第065話 裏で糸を引く者
「止まれ!」
「な、なんだてめぇらは?」
「ボラコヴィアの警備隊の者だ。お前たちの目的を言え!」
面倒なので警備隊ということにしておこう……。
神殿騎士風の甲冑を着せた人型のゴーレムを10体連れて、街道で盗賊と思しき一団が到着するのを待ち構えていたのだ。
その場所は旧ボラコヴィアから街道沿いに西へ向かって2kmくらいの位置だ。
「ぼ、ボラコヴィアが地震被害に遭ったと聞いてな。支援物資を届けに来た!」
「ほぉう?支援物資だとぉ?……それはどこにある?検めさせてもらおうか?」
「折角助けに来てやったのに、俺たちが信用できねぇって言うのか!?」
「悪ぃな。これも役目なんでなぁ……。大人しくしたがってくんねぇかなぁ?
地震被害につけ込んで女子供や金品を略奪しようとする輩もいるんでなぁ。
お前たちにやましいところがねぇんだったら荷物ぐれぇ見せられるだろう?」
「わ、分かったぜ。あの馬車の中だ。一緒に来てくれ」
「ああ。手間をとらせて悪ぃな」
この一団のリーダーと思われる男と一緒に、支援物資が入っているという馬車に向かう……。 幌馬車か?
「あの幌馬車の中にある。さあ、思う存分検めてくれ」
男のもとから離れて幌馬車の最後尾へ向かい、幌の隙間から中を覗こうとした、その時である!
「バカめっ!支援物資なんて持ってくるかっ!死ねっ!ヤーーーッ!」
男は腰に下げていた剣を抜き、俺の背後から袈裟斬りにしてきたのだ!
後ろを向いている俺の右肩から左腰へ向けて剣を振り抜こうとしたようだが……
ガッ!……バキッ!
俺の右肩に触れた瞬間!触れた場所を基点として男が振るった剣が折れる!
「な、なにっ!?ば、バカなっ!……ひぃっ!」
威圧しつつ、おもむろに振り返り……
「ほぉう?お前、俺を斬ろうとしたのかなぁ~?いい度胸だよなぁ~?」
と言いつつ、折れた剣を持つ男の右手首を右手で掴む!
男の腕をねじり上げようと思ったのだ! そう思ったのだが……
グチャボキッブチッブシューーーッ!
ぎゃあああぁぁぁぁぁぁっ!痛ぇ!痛ぇ!痛ぇ!痛ぇ!痛ぇ!痛ぇ!
あらら……またやっちまった!
男の手首は潰れ、腕をねじり上げる途中で前腕は音を立てて折れてあらぬ方向へ向き、腕は肩の付け根からちぎれてしまったのだ!
男の肩からは血が噴き出す! 男は絶叫しながら地面を転げ回る!
「お頭っ!……て、てめぇっ!何しやがるっ!てぇーーーいぃっ!」
「やぁあーっ!」
「死ねぇっ!」
男の手下と思われる3人の男たちが剣を抜き、斬りかかってきた!
俺が連れて来た"神殿騎士もどきゴーレム"たちも大勢に斬りかかられている!
俺は剣術なんて習得してはいない。日本人だった時に、中学、高校の体育授業で剣道をちょっとやったくらいだ。
だから、日本人だった時の俺なら3人がかりで斬りつけられたらどうすることもできなかっただろう。彼等の剣筋を見ることさえもできなかったと思う……だが、今の俺は規格外だ。動体視力も身体能力もスピードも……何もかもが規格外だ!
今の俺には彼等の攻撃はまるで止まっているかのように遅く見える!
警備隊員らしく見えるように左の腰には剣を下げていたので、取り敢えず身体を右回りに回転させながら右手でその剣を抜きざまに、斬りかかってきている3人の剣を順に打ち上げるようにして払ってみた!
3人の剣を弾くつもりであったのだが……まるで大根でも切るかのようにスパッといった感じで3人の剣を斬ってしまった!?
