第019話 スケープゴート
「シンさん、地球の管理者からメッセージが届きました」
俺が謁見の間に転移するとシオリがすぐに話しかけてきた。
「なんて言ってきたんだ?」
シオリがメッセージを何も無い空間に映し出す……。
『強制的に日本人として転生させちゃったことはホント!すまなかった!
それでさぁ、その件の責任者を転送するからさぁ……そいつを煮るなと焼くなと好きにしてもらっていいから、それで勘弁して欲しいんだわ~。頼むよ。
じゃ!そういうことで!
……あっ、そうそう、この件の責任者は5分後くらいにはそっちへ転送できると思うからさ、よろしくね。じゃあね!バイバーーイ!』
「クソ野郎が、ふざけやがって!これで謝罪しているつもりかっ?」
そんな時である。
謁見の間の入り口と玉座とのちょうど中間地点の空間が歪み出す……。
それはだんだん大きくなり、半径1m程の半透明の球形をしたシールドのようなものが現れた。
その中は、球の中心から外側へ、球面に向かって無数のコロナ放電ようなものが起こっている。プラズマボールのようになっているのだ。
あちゃぁ~、球体が出現したところの床が球面でえぐり取られてしまったようになっている……。ひでぇ~な。
暫くすると、放電が収まり、中に人影が現れた。
女性だ。それも素っ裸だ!大事なところまでもが見えそうだ……。
地球の米国、カリフォルニア州知事を務めたこともある"マッチョな"映画俳優が殺人アンドロイド役を演じた『ターミ○ーター』というSCSI機器の終端抵抗のようなタイトルの映画作品があるが、その中で殺人アンドロイドが未来からやってくるシーンのような感じで彼女は現れたのだ。
裸で登場ってのも同じだな……。地球の管理者の演出じゃないだろうな?
右膝を立てた状態で跪き、頭を垂れている。
まるで立てた膝の上に頭を乗せているかのようにも見える……。
空間の歪みが収まると、女性はふらふらしながら俺の近くにやってきて……
「申し訳ございません!貴方様が日本でお亡くなりなった時は、私が日本の担当者でした!どうぞ煮るなり焼くなり、性奴隷にするなり好きにして下さい!」
泣きながら土下座して詫びる。
「まぁまぁ…お前さんに責任がねぇことくらい、俺にはちゃんと分かっているから面を上げてくれ!いやっ!その前に服を着てくれ!」
「うう……。この世界ではレプリケータを使用する権限がありません。
服を作れないんですぅ。わあぁぁぁぁぁん!」
そうか……この世界の人間?じゃないからな。
俺は、いつもの下着&グレーのワンピース&ジーンズ等々を生成して、目の前の女性に装着させた。
彼女のステータスを確認する……。
名前は"さゆり"、またしても17歳だ。魂の色は銀色である。
「さゆりさん、お前さんはスケープゴートにされたんだな。可哀想に」
「えっ?ど、どうしてお分かりになるのです?」
「だって、俺はいい年したオッサンで死んだんだぜ?
17歳のお前さんじゃ、俺が無理矢理日本に転生させられた時には、まだ生まれちゃぁいねぇだろうが?
ただ単に、俺が日本で死んだ時に日本担当をしてただけなんだろう?違うか?」
「ううううう、そ、そうなんです。上様からおめぇの責任だ!責任とって来いって言われて……。
でもすみません。私共のミスで、大変なご苦労を味わわせてしまい、誠に申し訳ございませんでした。心よりお詫び申し上げます。ううう……」
「よしっ!気に入った!お前さん、俺の助手にならねぇか?」
「えっ?」
「俺はお前さんのことが気に入ったぜ!
スケープゴートにされて、恨み言のひとつでも言いたくなるだろうに……。
なのにお前さんは、地球の管理をしていた者として、ちゃんと俺に謝ってくれたじゃねぇか!なかなかできることじゃねぇ!どうだ?俺の助手にならねぇか?」
「わ、私なんかでよろしいのでしょうか?」
「おう!もちろんだ!
実はな、今、人族担当の管理助手がいなくてな、ちょうど困ってたんだよ。
だから、お前さんが引き受けてくれたら助かるんだ。
どうだ?引き受けてくれたら恩に着るぜ?」
「はい!よろごんでおびきう゛げじまず~!ありがとうごじゃいまずー!!」
さゆりは、俺の胸に飛び込んできて、おいおいと泣いた……。
俺は思わず、彼女をギュッと抱きしめた。
地球の管理者はホント、クソだな!
