ツァギール
お待たせいたしました。
17話です。
今回は少し長いです。
よろしくお願いします。
「長官! 殲滅完了いたしました!」
安堵と緊張が混じった表情を浮かべたロシア軍隊員が後方にいた長官と呼ばれる男、カメルダ・ディアラルに駆け寄り、報告した。
「よし、ご苦労であった。これより防衛ラインを維持しつつ正面から敵の拠点に突っ込む。事前に決められた特攻班は敵の拠点へ突撃、残る防衛班は10,11時の方向からの敵の攻撃に備え、防衛せよ。繰り返す、特攻班は突撃、防衛班は陣を死守せよ!」
カメルダは胸にある無線機を口元に持っていき、全隊員に作戦内容を伝えた。
「よし、後は拠点をたたくのみ……。やっと説教ができるな、ユーリ……」
カメルダは自分の息子の顔を思い出しつつ軍用車に乗り、特攻班について行った。
-10分後- 革命軍拠点
「入り口に敵影無し! 突入します!」
ロシア軍隊員の1人がそう叫んで革命軍拠点への階段を下り始めると、それに続いて特攻班のメンバーが次々と階段を下りていった。
カメルダもそれに続いて階段を下り、階段の先にあった道を進んでいった。
しばらく道を進むと床面積100㎡ほどの空間に到着し、カメルダ達はそこに至るまで、1回も会敵しなかったのを不思議に思い、同時にあることを考えていた。
(まさか、あの2人が敵を全て倒していったというのか……)
少し信じ難いという様子でカメルダは思考をめぐらせた。
「扉が開いている……この先に誰かが入っていったということか。……! これは……」
カメルダが目にしたのは扉の先の道に倒れていた10人ほどの革命軍隊員だった。そしてその奥からは岩が崩れる音や、空気が振動しているような音が聞こえてきた。
「この先か」
カメルダはそう言って奥へ進もうとした。
「長官! 1人では危険です!」
特攻班メンバーの1人がカメルダにそう言った。が、
「いや、1人で行かせてくれ。君たちはこの扉から先に敵を通さないよう守っておいてくれ。拠点周辺の残党の掃討と、地底湖の入り口にあったがれきの除去も頼む。……命令だ」
「……了解しました」
カメルダは奥へ進むのを再開した。
ロシア軍特攻班が革命軍拠点に到着する5分前、透哉は革命軍拠点の洞窟内にあった地底湖のようなところで謎の男と対峙していた。
「あんた、誰だ」
透哉は率直に訊いた。
その問いに男はこう答えた。
「太陽神ラー……とでも言っておこうかな」
「またエジプト神か……もう神様ネタはうんざりだよ」
「ははは、まあ冗談だ。そう怒るな。君の名前を先に聞こうか」
男は笑いながらそう言った。
「俺は鷺村透哉だ。で、あんたは?」
「俺は……ツァギールだ。よろしく」
金髪のその男はなぜか名乗るのを少し躊躇して言った。
「フルネームは?」
透哉は警戒心を持ちつつ聞いた。
「ツァ・ギールだ」
「……ふざけた回答は小説的には嬉しいけど、俺的には嫌かな」
「おお、副主人公君が珍しくメタ発言だね。まあ、フルネームはそのうちわかるさ」
ツァギール、と名乗るその男は、洋画の登場人物のように透哉の方を向きながら、そして透哉の横を歩きながら手の動きを添えて話していた。
透哉はそんなツァギールの少しおどけたような質問への回答にあきれながらも、最後の質問をした。
「あんたは革命軍のメンバーなのか?」
「……そうだと言ったら?」
「あんたを倒してユーリがこの地底湖に設置しているはずの毒を流す装置のある場所を聞き出す」
透哉は魔術補助演算用デバイスをツァギールに向けた。
「まあ、メンバーってわけじゃないけど……戦いは避けられないみたいだな。どうやらユーリの計画のこともばれちまってるみたいだし」
ツァギールは少し険しい表情になって言った。
(こいつ……多分強い……。けど、この魔術補助演算用デバイスがあれば……少しだけど俺でも魔術を使える……)
透哉はより強く魔術補助演算用デバイスを握った。
「増援に邪魔されるのもあれだし、入り口は塞いでおくか」
ツァギールはそう言って指をならした。すると、透哉が入ってきた地底湖への入り口付近の天井が崩れ、完全に入り口の穴が塞がってしまった。
(な! 天井をあんな簡単に……。こいつ、魔術師か)
透哉が驚くと、それを悟ったかのようにツァギールが口を開いた。
「大丈夫。ここの天井は厚い。ちょっと崩れたところで洞窟崩壊にはならないさ……。じゃあ、行くぜ!」
ツァギールはそう叫ぶと透哉の方へ全速力で走ってきた。
(! 回避できない……!)
透哉はそう理解すると、魔術補助演算用デバイスを自分の方に向け、引き金を引いた。
すると、デバイスから発射されたレーザーが透哉に当たる前に散開し、透哉を包み込んだ。
バリア--先ほど涼が敵に銃身で殴られそうになっていた時にその攻撃をはじいた、という実績付きの防壁だ。
「おらぁ!」
ツァギールは何の工夫をすることもなく、ただ単純に、真正面から右ストレートを透哉の腹めがけて放った。
(無駄だ……このバリアは銃で殴っても壊れなかったもの……そう簡単には……!)