さすがはオリハルコン製の剣だな。
その後、右上方へ払いながら抜き上げた剣の柄に左手も添えて両手で握り、返す刀で3人の胴を薙ぎ払ってやった! 多分、傍から見るとバットスイングのように見えたのではないかと思う。ダウンスイング気味の剣の軌道だったと思う……。
俺が剣を振り終えた直後、3人の身体は腰より少し上の部分で両断され、一瞬の後に切断面より血が噴き出した!
俺に斬りかかってきた3人は己の剣が俺を斬るものと確信したのだろう……
斬られた端の3人の表情にはニヤリといった感じの笑みが浮かんでいたのだが、すぐに『えっ?』といった驚きの表情に変わり、そのまま果てたのだった。
圧倒的なスピードとパワーでなんとかなっているが……ちょっとは剣術を学んだ方がいいのかも知れないなぁ……。どう見ても俺の戦い方には"品が無い"よなぁ。
シェリーやノアハ、ザシャア、オークドゥ。彼女たちの剣術は見ていて格好いいもんなぁ……な~んか憧れちゃうよなぁ。
俺が最初に腕をもいでしまったリーダーらしき男の方は失血のためなんだろう、気を失ってしまっている……。
「修復!」
もげた腕の方も、潰れたり折れたりした部分をちゃんと修復してから男の身体に引っ付けてやった。この男には、後でコイツらのアジトへと案内させようと思っている。 だから、それまでは生かしておいてやるつもりだ。
一方、ゴーレムたちの方はどうなったかというと……
そちらもたった今戦いが終わったようだ。なんともまぁ……凄惨な光景だ。
あたり一面は血の海だ。両断された死体に混じってグチャグチャに踏み潰されたような肉片と化した、原形を留めない死体がそこかしこに散乱している!
ゴーレムたちにとっては、自分たちが斬り捨てて果てた者たちは、単なる物体に過ぎないのだ。次の標的を斬り伏せるために最適な行動だと判断されれば、たとえ死体であろうが容赦なく踏みつけて行動する。彼等には、死体を踏みつけることに忌避感は一切ない。
こうして、92人もいた盗賊たちは、ものの5分でリーダーを残して殲滅されてしまったのだった。
コイツらが乗ってきた馬や馬車は全くの無傷である。ありがたく頂戴したことは言うまでもない。70頭近い馬が労せずして手に入った。盗賊様様である!
これで新ボラコヴィア町の馬不足も多少は緩和するかも知れないな!
あ、それからもちろん、殲滅した盗賊どもの死体は烈火で焼却消滅させて、魂はすべて"奈落システム"へと放り込んでやったよ。当然だ!
◇◇◇◇◇◇◇
『ダーリン、お忙しいところをすみません。ちょっといいですか?』
『ん?ソニアルフェか、どうした?』
『は、はい。実は今ウェルリさんたちと新ボラコヴィアの東門周辺の見回りをしているんですが、門衛が慌てていまして……』
『ダーリン、どうもっす!
なんか黒いローブを纏った怪しい50人くらいの一団が、町を出る手続きもせず無理矢理町の外へ出て行ったらしいっす』
『マイミィから聞いていたシオン教徒の特徴に一致。ダーリンの指示を仰ぐ』
ガギガガ師の一番弟子が今回の地震を引き起こしたのだろうと言ったマイミィの言葉が頭を過る……ヤツらか?
『それで……どっち方面へ向かった?』
『門を出て北東の方向へ向かったらしいです。そうでしたよね、ウェルリ?』
『そうっすよ。ヤツらが逃げていった方向を門衛が指差して教えてくれたんすが、その先に浄水場の明かりが見えてるっす。間違いなく北東っす』
『ひとりだけ、レッサードラゴンに乗って飛んで行ったらしい』
浄水場?……ヤツらの目的は大量の死体を得ることだったよな?
毒かっ!? マズいっ!
『ソニアルフェ!ウェルリ!ジー!すぐにヤツらの後を追え!
