第二話 星冠様、魔力を測定する
「はーい、席についてー」
教室のドアが開くと同時に、高くも低くもない落ち着いた声が室内に響き、クラスメイトたちがそれぞれ席につき始める。
特に席順というものは決まっておらず、皆仲のいい者同士で好きなところに座る。
「ここ、いいかな?」
一人の男子生徒がイオの二つ隣の椅子に手を掛けながら声をかける。
「どうぞ」
姿勢正しく座り、前を向いたまま短く返してその男子生徒が座ると、クラスメイト達が静かにざわつき始めた。特に女子生徒だ。
前髪の隙間から、全員と言ってもいい女子生徒がイオたちの方を見ているのが見える。
「どうしてライル殿下があんな地味な子と?」
「でも、真ん中が空いているから割って入ることは可能ですわ」
(ライル?)
女子生徒が口にしたライルという名前に、イオは聞き覚えがあった。
この国に来た頃、挨拶として国王へ会いに行った時にそばに居た同じ歳ぐらいの少年が、ライルとかいう名前だったのだ。
一度目にしただけで、当時は会話もしていない。だから友達ではなく、顔見知り程度。
それに、ライルは当時会っていたことを覚えていなさそうだ。
「静かに。今日から皆の担任を務る、フォルナ・ベルミードと言います。早速ですが皆にはこれから、魔力測定を行ってもらいます」
さっきのざわつきとは打って変わって、嬉しそうなワクワク感がある声を出す生徒たち。
フォルナの説明を聞いたイオは、自分の順番が来るまで時間があると判断し、本を取り出して静かに開き、続きを読み始める。
魔法の発現は四歳とされていて、それぞれ、火、水、風、土、光、闇の六属性に分かれている。
闇魔法が使い手の人間はほとんどおらず、その魔法は魔族が得意とする魔法。
六属性の他にもう一つ、無属性という属性がある。これは、魔法が使えないことを表す属性。
大半は初めて使った魔法が適性魔法とされるが、今から行う魔力測定用の機械で、別の魔法の適性になることもあるらしい。
「ガイ・オリエン、属性は土で魔力は110で、マスターね」
「よっしゃぁぁあ!」
ガイと呼ばれた生徒は、両腕を上にあげ大声で喜ぶ。
魔力量の段階にはそれぞれ、名称というものがある。
0〜50はアルカナ、51〜100はエリート、101〜150はマスター、151〜200はグランド、201〜250はクラウンと言った具合だ。
イオの魔力はそれら全てを凌駕するほど膨大なうえ、自由自在に魔力量を操ることができる。
………これを規格外と言わずして、なんと言うのだろうか。
地味な見た目は、目立たず平穏に暮らしたいという思いから成り立っている。目立ってしまうと、何かと過ごしにくいに違いないからである。
「次、イオ・ティアレル」
(全魔力を注いだら絶対壊れるだろうから、かなり抑え込まないと……)
「イオ・ティアレル、魔力30でアルカナね」
「はっ、見た目からしてそうだろうとは思ったけど、30って。学年どころか学園最下位じゃねぇか!」
先程家が貧相とか言っていた男子生徒が楽しそうに笑い、一緒にいた生徒たちもクスクスと笑っている。
どの国も弱肉強食というのは変わらないみたいだ。
「どうせ属性も───」
男子生徒がそう言いかけた時、すごく驚いた顔をしているフォルナの口が震えながら動く。
「属性は、……えっ?ぜ、全属性………。で、ですが、補助といった類でしょう」
静まった教室の空気を、フォルナが断ち切る。
ここにいる者たちは皆、全属性を持つ者に出会ったことがないのだろうか。かく言うイオも、全属性を持つ者に出会ったことはない。
歴代の星冠たちは風と光の属性だったと、とある本に記されている。
「次、ライル・アルディア」
「はい」
「ライル・アルディア、属性は火、水、土の三属性。魔力は155でグランド」
「さすがライル殿下ですわ!」
「ありがとう」
集団での生活が慣れていないイオは、ライルの属性と魔力が確認できた瞬間、自分の席へと歩いていく。
ライルは令嬢の話に耳を傾けながら、イオの背中を静かに見つめていた。
(魔力30。なのに、属性は全属性……か)
魔力測定が終わる度に、生徒たちの嬉しそうな声が聞こえてくる。
発現時の魔法がそのまま適性になった者、別の適性が判明した者。まあ、別の適性が判明した人数は三分の一にも満たなかったが、全員納得しているらしい。
「これで本日は終わりとなります。ですが、ティアレル君、校長先生があなたを呼んでいるから、この後私と校長室へ向かいます」
「分かりました」
「あいつ何したの?」
「入学早々退学?」
本当に人間というものは、何かとでっち上げるのが好きらしい。それが原因で、人間同士は喧嘩をすると言うのに。
だが、どうやらイオには、校長に呼ばれる理由に心当たりがあるらしい。




