いのモンスターが(ひし)めいている樹海に出る。その地のモンスター達が食糧豊富な人間の街をあまり襲わない理由として挙げられるのが中間地点の精霊樹なのだ。その精霊樹が居なくなった今、枷を外された物の怪達は涎を垂らし、グレイラビの外壁へ押し寄せるだろう。そうなってしまっては手遅れ。中には精霊樹と並ぶほどの強者もいることだろう。グレイラビにそれを討ち、押し返す力はギルドと結託したとしても無い。


 そこで、来る前にこちらから攻めることを考えついたのだ。

 とは言え、ただでさえバカにならない経済の赤字、この上軍事費を増やし無駄死にさせるなどというアホなことはできない。しかも、一から育てるなど以ての外である。

 そこで、白羽の矢が冒険者ギルドに突き立った。

 資金の援助さえすれば冒険者たちは不満なく死地に向かう。それが王侯貴族の冒険者たちへの捉え方だ。中には、金さえ払えば軽く犯れる娼婦という考えを持つ者も少なくない。

 つまりは何の郷愁も湧かない街のために死ねと言外に伝えているわけだ。



「あぁあーーもう!面倒この上ねー!!」

「まあ、ギルドマスターの手腕が試されますね。

あ、ビールのおつまみどうぞ」


 そう言って、頭をガシガシと掻き毟るグラディスに烏賊の乾物を差し出す。

 それを受け取らずに、そのまま噛り付くグラディス。


「俺の手腕が試される?ざけんじゃねーってんだ。こちとら元冒険者だぞ?何が悲しくてお貴族様の言いなりになんねーといけねーんだ!」


 クチャクチャと噛みながら愚痴る。口の中に大豆タレの味が溢れる。


「まあまあ。愚痴ってばっかじゃ何も始まりませんよギルドマスター。取り敢えず何か行動に起こさないと」

「チッ、いつか覚えてやがれ公爵家め!その偉ぶった顔面に鉄拳をくれてやるぜ!」


 そんなことをしたら処刑ものですギルドマスター。そう思いつつも口に出さず、ニコニコと笑みを浮かべる秘書。

 その後、正式にC級クエストとして前金ありの高額報酬クエストが発行された。内容は下記の通りである。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

C級クエスト【妖魔樹海の探索】

クエスト類別:探索

《内容》妖魔樹海の探索をせよ

少しでも多くの情報を手に入れたし

契約金:500C

成功報酬:2000C

____________________




◇◇◇◇◇



「おいおい、これマジかよ?」

「ウッハ!探索に前金ありとかえげつねえ!しかも成功報酬も高過ぎだろ!」

「公爵家のバカ共だな。こんなクエストそうそうお目にかかれねーよ」


 冒険者たちが昼を過ぎて発行されるという特例のクエストに見入る。そして、あまりの世間知らずに爆笑する。

 今、ギルドにいる冒険者のほとんどが今日はクエストを受けるつもりのない、つまり休日扱いをしている冒険者たちだ。休日なのにギルドに来ている理由は大抵がギルド職員が目当てだ。可愛いまたは美しい女職員に真昼間から酌してもらおうという魂胆なわけだ。まあ、冒険者たちとは違って休日でもなんでもない女職員たちは酌なんぞはしないのだが。


 そんなよくある日常風景に、貼り出された新クエストを酒の肴の代わりにと冒険者たちが確認することはよくあることだ。そして、笑ったり怒ったりして馬鹿騒ぎする。

 しかし、今回はあまりの高報酬だったことで、酒呑みが酔いを覚まし、ゾクゾクとそのクエストを受け出す。

 それもそうだろう。探索クエストは、ただ探索すれば良いだけなのだから。討伐や採取のような証を必要とせず、手伝いや配達のようにこれといった労働が存在しない。簡単に言ってしまえば、『やった』と言ってしまえば金が手に入るのだ。なので、普通は前金どころか報酬金も出ず、報酬は饅頭二個とかだ。今回のそれは、そうして考えると探索する場所が場所だが儲けやすい。