そして、見つけ次第殲滅しろ!ヤツらは浄水場で水道に毒を混ぜようとしているものと思われる!急げっ!』
『『『はいっ!』』』
俺が浄水場を建設するときに同行したのは……ミューイとラヴ、ノアハか。
ハニーたちの転移能力ではかつて自分が行ったことがある場所か俺のもとにしか転移できない。浄水場に行ったことがあるハニーは浄水場建設時に俺の警備をするという名目でついてきた彼女たちだけであった。
『ミューイ!ラヴ!ノアハ!聞こえるか!?緊急事態だ!』
『『『はいっ!聞こえます!』』』
『お前さんたちは大至急浄水場へ転移してくれ!これは最優先事項だ!』
『それで転移後には何をすれば?』
ノアハが聞く……
『ああ。転移後は、浄水場に向かってくるヤツを見つけ次第片っ端からぶっ殺せ!魂の色の確認も不要だし、容赦も一切無用だ!いいなっ!?』
『え?こ、殺すんですか!?誰彼構わずにですか?』
『そうだ、ラヴ。殲滅しろ! 今浄水場に向かっているヤツらはシオン教徒だ!
ヤツらは水に毒を混ぜて町民を殺そうとしている!それをお前さんたちに止めて欲しい!やってくれるか?』
『『『はいっ!承知しました!』』』
マップで確認してみたが、浄水場の近辺には人影はなく、近づいて行く者も無理矢理町から出て行ったシオン教徒と思しき者たちだけであるから、無関係で善良な人間がこの件に巻き込まれることはまずない……とは思う。
無関係な人間に対し、誤って死する者の苦しみや痛みを味わわせてしまうことがあってはならぬし、それは不本意である。
だが、ちょっとした躊躇いがハニーたちの命取りにもなりかねない……。
ここは心を鬼にして問答無用で近づく者どもは皆ぶっ殺してもらうことにした。
『今ヤツらの後をソニアルフェたちが追っているが、ボスと思しきヤツはレッサードラゴンで移動中だ。
だから、多分彼女たちじゃ追いつけねぇ。お前さんたちが頼りなんだ。頼む!』
『『『はいっ!承知しました!すぐに転移します!』』』
『念のためにミニヨンを10体、お前さんたちの護衛に回す。
それから、浄水場をぶっ壊しても構わねぇから、敵の殲滅を優先してくれ!』
『『『はいっ!』』』
『俺もこっちの用が済んだらすぐにそっちへ向かうからな。頼んだぞ!』
『『『はいっ!』』』
ミニヨンを20体起動する。その内の10体を浄水場上空へと転送した。
残りの10体は黒ローブの者たちを追跡しているソニアルフェたちの護衛用だ。
隔靴掻痒……もどかしい!
俺もすぐに彼女たちのもとへと転移したいんだが……それができない。
盗賊を殲滅して一息つく暇も無い。大将1騎に付き従う100騎編成の騎馬隊が街道をこちらへと向かってくるからだ。所属は全く不明、敵か味方かも分からない者たちが町へと向かってきているのだ。これを放ってはおけない。
『ソニアルフェ、ウェルリ、ジー。浄水場ではミューイ、ラヴ、ノアハが転移して敵を待ち構えている。だから、お前さんたちは浄水場に向かっているヤツらの後ろから叩け! いいかっ!情けは一切無用だ! ひとり残らずぶっ殺せ!』
『『はいっ!承知しました!』』『命令を受領!敵を殲滅する!』
『浄水場が壊れても気にするな!思いっきりやれ!手加減は無用だからな!』
『『『はいっ!』』』
敵は仮す可からず時は失う可からず!
敵に情けは無用だし、討てるときに討っておかないと後から後悔することになり兼ねない!
