入隊
9話です。
今回は少し短いと思います。
よろしくお願いいたします。
透哉は疲れきっていた。
昨日のグレゴリオファミリー拘束戦……それは透哉が初めてマジックギミックスと接触した事件であり、同時に透哉が初めて戦場に立った事件だ。
急に戦場に立たされたのだから、疲れるのも仕方ないだろう。
「はあ……。昨日はすぐ寝ちまって新聞の記事は全然できてないし……最悪だ……。まあ、先輩がそれをみこして発行の準備とかも全部できてるし、俺の記事を後から入れるだけで完成だからもうちょい後でもいいって言ってくれてよかったぜ。まあそのかわり最高の記事を作らなきゃ殴るって言われたけど……。まあ帰ったらすぐやるか!」
透哉は自分を奮い立たせ、十分なやる気と共に帰宅した。と、そこで、携帯の着信音が流れた。
「ん? 誰からだ?」
透哉はかばんから自分の携帯を取り出し、番号を見た。
「080-HOAW-SAO1670……?」
透哉はその番号に少し見覚えがあった。だが、だれの電話番号かは覚えていなかった。
透哉の時代では電話番号にアルファベットが使われている。なぜそうなのかは明言されてはいないが、ネットなどでは電話をかける際に電話線が混線しないためのものだとか着信の正確化だと言われている。
透哉はとりあえず携帯の「応答」と表示されている部分をタップした。
「もしもし」
「あ、もしもし、透哉?」
電話の相手はハツキだった。
「ああ、ハツキか。どうしたんだ?」
「いやー、ちょっと今日透哉にもマジックギミックスの集会に参加してもらいたいんだけど、だめかな?」
「俺が? なんで?」
透哉は少し不思議に思った。なぜ一度マジックギミックスの作戦を横から見てただけなのに集会に参加するなんてことになるのだろう、と。
「なんでって……もちろんみんなに紹介するためだよ」
「え?」
透哉は戸惑った。なぜマジックギミックスのメンバーに俺のことを紹介する必要があるのだろうか、そう思った透哉は、そこでその紹介するという言葉が示す意味を察した。
「な、なあ、ハツキ? もしかしてさ、マジックギミックスに新メンバーが入ったりするのか?」
透哉は客観的に言った。「新メンバー」の正体が誰であるかわかってないように、あくまで客観的に。
「何言ってるんだよ。新メンバーは君じゃないか」
だが客観的に言っても無駄であった。
ハツキは普通に透哉に現実をつきつけた。透哉の思うことを全く察していないように、あくまで普通に。
「やっぱりそう来ますか……。うーん……」
透哉は考えた。ここでイエスと言ってよいのだろうか、と。
(まあ、今日はまだ時間あるし、締め切りまであと3日あるから、いいか)
透哉はそう思ってハツキの誘いと呼べるかどうかわからない強引な誘いをしぶしぶ承諾し、ハツキの家に行くことにした。
しぶしぶ……というのも、透哉が本当は早く記事を書きたいが、どうせハツキは俺の家知ってるんだからここで断っても絶対家まで来てインターホンを連打するだろう……と思ったからだ。
透哉は電話を切り、すぐに出かける準備をした。
その間に、マジックギミックスの集会の集合場所……もとい、ハツキの家の位置情報が送られてきた。
「そうだ、集合場所聞いてなかったんだ……。ハツキのやつ、しっかりしてやがるぜ……」
多分しっかりしてるのはこういうときだけだろうなどというハツキへの評価を全く上げようとしない思考を残し、携帯に送られてきた位置情報を見た。
「どうせまた超遠かったりすんじゃねーのか……」
透哉はそれを確認し、すぐにハツキの家にむかった。
「……って……」
透哉はハツキの家につき、それまでに思っていたことをハツキのマンションの前で叫んだ。
「俺の家の向かいのマンションじゃねーかあああぁぁぁ! ……あ、スイマセン……」
叫んだはいいが、今マンションに入っていった人にドン引きされてしまい、謝った。
「く……予想よりも超近かったじゃねーか……なんでこんな近いのに向かう途中の場面を省略して1行あけたんだ……」
そんなメタいことを言いながら透哉はハツキの部屋、305号室へとむかった。
ピンポーン、とインターホンを鳴らすと、2秒ほど間があって、部屋からどたどたと忙しそうに走る音が聞こえてきた。
ガチャ、とドアが開き、出てきたのはハツキ……ではなく、小さな色白のかわいい金髪の女の子だった。年にして8歳ぐらいだろうか。
ハツキのやつ、まさか全然違う位置情報を送って俺をロリコンにしようと企んでいやがるのか? と透哉は思ったが、そうではなかったらしく、
「あ、ハツキが言ってた方ですね? お名前は確か……透哉さん、でしたか? どうぞ、お上がり下さい」
幼女はそう言って俺に家にあがるようすすめた。
「あ、これはどうもご丁寧に……」
幼女の相手に慣れていない透哉は少しぎこちない口調でそう言った。と、そこで……
「あ、透哉。やっと来たのか。おそいぞー」
ハツキが廊下の奥のリビングと思われる部屋から出てきて言った。
「さ、上がって。みんな待ってるから」
ハツキはそう言って透哉をリビングに行かせようとした。が、その前に透哉は少し気になったことを聞いた。
「お、おい、ちょっと待て。この子もマジックギミックスのメンバーなのか?」
透哉は自分の目の前にいる幼女を指して言った。
「ああ、アイはメンバーでもあってメンバーじゃない、みたいなところかな」
「なんだその小説みたいな言い回しは」
「まあ詳しいことはアイから聞いてくれ」
透哉はそのアイ、と呼ばれる幼女に向き直り、じっと見た。
戦えるとは思えない。まず感じた印象はそんな感じだった。
「あ、えっと、アロンダイト、って言います。みんなからは略されてアイ、って呼ばれてます。よろしくお願いします」
あ、これはどうもご丁寧に、と透哉はまたぎこちない感じでそう言った。
「まあそういうこと。普段はアイは実体化を解いてるから見えないけど、たいてい僕の周りをついて歩いてるんだ」
(実体化……? どこかのラノベで人間にキツネの耳と尾が生えた式神がそんなこと言ってたが、この子も式神かなにかだろうか)
透哉はそう思ったが、何かを言い出す前にハツキが、とりあえずこっちこっち、と言ってリビングに透哉を連れて行った。
「お、おい。突然ひっぱんなって……」
「まあまあ。えーコホン。みんな、紹介するよ。今日からマジックギミックスの新しいメンバーになる、鷺村透哉君だ。いえーい」
何人かからはぱちぱち、と拍手があり、
「おおーいい顔してやがるぜ」
とか、
「よろしくねー」
とかの声があったが、ある4人は全く違う反応をしていた。
「え……
透哉?」
透哉?」
先輩?」
鷺村さん?」
4人はそれぞれ透哉の名前、(1人は先輩、と言ってるが)鷺村透哉という名前を聞いて驚き、さらに透哉の顔を見てまた驚いた。
そして、透哉もまた驚いた。その4人を見て。
そこには変態のクラスメイトと、美人のクラスメイトと、部活の後輩と、新聞部の新聞を配達してくれるバイトの顔があった。
今回は終わり方に自信ありですw。
感想や文章の指摘などがあれば送っていただけると嬉しいです。
また、評価もつけていただけると嬉しいです。
次の水曜日から、水、金の投稿を0時2分ではなく、1時2分に変更しようと思います。まことに勝手ながら投稿時間を変更することをご了承ください。
今後とも「マジックギミックス」と「神神神」をよろしくお願いいたします。