「あれ?昼間なのにギルドが賑わってる。なんでだろねジュナサン?」

「俺が知るわけないだろデュアル。まあ、たぶんだが俺らと同じような指名クエストでも多発してんじゃねーの?」

「んー……、そんなことってあるのかなー?」


 酔どれたちがクエストを受けまくっている時、急所を守っているだけの軽装備の少年と一匹のコボルトがギルドにやって来た。

 酔どれたちのヤル気の昂りを感じとった少年――もといデュアルがコボルト――もといコボリスに疑問の端をぶつけていた。


 彼らは他の冒険者のように金使いは荒くないので、先日の災害指定個体の件で儲けた金が残っているのでクエストは受けずとも良い。

 それなのに彼らがいる理由、それは指名クエストをされたからである。

 指名クエストとは、その名の通りクエストを受けてほしいと発行者に指名されるのだ。

 それは冒険者としては名誉なことである。なんせ、冒険者の信頼が民間に厚いという証左であるから。

 それに、指名クエストは通常クエストとは異なり、指名代という物が発生し、通常報酬の一割増する決まりがある。つまりは儲かる。

 だがメリットばかりではない。通常クエストならば自分たちで受ける受けないを決めることが当たり前であるが、指名クエストは先ず受けることが当たり前なのだ。これを断る場合、ギルド側に一定の金を払わなければならない。払う金額は高くはないが、安くもない金額。

 彼らはそれを払うのは面倒だ。というわけでギルドにクエスト受注をしに来ていていた。


 指名クエストも通常クエストも受注する受付口は同じ。

 コボリスとデュアルが並んでいると、グラディスがやって来た。


「おう、お前らは指名クエストの件だろ?ならそんなとこ並ばなくて良い。おら、こっちに来い来い」

「え?でも、結構並んでますよ?」

「良いから良いから」


 グラディスがコボリスを抱き上げ連れて行く。

 コボリスがいないのに並ぶ理由が分からないデュアルがそれに追従する。

 グラディスとしては、今発行された探索クエストを新米である二人にはまだ知られない方が良いと思ったのだ。

 デュアルは良くも悪くも血気盛んな冒険者タイプ。上手く探索クエストを流して金儲け、などという方法を取れないから。もう少し装備が整い次第の方が良いという考えだ。

 受注を済ませた二人は騒ぎの原因を調べることもなく、クエスト実行をしに向かった。


「ふう、危なかったな」

「ギルドマスターは彼らに優しいですね」


 また酒樽ごと傾けて飲むグラディスに秘書がおつまみのナッツを差し出す。

 ナッツを噛み砕き、酒樽を飲み干すグラディス。一つ大きなゲップをこぼす。


「優しいとかじゃねーよ、どー考えても今のあいつらじゃ直ぐ死んじまうだろ。大事な将来有望株を亡くしたくねーだけだ」


 そう言って、また新しい酒樽に手を伸ばす。

(そういうのを優しいって言うんですよギルドマスター)

 耳まで真っ赤にして背を向けるグラディスを見て、微笑を浮かべる秘書。グラディスは酔っている風を見せているが、長年専属秘書として共に活動している彼には照れ隠しでしかないことなどお見通しである。

 そのことを感じ取っているグラディスが大仰に言葉を発する。


「あーあー、歳を取ると嫌だねー。酔いの回りが早くなっちまってらぁ」

「ふふ、そうですね。臓腑も弱っているのでしょう。今日はもうこれ以上お酒は飲まない方がよろしいかと」


 大きな声を上げる割に棒読みだったグラディスから酒樽を取り上げる秘書。とても意地悪な顔をしている。


「い、いやー?酒は薬にもなると聞くがなー」

「はいはい、良薬も過分な摂取は毒ですよーっと」


 取り上げられたことに焦ったグラディスが言い訳がましいことを曰うも、軽くあしらわれてしまう。

 その後、数時間に及ぶ役職持ちの大人同士とは思えない口喧嘩は正論漬けで捲し立てる秘書に軍配が上がった。



◇◇◇◇◇



「ハァ……ハァ……。

クソ、一体なんだってんだこの樹海は。話に聞いてた以上に危ねえ場所じゃねーかよ!」


 息を切らして歪に曲がった樹々の間を駆ける。

 最早応急治療セットは使い切ってしまっており、右大腿部から止めどなく溢れ出る血を止める手段は無い。

 普通ならば蔦などを毟り、引き締めるだけでも止血効果は上げられるのだが、この樹海の蔦には棘がついた荊しか存在しない。そんな物で締めたなら逆に新しい傷を作ってしまう。