俺の務めていた会社の上司、部長のことが頭を過る……。
自分のミスは部下の責任、部下の手柄は自分の手柄……。ああ腹が立つ!
この子は俺と同じで、クソ野郎の犠牲者だ!
そのうち、絶対に地球へ行って、地球の管理者をぶっ飛ばす!俺は強く強く心に誓った!
◇◇◇◇◇◇◇
さゆりが落ち着いてきたので、さゆり、シオリと一緒に俺は自分の部屋へと転移してきた。お茶でも飲みながらゆっくりと話そうと思う。
「シオリちゃん、俺がこっちに戻ってきた時も、さゆりちゃんのときみたいな現れ方をしたのか?」
「いえ、通常はエネルギー使用量が多すぎるため、さゆりさんのような転送は行いません」
「へぇ~。そうなのか?」
「通常、別の宇宙空間へ、宇宙空間をまたいで転移、転送する場合には、魂とその関連するデータを圧縮して、ひとつのデータにまとめてから、データとして先方に送り、先方で用意した肉体へと魂関連データをインストールというかリンクさせる方法が採られます」
「なんでさゆりちゃんは肉体ごと転移させたんだろうな?地球の管理者は……?」
「こちらの意向も聞かずに送りつけるためと、エネルギー使用量が多い方法を使うことで謝罪しているポーズを示したかったのでしょう」
「はい。地球の上様は、
『めちゃめちゃエネルギーを喰う、"肉体まるごと転移"を使うんだ。
これだけ誠意を尽くせばヤツだって許してくれるだろう……』
と仰っていました」
クソ野郎め!騙されるか!
「そんなにエネルギー使用量が違うのか?」
「はい。質量の4乗に比例してエネルギー使用量は増加します。
通常の魂データ送信による転移であれば、質量はゼロですので、ほとんどゼロに近いエネルギー使用量で宇宙空間を跨いだ転移が可能なのです」
「私が裸に剥かれたのも、ちょっとでも軽くしようとしてのことでした」
「地球の管理者って本当にゲス野郎だな!こんなかわいい女の子を、裸にして送り出すなんて!許せんな!」
さゆりがポッと頬を染める。
俺はさゆりに、この惑星で俺の助手として、つまりは管理助手として活動できるように各種権限を付与してやった。
もちろん、転移・転送能力も付与してやった。
「いやぁ~、ホント助かる!さゆりちゃん!こっちに来てくれてありがとうな!
お前さんみたいな優秀な人材を確保できて俺は嬉しいぜ!
これでシオリちゃんの負担も少しは軽減できるだろうしな!よかったよ!」
「ありがとうございます!お力になれるように一所懸命にがんばります!」
「ああ、でも無理はするなよ。がんばりすぎはダメだぞ?」
「ううう……。なんてお優しい方なんでしょう……」
「いや、別に普通のことなんだけどなぁ……。お前さん、よっぽどひでぇ職場環境だったんだな?地球って神の世界までブラックなのか?」
「……?」
「まぁいい、ここでは無理せず自分のペースでやってくれればいいからな?」
「はい」
「しばらくはシオリちゃんについて、こっちの仕事を覚えてくれると助かる。ゆくゆくは人族を担当してもらおうと思っているんで、よろしくな」
「はい。がんばります!」
「あ、それから……これは俺の個人的な頼みなんで、できたら…やって欲しいってレベルの話なんだが……」
俺は、日本にいた時に心から愛した女性がいたこと。
その女性が無惨にも殺されてしまったこと。その犯人を、俺が死ぬまでに見つけられなかったことを話し、ヒマな時でいいから、さゆりの日本担当をしていた時のコネクションを使って犯人が誰なのかを調べてはもらえないかと頼んだのだ。
犯人が見つかったとしても、この世界からではどうすることもできないが、このことだけが日本人としての俺の心残りだと話すと、さゆりは快く承諾してくれた。
「面倒くさいことを頼んでしまって、ホント、申し訳ない。
ヒマな時だけでいいから。頼みます。どうかよろしくお願いします」
俺はさゆりに頭を下げた。
◇◇◇◇◇◇◆
マンションの現在の部屋割りは次のようになっている。