『念のためにお前さんたちの護衛と明かり代わりにミニヨンを10体同行させる!周りが暗くてよく見えねぇと危ねぇからな』
ミニヨン10体をソニアルフェたちの上空へと転送する……
『うわっ!明るくなったっす!ありがとうっす、ダーリン!』
『俺もできるだけ早くそっちへ向かうから、みんな、頼んだぞ!』
『『『はいっ!』』』
◇◇◇◇◇◇◆
敵かどうかを見極めて敵なら捕らえるか殲滅する。あるいは敵を捕縛して情報を聞き出すというのならハニーたちに任せるのが正解だろう。
神眼で魂の色を見たり、相手の表情等からその心を読み取ったりする必要があるからだ。そういったことをさせるには、ミニヨンたちでは無理がある。
だが、今回は問答無用の殲滅作戦だ。それならばミニヨンだけでも用が足りる。
本来ならハニーたちを追っ手として差し向ける必要など全くない。
それならなぜハニーたちに賊を追わせたのか?
それは……相手のワナに嵌まったふりをするためだ。
そして、彼女たちに俺の意図を伝えなかったのは、
『敵を欺くにはまず味方から』
ってヤツだ。
緊迫感を漂わせながら念話するのには苦労したのだが今のところは誰も気付いていない。うまく行っているようだ。
ソニアルフェたちからの念話が入るとすぐに何らかの問題が発生したと判断し、マップで町周辺の様子を確認し始めたのだが……
門衛の話では無理矢理町の外へと出た人間が50人いるということだったのに、おかしなことに、震災から助けた生存者も、蘇生させて助けた者も全員が町の中に存在していたのである。つまり、町の中からは誰ひとり町の外へ出ていない。
不審に思ってマップの索敵範囲を広げて町の周辺を調べてみたのだが、町の東門付近から浄水場の方へ向かって高速で飛行する魔物反応が1、それに重なるように人族の生命体反応が1。東門付近から浄水場の方へ走り出す生命体反応が10。
そして、東門から少し離れた茂みの中に、隠れているつもりなんだろうが、身を潜めている生命体反応50が確認できたのだ。
しかも、茂みに隠れている生命体反応の後ろには魔物反応までもがあるっ!?
その魔物反応の正体はオークが50とゴブリンが50である!招喚されたのか?
こうなると、これはどう考えても浄水場の方はフェイクだろう……。
マップで確認してみると……
黒ローブの者たちが無理矢理町から出て行ったとハニーたちに告げた門衛の魂の色は赤黒かった。黒ローブを纏った者たち、つまりシオン教徒たちと繋がっていると見た方が良さそうだ。その可能性が高いだろう。
東門付近の見回りをしていたソニアルフェたちを外へと誘き出し、警備が手薄になったところを門衛が手引きして、東門の外で待機していたシオン教徒たちを町の中へと導き入れるつもりだと考えるのが、この状況では自然だ。
マイミィの話によれば、人為的地震を含む今回の一連の犯罪であるシオン教徒の作戦を指揮しているのはガギガガの一番弟子である重力系魔法使いということだ。
実際に今回の震災を引き起こしたのも重力系魔法によるものだったから、彼女の話はまず間違いないだろう。
そして彼女の話では、そいつはマイミィのような魔物使いとしての能力は持っていないとのことだった。
黒ローブの男が乗って浄水場の方へ向かって飛行しているのはレッサードラゴンである。だが、そのレッサードラゴンの魔物反応はつい先ほどまでは全く察知することができなかった。
町の周辺には、通常のドラゴンよりは小さいとはいえレッサードラゴンのような巨体を持つ魔物を隠しておけるような場所はどこにもない。
そう、まるでどこからか突如レッサードラゴンが転移して来たかのようなのだ。
となると恐らくレッサードラゴンを操って空中を浄水場へと向かっているヤツは魔物招喚能力を持つ魔物使いと考えるのが論理的には自然だろう。
そう考えればついさっきまではいなかったはずのレッサードラゴンが突如現れたことにも説明がつく。
この考えが正しいのであれば、レッサードラゴンで浄水場へと移動している男はシオン教徒たちを指揮しているガギガガの一番弟子ではないことになる。
ヤツはこの町の中か、東門の外の茂み……そのどちらかにいるものと思われる。
シオン教徒たちを指揮しているガギガガの一番弟子をぶっ殺すためにも、ヤツが仕掛けたワナに嵌まったかのように見せかけて誘き出そうと考えたのである……。
だから、ミニヨンではなく、ハニーたちを追っ手として差し向けたのだ。
黒幕が誘いに乗って"のこのこ"と現れてくれるといいのだがなぁ……。
◇◇◇◇◇◆◇
『ダーリン、ちょっといいかしら?』
『ザシャア、どうした?』
『あのう……子供たちが道に落書きというか、魔法陣のようなものを描いているのですが、これはダーリンの指示でしょうか?』
『魔法陣?いや、俺は知らねぇぞ』
『やはりそうですか……。子供たちは地震から守る印を描いていると言っているのですが、その印は上様から教えてもらったと言うのです。
それがどうも気になりましたので……』
『ザシャア!お手柄だ!
