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訳だけ! 十八史略+蒙求  作者: ヘツポツ斎
02巻 秦 1 始皇帝

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02-01-11 秦一 劉邦・酈食其

 懐王《かいおう》は即位の時、諸将に「咸陽《かんよう》を陥落せしめたものを関中王《かんちゅう》に任じよう」と約束していた。しかし当時の秦軍の勢いはまだあったため、誰も咸陽に攻め込もうとはしなかった。その中にあって項羽《こうう》は伯父を秦に殺された恨みから、「劉邦《りゅうほう》」を連れ立って咸陽に攻め入りたい、と申し出た。すると楚の長老たちは言う。

「項羽は粗暴、劉邦は寛容。ならば劉邦を向かわせるのが良い」

 こうして劉邦が咸陽に派遣された。


 劉邦の配下の元に、儒者の「酈食其《れきいき》」がやって来る。彼は言う。

「劉邦殿は高慢でひとを馬鹿にすることも多いが、遠大な計略をお持ちと聞いている。そのような方にこそ仕えたいと思う」

 配下は答える。

「劉邦様は儒者を好まれぬ、冠をかぶった儒者が来るとその冠を奪い取り、そこに小便をするほどなのだからな。未だかつて、儒家で劉邦様に進言できたものはおらん」

 それでもなお酈食其は配下に食い下がり、ついに根負けした配下、劉邦に言う。

「私の同郷に酈食其と言う狂人がおりましてな、本人は自らを狂人でなぞないと言っておるのですが」

 そこで劉邦は酈食其の住まう地域の側に寄った折、酈食其を呼び寄せた。その会見の場において劉邦は両足を側女に洗わせていた。酈食其は軽く挨拶こそするが、拝礼まではしない。その上で言う。

「そなたが本当に暴虐なる秦を打ち倒したいというのであれば、両足を投げ出したままで人材と会おうとは思われぬことですな」

 劉邦は慌てて立ち上がり、居住まいを正した上で、酈食其を上座に導いた上で謝罪した。その後酈食其は劉邦のために「陳留《ちんりゅう》」に出向いて説得の上帰服させた。ここから酈食其は説客、つまり相対する勢力に降伏を説く使者として働いた。


 張良《ちょうりょう》はこの頃劉邦に合流。ともに咸陽に向かった。そして秦軍を破り、ついには子嬰《しえい》を降伏させたわけである。

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