暴走裂急(ボーストレイン)
「本日、遥南西の方向に暴走裂急を観測した。心苦しいが、本校からも魔術師を派遣しようと考えた。誰かいないか?いないなら指定する。質問あるなら言え」
ボーストレイン…これ多分ダメかも…個体数は?!
「先生!個体数はどのくらいでしょうか?」
「前回を上回り、1472万体だ。今のところな」
「では私が行きます。」
「俺も…」
「レオンは、ちょっと待ってて」
「シャルナ1人はダメだろ?」
「ちょっとごめんね」
私は少し微笑みながら手の震えが少しずつ強くなってきて微かに震える声で言うレオンの言葉を遮り、眉の間に人差し指をトンと置いて、秒単位で精神干渉魔術の記憶削除&神経干渉魔術の気絶を発動させる。
ふらっと倒れるレオン。
これでいいの。これで。少し青ざめてたしこれ以上トラウマを抉りたくない。おやすみレオン。ボーストレインのボの発音の時点で眠らせておけば良かったかも…とりあえず運んでここから離れさせなきゃ
「ヤミル、ちょっとレオンを私の部屋に運んでくれる?」
「承知致しました」
そう言ってレオンをおぶって教室を出ていく。
「なら、俺が行きます。いいよな?シャルナ」
「お願いルイト。私程の魔術師は欲しい。」
「私の出席は確認するの?シャルナ」
「え?ミミルは今回お留守番。ラファエル、ついてきてくれるよね?」
「もちろんです」
「ということでこのメンバーで行こうと思うのですが、良いですか?先生」
「十分だ…」
「ありがとうございます。しばらくレオンの方は欠席とさせていただきます。」
「なぜだ?」
少し先生の顔を睨み、声を僅かに荒らげて私は言う。
「それくらい察して下さい、先生。顔が青ざめていて、声が震え、手が震えている理由。前回のボーストレインで半分以上群れを倒したのは誰の父親で誰の父親がそこでこの世を去ったと思います?レオンのです。わずか8歳で両親を亡くしたんですよ?最後の親である父親が戦死。どれほど悲しいことか分かります?亡くした後、どれだけひっそりと、絶望したように私に隠れて泣いていたか。尊敬する、レオンが目指す剣士は、レオンの父親です。想像してみてください。先生が8歳の時、両親を完全に失い、尊敬していた父親を亡くすという辛い現実を。8歳の子が背負う現実じゃないのは確かです。私を除外して」
「わかったわかった。許可しよう」
「ありがとうございます。」
第30話まで読んでくださり、ありがとうございます。
今回は、シャルナの“強さ”と“優しさ”がどちらもはっきり見える回になりました。
ボーストレインという言葉を聞いた瞬間に震えだしたレオン。
その姿を見て、シャルナが迷わず魔術を発動したのは、冷たい判断ではなく、
「これ以上レオンを傷つけたくない」という想いからでした。
レオンの父が命を落としたあの出来事は、レオンにとって今も癒えない傷です。
だからこそ、シャルナは“戦場”からレオンを遠ざけようとする。
その選択が正しいかどうかは、読む人によって違うかもしれません。でも、シャルナにとっては
「レオンを守る」
それが何よりも大事なんです。
そして、今回のシャルナの言葉や行動には、もうひとつの意味が隠れています。
レオンをただ眠らせただけじゃない。
このあとシャルナは、
“ある場所”へレオンを避難させるつもりでいます。
それは、日常の風景をそのまま写した安全な空間。
レオンが傷つかず、恐怖を思い出さず、ただ静かに過ごせるように作られた、空間です。
シャルナがどんな想いでその選択をするのか、
そしてレオンはその後どう感じるのか。
次回以降、2人の関係がまた少し動きます。
よかったら、これからも見守ってください。