10階。東から、シン(キャル、シャル)、シオリ。
9階。東から、スケリフィ、カークルージュ、キャル、シャル。
8階。東から、ソリテア、インガ、ヘルガ、タチアナ。
7階。東から、ディンク、カーラ、ゼヴリン・マーロウ。と空室1部屋。
6階。シェリー、ラヴ、ラフ、ミューイ。
5階。神殿騎士試験受験生の3人が住む。1部屋は空室だ。
4階。空き部屋が4部屋。
3階。東から、ニング、ロッサナ。空き部屋が2部屋。
2階。東から、ベックス、ティーザ、レイチェ、タニーシャ。
1階。食堂兼多目的ホール。厨房他。
管理助手のさゆりには申し訳ないが、7階の空き部屋に住んでもらうことした。
つまり以下のようになる。
10階。東から、シン(キャル、シャル)、シオリ。
9階。東から、スケリフィ、カークルージュ、キャル、シャル。
8階。東から、ソリテア、インガ、ヘルガ、タチアナ。
7階。東から、ディンク、カーラ、ゼヴリン・マーロウ、さゆり。
6階。シェリー、ラヴ、ラフ、ミューイ。
5階。神殿騎士試験受験生の3人が住む。1部屋は空室。
4階。空き部屋が4部屋。
3階。東から、ニング、ロッサナ。空き部屋が2部屋。
2階。東から、ベックス、ティーザ、レイチェ、タニーシャ。
1階。食堂兼多目的ホール。厨房他。
「さゆりちゃん、管理助手用の部屋が用意できなくてすまない。
取り敢えず、この図では……ここ!この部屋、ゼヴリン・マーロウの隣の部屋を使って欲しい」
「えっ!?住居もお世話下さるなんて!感激ですぅ!ちょ~ホワイトですぅ!」
「ちょ~ホワイトって。ははは。
ところで、日本の管理助手をしてた時は家はどうしてたんだ?」
「自費で単身用のアパートを借りていました。こっちに来てよかったぁ~!」
「こんなかわいい女の子を、アパートで一人暮らしさせるだなんて……地球は監獄惑星なんだろう?
悪ぃヤツはウヨウヨいるのになぁ、ひでぇことしやがるなぁ~地球の管理者ってのは……。 せめて寮ぐらいは用意してやるだろう、普通は?」
「……ははは。当たり前だと思っていましたので、こちらが天国に見えます」
「日本に住んでいたんだから、設備の説明は省略しても大丈夫だろ?」
「はい。シャワートイレまであるなんて!感激ですぅ!
中世ヨーロッパレベルの生活だって聞いてたんで、こちらの世界で暮らすことになったら、どうしようかと思っていました」
「ははは。そう思うだろうな。便利だったからな、日本は」
「アニメとか見て、異世界転生には憧れていたんですが……。
実際に中世ヨーロッパレベルで生活しなくてはならないとなるとちょっと引いてしまいます」
「おっ!お前さんも異世界転生モノが好きなのか?」
「はい。えっ?上様もですか?」
「シンでいいよ、上様とは呼ばないでくれ。……いやぁしかし日本のことが話せるお前さんが来てくれてホント嬉しいなぁ!よろしく頼むぜ!」
「はい。シンさん!」
シオリがなんかジトッとした目で見ている。
居心地の悪い沈黙がしばらく続く……。話題を変えよう……強引に。
「間違ってたらすまんが……后選びの時、シオリちゃんも手を挙げてくれたように思ったんだけど……俺の気のせいかな?」
「……いえ、私も手を挙げました」
「本当に?俺なんかの嫁になってくれるのか?」
「……はい。シンさんがよろしければ……ですが」
「よろしいってもんじゃねぇよ!最高だぜ!
お前さんのような沈魚落雁閉月羞花な超絶美人で、頭が切れて、しかも性格までいい子を嫁にできるなんて……言葉では言い尽くせねぇほどに幸せだぜ!」
「そ、それは……ほ、褒めすぎです」
最近の俺はかなり変わってきてしまっている。
以前はハーレムに抵抗感があったのだが、どうもこのところ抵抗がなくなりつつある。キャラクター設定を変更した影響なんだろうか……。
「でもさぁ、実験とはいえ、俺はハーレムを作らねぇといけねぇんだぜ?