多分そいつはシオン教徒が子供たちに描かせている!
子供たちの様子はどうだ?隷従の首輪は嵌められてねぇか?
子供たちになんか妙なところはねぇか見てくれ!』
『はい。承知しました。
えーと、みんな首に銀の首飾りをしています! それに目がうつろです!
精神支配されているかも知れません!……ステータスを確認しました!精神支配されています!』
『やはりそうか!……お前さんがいるのは南門前か。となると他の門の前でも同じようなことになっていそうだなぁ……』
『私が他の門にも行って見てきましょうか?』
『いや。お前さんはそこにいてくれ。俺が門の警備をしているハニーたちに念話で連絡し、調べてもらう』
西門を守るシェリー、北門を守る翠玉に念話して調べてもらうと、やはりどこも子供たちが魔法陣を描いているとのことだった。
<<全知師!
早急にこの町の中を検索して、精神支配されている子供をターゲット指定してくれ!
>>命令を受領!質問!
何歳までの子供を検索対象としますか?
<<そうだなぁ……15歳未満の子供たちを検索対象としてくれ!
>>承知!
検索しています……検索完了!
検索にヒットした子供たちをターゲット指定……指定完了!
<<ありがとう、全知師!後はこちらでやる!
『神である我が権限において、この者たちの奴隷契約を強制的に破棄する!
……加えて隷従の首輪の除去と消滅を命ずる!』
『あっ!子供たちが嵌めていた首飾りが外れて消えました!……あっ!子供たちの目に輝きが戻りました!精神支配からの解放に成功したようです!』
精神支配が解けた子供たちは皆、キョトンとした顔をしていたとのことだった。
その後子供を捜していた親に連れられてそれぞれの家へ帰って行ったらしい。
『そうか。ザシャア、ありがとうな。お前さんのお陰だぜ!』
『いえ。お役に立ててよかったです。うふふ』
魔法陣を綺麗に消してやろうかとも思ったのだが、そうすることで俺たちが敵の計画に気付いていることを教えてしまうことになりかねない。
それで全知師に命じて魔法陣を解析させて、一見しただけでは分からないような線を描き加えさせて魔法陣が発動しないようにさせる。
なお、その作業はミニヨンたちに行わせることにし、その件については全知師に丸投げしておいた。
ちなみに、全知師の解析により、子供たちが描いていた魔法陣が発動した場合、魔法陣周辺の重力が通常の20倍になることが判明した。
町の外へ出ようとする人々を重力で押し潰すつもりなのかも知れない。
東門を除く各門の前に強い重力場を発生させて人々が町の外へ逃げられなくした上で、東門から招き入れた魔物たちに人々を蹂躙させるつもりなのか?