透哉はフラグをたててしまった。
ツァギールの拳はバリアに接触し、そのままはじかれると思われたが、そうはならなかった。弾かれた、というより、砕かれたのはバリアの方だった。
次の瞬間、透哉の全身にとんでもない衝撃が走った。まるでビルの3階ぐらいからコンクリートの塊を落とされ、それが腹に当たったような、そんな感覚がした。
「ぐ、ああぁぁ!」
透哉は20mほど吹き飛ばされ、もうあと3mほどで地底湖に落ちる、というところまできていた。
対してツァギールはバリアがあったなんて気づいていないような様子だった。
(うう……なんだ今の……銃で殴るよりも強いのか……。作者の表現が下手くそだったからかはわからんが、なんとか意識は飛ばなかったな……。しかし、バリアで威力を落としていてもこれって……あいつ、怪物かよ……)
「クリティカルヒットだな。もう動けないか。なあ、鷺村透哉君。君はMGに最近入ったメンバーだろ?」
MG、とは、恐らくマジックギミックスのことだろう。
「あ、ああ。そう……だが?」
衝撃による全身の激痛に耐えながら透哉は答えた。
「やっぱりな。南雲涼と一緒にいるから、MGだと思ってたぜ」
(! 本名を知っているのか)
マジックギミックスでは作戦などの時、コードネームで呼び合うこととなっている。たとえば初希ならライト、涼ならアサルトだ。
なのに本名を知っている、ということは、かなりの情報通か、もしくはマジックギミックスの後ろにある日本政府の関係者か、というような可能性が出てくる。
「まあ、そんなことはどうでもいい。今は装置の破壊さえ防げれば、な」
ツァギールは透哉に背を向け、ちらっと自分の右にある壁を見て言った。
(壁……? ……そこにあるのか)
「なあ、ツァギールさん」
透哉は賭けにでることにした。これで透哉の読みがはずれていればここで透哉はとどめをさされる。はずれていなければ……もしかしたら……
「ん? なんだ、透哉君」
「敵に背を向けるなって、教わったことはないか!?」
「!」
透哉は魔術補助演算用デバイスをツァギールに向け、引き金を引いた。デバイスの先に魔法陣が発生する。そして魔法陣からレーザーが射出される。
だが、ツァギールは振り向きざまにレーザーをはじいた。
その隙に透哉は立ち上がり、地底湖に落ちないようにツァギールの後ろに回り込んだ。
「く、完全に動きを封じたと思ったが、効いてなかったのか……」
「残念だったな。お前は気づいてなかったかもしれないが、あの攻撃の前に俺はバリアを張っていたんだ」
透哉は少し誇らしげに言った。
それを聞いてツァギールは自分の後ろに回り込んだ透哉の方へ再び向き直り、全速力で駆け出した。
「次は、仕留める!」
透哉はデバイスの先をツァギール、ではなく、ツァギールから少し左の方向へ向け、引き金を引いた。
「はは、どこを狙っている!」
完全に透哉が照準ミスをしたと思い込んでいるツァギールに目もくれずに、透哉はまっすぐデバイスの向く方を見つめていた。
(こいつ、どこを見ている……まさか!)
ツァギールはようやく気付いた。先ほどの射撃……ツァギールを狙ったのではない、岩に隠れている感染毒排出装置を狙ったのだと。
「く……!」
ツァギールは装置を守ろうとはせず、透哉への攻撃を再開した。いや、その攻撃で透哉の射撃を防ごうとしているのだ。
(この1発さえ当てれば!)
透哉はツァギールの攻撃が自分の体と接触するほんの数瞬前、引き金を引いた。魔法陣が発生し、レーザーが発射される。
壊した、透哉がそう思った瞬間、ツァギールの拳が透哉の腹にめり込んだ。
透哉は吹っ飛び、壁に激突して意識を失った。
しばらく静寂があり、数十秒後、透哉の前に来たツァギールが口を開いた。
「……計画破綻、か。MGにはなかなかいい筋の新人が入ったな。報告せねば。装置が壊されたのだから、こいつを殺す必要もないだろう。記憶は消させてもらうが」
そう言ってツァギールは指をならすと、再び歩き出し、地底湖のすぐ前で足を止めた。
「さて、と。崩れたがれきを除去して増援が来たら厄介だからな。こっから帰るか」
そう言ってツァギールは地底湖に飛び込んだ。
読んでくださりありがとうございました。
17話、遅れた投稿となりました。本当にすみません。
今回は2章終わった? と思わせるような終わり方でしたが、まだ2章、つづきます。涼とユーリの戦闘があるので。
透哉君は新人のくせになかなかいい動きしやがりますね。感心しますよ(笑)。
最近Fate/Zeroで小説の勉強しています。もっと上手く小説が書けるようになりたいです。
感想や文章の指摘などがあれば送っていただけると嬉しいです。
評価などもよろしければつけていただくと頑張れます。
これからもよろしくお願いします。