そんなの女性として許せるのかい?」
「女性に限った感情ではないでしょうが……許せません。
管理助手の立場を離れて考えますと絶対に許せません。
独占欲もあります。シンさんには他の女性と一緒にいて欲しくはありません。
ですが、それ以上に、貴方への気持ちを押し殺す方が何倍もつらいのです。
論理では割り切れず、ディレンマに陥ってしまいます」
「あのぉ~、いいでしょうか?」
「ん?なんだい?」
「どちらも……素直に自身の気持ちに従ったらいいのではないでしょうか?」
「どういうことだね?」
「シオリさんが、ハーレムを作るシンさんを許せるならそれはそれ、許せないならそれもそれ……っていうことですよ。
許せないならやめておけばいいだけなんじゃないでしょうか?
許せるなら一緒になればいいだけですし……。
どんとすぃんく!ふぃ~る!ってヤツですよ。考えすぎなんじゃ無いですか?」
なるほど。そういう考え方もあるのか……。
「ここは日本じゃないんですから……、法で一夫一婦制が定められているわけでもありませんし、たとえ定められていたとしても、神であるシンさんの前では意味を持ちません。
要するに、各々が納得していればそれでいいんですよ。
他人がどうこう言えることでもありませんしね。
嫌ならやめればいいだけですし……。
気持ちに正直に従えばいいんじゃないでしょうか?私はそう思いますよ」
「なるほどな。正論だな。
一夫多妻は、男尊女卑だと見做されがちだが、当人たちが心から満足しているのであれば、何も問題はねぇもんな。この世界では禁止もしてねぇから特に……。
他がとやかく言うもんじゃねぇことだわな」
現在一夫一婦制以外を厳格に認めない宗教の中には、ずっと遡ると一夫多妻制を推奨していた時代があったりする。
そんな宗教は、自分たちのそういった歴史は闇に葬って、現在一夫多妻の宗教をさも悪であるかのように批判している。アホらしい……。
とかく価値観ってのは外からすり込まれ易いものだ……。
情報の取捨選択も含めて、自分自身でしっかりと見極めることが肝要だ。
己自身の頭でちゃんとしっかり考えていかなければならないということを改めて感じさせてくれたな。この子が仲間になってくれてよかった。
「ということで、私も立候補します!」
「へっ?何に?」
「もちろん、シンさんのお嫁さんにですよ!
お買い得ですよ~。私はまだピチピチの処女なんですからね!」
この子が仲間になってくれてよかった……んだよな?
いずれにせよ、この子が登場したお陰で、憑き物が落ちたような心持ちになったことだけは確かだ。ハーレムを形成することに迷いがなくなったような気がした。
「ははは。その気持ちは嬉しいぜ。まぁ、ボチボチと知り合っていこうか」
「はい!」
◇◇◇◇◇◆◇
「シオリ様、お耳に入れたき儀がございます」
「ギンですか?どうしました。
ここにいるのは上様と管理助手だけですから、構いません。話しなさい」
「はっ!実は……」
ギンというのはシオリの配下の者であるとのことだ。
忍び部隊ムンライトに所属し、その隊長を務めているらしい。
つまり、"ギン"が隊長で、"エン"が副隊長である。
忍び部隊ムンライトには、ギンとエンの下に100名ほどの忍者が所属しているとのことで、この惑星の各地に散らばり諜報活動を行っているとのことだった。
「シオン神聖国で、勇者が認定され、そのパーティーが結成されました。
勇者パーティーの討伐対象は……上様です。
彼女等の準備が整い次第、神国に攻め込んでくる可能性があります。
今はまだレベルアップに励んでいるようですので、すぐに攻め込んでくることはないと思われます」
「彼女等?ということは勇者は女性なのか?」
「はい。勇者に認定されたのは、"ユリコ"という名の女性です」
胸がギュッと締め付けられる……。
勇者の名前を聞いて、同名の、最愛の人だった女性の顔が頭を過る……。
「それで……パーティーを結成したのはいつのことだ?」
「3日前のことでございます」
「情報を掴むのに3日も掛かったのか?
それとも情報の伝達に3日掛かったのか?」
「情報がこの中央神殿に伝わるまでに3日を要しました」
つまり、情報自体は勇者が認定されると同時に掴んだのに、それを神都へと伝達するために3日を要したということらしい。
ギン自身が、シオン神聖国からレッサードラゴンを使って空路、この中央神殿を目指して、可能な限り急いで、文字通り飛んできたのだが、それでも3日掛かったということだった。このタイムラグはマズい。
「エンもいるのか?」
「ははっ!ここにおります」
「ギン、エン、いつもありがとうな。お前さんたちの働きがあるからこそ俺たちは無用なリスクを回避できている。本当に助かっている」
「「もったいなきお言葉……痛み入ります」」
「さっき初めて知ったのだが、お前さんたちには転移能力が無いんだな?」
「はい。申し訳ありません。修行が足りず、習得できておりません」
「いや、これは俺のミスだ。苦労をかけちまったな……。すまん。
それで、お前さんたち二人には"転移"能力を授けようと思う」
「「はっ!ありがたき幸せに存じます!」」
「今すぐに転移能力を付与するから、もう少し側に来てくれないか?