町を襲わせる魔物にオークとゴブリンを選ぶとはな……シオン教徒らしいゲスな思惑が透けて見えるな。シオン教徒の中には女性信者もいるだろうに……。
素っ裸でふんどし一丁、猿ぐつわを嵌め、ロープでグルグル巻きにして転がしてある盗賊のボスが目に入った……つい今し方、俺とゴーレムたちで倒した91人の盗賊たちのボスだ。
なるほど……考えてみればコイツらの襲撃もタイミングが良すぎるよなぁ。
震災直後にまるで分かっていたかのごとく、タイミングよくやって来たコイツら盗賊たち。そして、これからここへやって来る騎馬隊も……怪しい。
地震発生からの一連の事件、それらのすべてをシオン教徒が裏で糸を引いている可能性が高いように思えてきた……。
◇◇◇◇◇◆◆
『ダーリン!レッサードラゴンが見えてきました!攻撃を開始します!』
『おう、ミューイ!多分そいつはシールドを展開している!攻撃にはフェイザーを使え!いいな!?』
『はいっ!……みんなフェイザーの発射準備を!出力レベルは6で!』
『『はいっ!』』
『撃てっ!』
ミューイの合図で、ミューイ、ラヴ、ノアハが一斉にフェイザー光線を放つ!
「なにっ!?ば、バカなっ!?うわぁ……」
レッサードラゴンに跨がっていた男には驚きの言葉を発し終える間もなかった!
ハニーたちが放ったフェイザー光線のすべてが見事レッサードラゴンに命中っ!
一瞬でレッサードラゴンは消滅する!
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」
レッサードラゴンに跨がっていた男は地面へと落下していく!
ハニーたちには『最早これで勝負ありか?』と思われた!……のだが!そんなに簡単には終わらなかったのである!
ハニーたちの予想を裏切り、男は彼を包むボール状のシールドに守られながら、地面で何度かバウンドした後、無傷で地面に降り立ったのだ!
「お、おのれぇーーっ!……オークども!、ゴブリンどもよ!我のもとへ来たれ!魔物招喚!」
男が言葉を発し終えると、目の前の地面に赤い光で描かれた魔法陣が現れる!
そして、その中からオークとゴブリンがワラワラと湧き上がってくるかのように現れたっ!オークとゴブリンが共に50体ずつ現れたのだ!
「ひゃぁっはっはっはっ!オークども、そして、ゴブリンどもよ!あの小生意気な女どもを凌辱し、孕ませてやれっ!行けっ!」
ハニーたちは即座に完全防御シールドを展開した……
◇◇◇◇◆◇◇
『ダーリン、聞こえますか?あのね、町から逃げたヤツらに追いついたんすけど、10人くらいしかいないっすよ。おかしいっすよね?』
『ああ。他のヤツらは町の東門近くの茂みに隠れているから、お前さんたちの前にいるは10人だけだ。後ろから攻撃したって構わねぇから、すぐにぶっ殺せ!』
『警告なしで後ろから攻撃するのは卑怯。私はいや。事前警告を行いたい。許可を求む!』
『そうか。ジーは真面目で真っ正直ないい子だな。いいぜ!お前さんたちの好きなようにやってくれ!油断するなよ?』
『『はいっ!』』『承知!』
どうやら警告するまでもなかったようだ。
ハニーたちの前を行く黒いローブの男どもは、自分たちが仕掛けたワナだから、当然、彼女たちが追ってきていることは知っていた。
何やら地面に目印のようなものが描かれている場所まで来ると、彼等はクルッと後ろに向き直り、ニヤリと笑う……。そして、その中のひとりが何やらブツブツと呟き始める!
男どもに警告を発しようかとしていたハニーたちの顔に緊張が走る!
「シールドを展開しましょう」
「うん」「ん!」
ハニーたちは嫌な予感がしたのか完全防御シールドを展開した。
直後地面にハニーたちを取り囲むかのように赤く光る複数の魔法陣が現れる!?
そして、その中からゴブリンどもがワラワラと湧き出てきたのだ!
ハニーたちは完全にゴブリンどもに包囲されてしまった!?
ゴブリンどもの数はおおよそ50体!ヤツらは下卑た笑いを浮かべながらジリッジリッと、ハニーたちを包囲する輪を狭めてくる!
