バイナモ平原の戦い4
諸君‼
私は帰ってきた‼
(*゜∀゜)フハハハハハハハハハハハハ‼
10月25日午前5時30分。エルー・アスパニ皇国軍は遂に移動を開始した。
その総勢四万にも登る軍隊は重装歩兵の鎧の金属音、馬の足音や地竜の泣き声などと共に平原を進んで行った。
空には飛龍の大群が居り、その後ろからは後光がさしていた。
不安になった兵士達が空を見上げると、飛竜と竜騎兵は強大で自信に満ち溢れた姿に見え、その姿に地上を行進する彼等は安心と自信を得た。
そう、空を見上げた彼等は立派な皇国の兵士であり、この戦は蛮族平定の為の聖戦であると、弱腰の蛮族などに負ける訳がないという事を再確認したのだ。
〜自衛隊派遣旅団陣地〜
「たった今、敵武装勢力が進軍しだしたそうです」
部下からその報告を聞いた高角陸将補は苦虫を噛みつぶした様な顔をして命じた。
「分かった。一応こちらから、降伏勧告用のヘリを飛ばして置け。最悪の場合に備えて弾着観測ができるのをな……」
部下は返事をして、テントから出ていった。それを見ていた高角陸将補は、側にいた別の部下にこう命じた。
「ステフノ公爵に指示を仰いでくれ……もし事が起きた場合、我々は本当に攻撃を開始するのか?と」
〜エルー・アスパニ皇国軍〜
空には緑色の甲虫が飛んでいた。その甲虫には人が乗って居るらしく、投降をする様に言っている。
しかし、聖戦を完遂する為に皇国軍の将兵の中で其の勧告に耳を貸す者は居なかった。否、誰もがこの聖戦の信じ、其れが出来ると思っていたからこそ、誰もが勧告に耳を貸さなかったのだ。出発前に司令官が言っていた切り札もある上に援軍もあるという事も其れを助長させていた。
なおかつ、飛竜に匹敵するであろう大きさの甲虫に乗って降伏をする様頼みに来るなど彼等にとって嘲笑の対象にしかならなかった。
そうであるから、甲虫に対して1体の飛竜が火炎を吹き掛けても、誰も止めなかった。
そして、其の甲虫が直ぐに逃げ出した事もあり彼等には油断と慢心ができたのだった。
〜自衛隊グルバニア派遣旅団〜
「投降を勧告しに行ったヘリコプターから攻撃を受けたとの事であり、降伏勧告にも従わなかった様です」
「そうか……。ステフノ公爵からは?」
「攻撃を開始してくれとのことです。」
部下から指示を受け取った高角陸将補はこれから人間に対して攻撃をするという事を思い起こした。彼は少し考え込むように間を取ったかと思うと、決心したかの様に
「事前砲撃か……。分かった。では、特科隊砲撃開始‼」
大きな声で命じた。この命令を受けてヘリコプターから大まかな皇国軍の位置を知らせてもらった特科隊がTOT射撃(同時弾着射撃)を行った。
〜エルー・アスパニ皇国軍〜
隊列を組み、横隊での行進をしていた皇国軍は何重にも重なった炸裂音が鳴ったと同時に地獄と化した。
横隊を組んでいたが為に、砲撃による被害は甚大であった。
何が起こっているか理解出来ない兵士がパニックになる隣で他の兵士の四肢が土煙と共に吹き飛び、砲弾の破片に穿たれ、馬は音に驚き制御できず、地竜は行動不能になった。
だが、彼らにとって幸いな事にこの地獄は長くは続か無かった。
〜リクハルド ミエトハール城〜
「その攻撃を停止してくれ。直接、我々が攻撃に打って出るのだからな」
ロウス・ステフノ公爵はミエトハール城内に仮設されたムセンキとやらを使って自衛隊に"頼んで"いた。
自衛隊はグルバニア王国軍に依頼されて協力しているという事になっているのだが、グルバニア王国軍司令官に自衛隊司令官は協力している時は従うという事が協定で定められていた為に事実上の命令であった。
数分前、ジエイタイが攻撃を開始しすると聞いて城の望楼に登り、どの様に攻撃するのかを舶来品の携帯式魔導望遠鏡で見ていたのだが、そこには有り得ない光景が広がっていた。
あの大軍が壊滅状態になりかけていたのだ。これを見てステフノは籠城するという考えを改めた。攻勢に出ようと。
彼は彼の名声を更に高める為に大軍に殲滅した英雄になろうとしたのだ。
「もう一度言おう。その攻撃、ジゼンホウゲキとか言ったか?それを停止してくれ。大丈夫だ。何の問題も無い」
彼はそう言うとムセンキを置き、通話を終えた。
彼は鎧兜に身を包み、軍の出撃場所に赴いた。自身の勝利を確信しながら。
〜バイナモ平原 上空〜
魔導気球の編隊が空を飛んでいた。
魔導気球とはいってもそんなに凄い物ではなく、水素ガスを詰めた武装気球を魔導士の魔術で動かしているだけである。
「下はボロボロ、出撃時の半数にも満たぬ数ですな」
下を覗いた観測手がそう言うのを聞いてボルツマン大尉は苛つきが抑えられなくなった。
「クソッ!あの野蛮人共!人の話を聞かずに進むからこうなるんだ!何が『私の判断は正しい』だ!バカ野郎!」
罵詈雑言を吐く機長に残りの4人はため息をついた。
「まあ良い、風向きと高度、距離的にここらで塩素の散布をするぞ。下は想定外とはいえ、散布する事には変わり無いからな」
怒りを沈めたボルツマン大尉がそう言って信号拳銃を胸元から取り出し、斜め上に発射した。
さ赤色の煙が広がると共に、各気球の手の空いている人員が気球側面につけてあるボンベのバルブを緩め始めた。緩めたボンベからは黄色のガスが漏れ出す様に出てきていた。
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