覆面を外して顔をよく見せてくれ」
「「はっ!」」
別に近くに来てもらわなくてもよかったのだが、ちょっと彼女たちがどんな顔をしているのかを見てみたくなったのだ。……二人ともすごい美人だ!
二人には、転移能力を授ける。自身と触れているモノを転移させる能力だ。
ついでに、俺のフィアンセたちと同じ加護も授けよう……。
「転移能力の他にも色々と加護を付与するから、ベッドに横になってくれ。
加護を有効にする際に、一瞬だけだが、意識が飛ぶからな」
「「はっ!失礼します!」」
彼女たちはベッドに横になった。
神子たちと同じ加護を付与するのはこれで4回目かな?
もう慣れたものである。すぐに作業は終わった。
「それじゃ、一瞬だけ意識が飛ぶからな。苦痛などはないから安心しろ。
……リブート!」
二人は一瞬意識を失うがすぐに正気に戻る。
「これでお前さんたちは、好きな場所へ転移できるようになったぞ!」
「「ありがとうございます!」」
「それに、全攻撃属性に対する耐性や、攻撃神術、神眼、修復神術を使えるようにしたし、STRもオーガ並みに強化した」
「「はっ!ありがとうございます!」
「シオリちゃん、後でどんな加護が付与されたのか説明してやってくれ」
「はい。承知しました」
「ギン!、エン!大変な仕事だが、がんばってくれ!
……だが、くれぐれも無理はするなよ。約束だぞ。
自分たちの命を守ることを第一に考えて行動しなきゃだめだぞ。いいな!」
「「はっ!」」
「ところで……付かぬ事を聞くが、お前さんたちの仲間に"風車の弥七"という名の忍びはいるか?」
「"かざぐるまのやしち"?でございますか?
残念ながら、そういった名の忍びはおりませんが……」
「そうか、では"風の鬼若"とか"柘植の飛猿"という名のヤツはどうだ?いるか?」
「いえ、残念ながら……」
二人は不思議そうな顔をしている。
「いや……何でも無い、気にするな」
これで取り敢えず俺の方の用件は済んだな……。
「シオリちゃん、後のことは任せた」
「はい。それでは、ギン、エン、仕事に戻りなさい。
それと加護の説明をしますから、後で私の部屋に来て下さい」
「「はっ!承知しました。では、失礼します!」」
二人は掻き消えるように姿を消した。
「シンさんったら……時代劇の見過ぎですよぉ~。
おギンさんに、おエンさん、風車の弥七までいたら、もう『水戸○門』じゃないですかぁ?ふふふ」
「さゆりさんは、シンさんが尋ねた人たちが誰なのか知っているのですか?」
シオリが、自分が知らないことを、さゆりが知っていることにショックを受けているようだ。表情が暗い。
「はい。シンさんがお尋ねになった名前は、日本で昔、テレビ放映されていた時代劇に出てくる、忍者の名前なのです」
「そうなのですか……」
「その時代劇には"おギンさん"、"おエンさん"という女忍者も出てくるのです。
それで、シンさんは、ひょっとしたらこの世界にも"風車の弥七"という名の忍者がいるんじゃないかと思われたんだと思います。ね?シンさん」
「ははは……バレたか。その通りだ。さすがは日本の担当者だなぁ」
「……」
ん?シオリが悲しそうな顔をしている。
疎外感を抱いているのか?マズいな。
「ごめんな、シオリちゃん、日本の話はよく分かんねぇよな?
それでな……よかったら今度、俺が日本人としてどう生きてきたかの話を聞いてくんねぇかなぁ? 二人だけでゆっくりとお茶でもしながらさぁ……どうだろう?
お前さんにだけは、是非知っておいて欲しいんだよ……」
「はい。喜んで……」
ふぅ……シオリの表情が少し和らいだ。よかった。
大切なシオリには悲しい顔をさせたくない。今後は気をつけよう……。