「さあぁゴブリンどもよっ!その女どもを犯せ!孕ませてやれっ!あはははっ!」
ゴブリンどもが一斉にソニアルフェ、ウェルリ、ジーに飛びかかったっ!
◇◇◇◇◆◇◆
ソニアルフェたちに町から黒ローブの男たちが逃げ出していったと伝えた門衛がニヤリと笑うと大声で叫びだした!
「ま、魔物だーーっ!魔物が東門から押し入ってきたぞーっ!逃げろーっ!」
まるでその声が合図でもあったかのように、町の東門の外にオークとゴブリンの群れが現れる!そして、その魔物たちの後ろには魔導士風の者たちが40人、薄ら笑いを浮かべながら立っている!
オークどもとゴブリンどもは東門から悠悠と入ってくる!大声をあげた門衛には目もくれず、どんどん町の中へと入ってくる!?
「待てっ!お前たち!ここからは一歩も前に進ませはせぬぞ!」
ちょっと古風な言い回しがなんとなく格好いい勇者ユリコだ!彼女が魔物の前に立ちはだかったのだ!
そして、その左隣には聖女マルルカ!右隣には魔物使いのマイミィが並ぶ!
ニヤニヤしながらたばこを吹かし、魔物の侵入を見ていた門衛の顔が強張る!
その男がぼそりと呟く……
「な、なぜだ?なぜこんなに早く駆けつけてくるんだ?」
マルルカは少々表情が硬い。ユリコは毅然たる態度で魔物たちを睨みつける!
一方、マイミィはかわいらしい微笑みを満面に湛えながら何か言葉を発しようとしている!?
「魔物たちよっ!我が偉大なる神『シンイチロウ』の名において命ずる!
我に付き従えーっ!」
◇◇◇◇◆◆◇
「誰だお前は!?」
「シオン神聖国のガギガガと申します。お待ちしておりました」
「うむ!だが、予定の合流地点とは異なるがどうした?」
「はい。町全体が移動してしまったものですから、当初の合流予定場所では今後の行動に支障が出ますゆえ、ここまで出張って参りました」
「そうか。大儀である!では、さっさと町まで案内せいっ!地震に見舞われた我が領地がどうなったのか早く見てみたい!」
「承知しました。今すぐご案内致します」
ガギガガの名をかたって鎌をかけてみたが、やはりコイツらはシオン教徒たちと繋がっているようだ。どうやらコイツはボラコヴィア町の領主のようだな……。
「うむ!ああ……それとレッサードラゴンでやって来た使者の話では、今回の件を見逃せば、捕らえた神の后たちを私の性奴隷として差し出すということだったが、間違いないな!?」
「なぁっ…にいぃぃっ!?こ・の・クソ・野郎・がっ!てめえら…ぶっ殺す!」
たとえ天地がひっくり返ってもそんなことは、ハニーたちがコイツらの性奴隷にされてしまうことなんぞ起こるわけがないのだが……腸が煮えくり返る!
頭の血管がブチッと切れたような気がした! もう怒りが抑えきれない!
思わず強烈に威圧してしまった! 全く抑えがきかない!
"ひいぃーーーーっ!"
"ブヒヒィーーン!!""うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……"
騎兵たちが乗っている馬たちが暴れ出し、騎兵たちを振り落として逃げていく!
馬に振り落とされ打ちどころが悪かった者、俺の威圧に耐えられなかった者……なんと兵の半数が失神してしまった!
領主はまだ意識を保っている……大したものだ。
だが、腰が抜けたのか地面でじたばたしている。その股間付近には先ほどまではなかった水たまりができている……どうやら失禁したようだ。
グッ!…ぎゃっ!…サッ!
怒りに任せて領主の顔のど真ん中に剣を突き刺してしまった!
「ゴーレムたち!やっちまえ!容赦は無用だ!ぶっ殺せ!」
"承知っ!"
ゴーレムたちによる一方的な殺戮が始まった!
魂の色なんぞ一切見分けていない。ただの殺戮だ!
恨み、呪うんだったらクソ領主を主に選んだ己を呪え!