 他にも止血手段は幾らか挙げられるが、樹海の全てが止血させることを拒んでいるかのように何かしらの邪魔がある。

 それに、最も深い傷で処置が取れていないのが大腿部だというだけで、小さなものなら数え切れないほどある。

 その身を守る為の装備は、鎧殼を留める皮糸が弾け、下地の布は大半が破れている。ほとんど上半身裸である。


 それでも尚、生きる事を諦めずに走り続ける冒険者。

 彼にはよく共に活動している仲間が三人いた。柔和な表情を崩さない優男、お頭は悪くとも力自慢の巨漢、紅一点にして冒険者にしては珍しい魔法使い。喧嘩をすることはよく有れど、皆気の良い者たちだった。

 が、三人は死んだ。

 彼らが三頭の大きめのオークを相手にしていると、突如現れた赤黒く異常に巨大なオークらしき輪郭の化物に挽肉にされた。

 もしかしたら、アレはオーク達のボスだったのかもしれない。背丈は二メートルに迫るオーク達の二頭と首二つほどもあった。推定四メートル半のオークとは、笑えない。

 その身が放つ膂力は、肉厚包丁のような大剣で近くにあった大樹を斬り断ち、もう一本の大樹に深々と抉りこむほどだ。

 アレはどう考えても災害指定個体レベルだろう。


「ははは……、この頃ついてねーな。あの馬鹿デカい大草原を砂漠化する馬鹿みたいな化物に、馬鹿デカい包丁で馬鹿デカい樹を切断する馬鹿デカいオーク。こりゃ、夢でも見てんのかね?」


 そんな事はないという確信を持っていながら、そうでも無ければオカシイという考えが浮かび上がる。だんだんと後者が強くなってきているようだ。

 気がつくと彼は嗤っていた。全てが馬鹿馬鹿しいと言わんばかりに嗤っていた。

 彼は赤黒い巨大オークから逃げているのだから、ただでさえ血の臭いを滴らせながらの逃亡、これ以上発見されるリスクを上げるような行為は危険である。

 それを、それらを全て理解している上で彼は叫び嗤い続ける。


(アヒャヒャヒャヒャヒャ!

何だ何だ?どういうことだ?何でこんなに面白いんだ!?笑いが止まらねーよ!駄目だ、このままだと見つか――)

 最後まで考える前に、視界の奥の少し左にある樹が爆発した。

 そこから現れたのは先ほど見た赤黒い巨大オーク。こちらを見据えている。


「アハヒャハヒャビャビャヒャハハハッハハハハハ!!!!

よーう、久しぶりだな化物!二年ぶりか〜?今まで何処いたんだよ、もしかして俺にビビってたのか?この腰抜けがっ!!」


 彼は訳の分からないなことを叫ぶ。

 どうやらあまりの恐怖で理性が吹き飛び、記憶にバグが発生したようだ。

 顔中いろんな液体で濡らし過ぎてグチャグチャのベトベトな彼は、盾についた鞘から剣を抜き放ち、相対する。しかし、その剣は根元から折れている。

 彼が唯一逃げることができた理由は巨大オークの一撃を剣によって唯一受け流すことに成功したからだ。が、その際にあまりの膂力で剣は腹から弾け飛んだのだ。

 折れた剣を握り締め、彼は勇気を振り絞って巨大オークに斬りかかった。

 折れている右肩の骨が悲鳴を上げるが、幸運にも血を失い過ぎた彼には痛覚が最早ない。

 彼の渾身の一閃は、まさか反撃を受けるとは思っていなかった巨大オークの虚を上手くついたことにより届く。――それが折れてさえいなければ、だが。

 彼の脳内を仲間たちと暮らした冒険の日々が走馬灯として流れる。

 最後に彼が思い出していたのは、ずっと片想いだった魔法使いのアシリー。森の泉で水浴びをしていた彼女を覗いた時の、綺麗な彼女の裸体だった。


 胸元まで迫ってきた奇妙な毛を纏った矮小な猿を巨大オークは包丁の持っていない右手で掴み取り、そのまま首と思しき部位を食いちぎった。

 程よい大きさの丸いそれをコロコロと口の中で弄び、機嫌が良くなった巨大オーク。

 獲物を捕らえるための囮である自分より小さく桃色のオークを従えて、二時の方向に臭う先ほどの猿の同胞と思しき者たちへと向かった。

主人公の出番が少ないw


あと第三者視点の書き方が上手くできない

アドバイス等よろしくお願いしますm(_ _)m

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