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いもうと無双は異世界転生と共に〜38才こどおじの異世界英雄譚〜  作者: 蒼い月
竜のねぐら

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手土産と土産話と

「いっちゃん、あっちゃん、みっちゃん、さーちゃん、皆おかえり〜。お土産な~に~?」


 ラグさんの家に入るとワカナの元気な声が聞こえてくる。


「遊びに行ってたわけじゃないんだからお土産なんてあるわけないでしょ!!…まあ無いわけではないけど。バカ兄が珍しく気をきかせて買ってきたんけど、味は保証しないわよ。」


 ミカヅキはそう言いながらラグさんやダグさん、子どもたち、ナナセ、そして最後にワカナに町で買ってきた食べ物…木の実をひいた粉にハチミツを混ぜて焼いたお菓子をわたす。

 正直美味しいというレベルではないが、ルーフェに聞いたところ砂糖などは辺境の町ではまだまだ高級品で、砂糖がはいったお菓子よりかはこういった安価な甘味が人気だということで買ってみたのだ。


 ちなみにミカヅキはオレが買ったことにしてくれているが、あの騒動でアツコ以外に何も買えなかったオレのため、自分が買ったお土産をオレの手柄にしてくれているのだ。

 こうも妹の気が利くと、ますます自分の手際の悪さが悲しくなってくるが、いまはミカヅキの優しさに甘えよう。


「美味しい!!なにこれ、凄い!!お母さんお父さんも早く食べてみて。」


 子ども達の想像以上の喜びよう。甘味に関しては亜人の村では存在自体が知られていないのだろう。ラグさんダグさんもその味に驚きの声を上げる。

 亜人への手土産は甘味、これは鉄則として覚えておこう。


「兄さん、皆おかえりなさい。依頼はどうでしたか?」

「とりあえずは成功。詳しくは後から話すわ。バカ兄にメッセージで内容だけ伝えればいいって言ったのに、皆集まったところでワイワイ話した方が楽しいからって聞かなかったの。罰として全部説明しなさい。」


 ミカヅキはそう言うが、冒険譚と言えば最高の酒のつまみだ。特に娯楽が少ないこの時代、ラグさんはじめ皆こういう土産話を楽しみにしてくれているに違いない。まあ今回もオレはあまりカッコいいところを見せられなかったが、その辺りは上手く話すとしよう。

 やがて夕食の時間となり、オレは今回の顛末を少しオレの活躍を盛りつつ語った。


「そんな大きいトロールが大森林にいたのね…知らなかったわ。」


 ラグさんが神妙な面持ちで言う。

 人間は『竜のねぐらの亜人』といっしょくたに考えるが、ラグさんによると亜人同士の交流は少なく、特にトロールのような強大な力を持つ種族は他の亜人から恐れられているらしい。

 トロールの中には他の亜人を食糧とする者もあり、オークはその中でも被害に遭うことが多いということで、ラグさんの反応は最もなものだろう。


 モデルが豚だからやっぱりオークも美味しいのかな………いやいや、こんなこと考えるのはラグさん達に失礼か。


「でも、どんな形であってもこの大森林を守ろうとする思いは同じみたいで安心したわ。ただそのトロール達が竜のねぐらを守ってるってことなら、私達もあまり森の奥には入らないようにしたほうがいいわね。」


 たしかに邪竜の位置を特定出来ない以上深入りは禁物だろう。その辺り亜人の間で位置を正確に共有できるといいんだろうけどなぁ…。


「兄さん達が依頼をこなしている間、私達もラグさんと一緒に森の亜人達と交流を深めていたんです。」

「そうそう、白寿草って珍しい薬草持っていったら凄い歓迎されたよ。あと色んな種族が一緒に来たのが珍しかったみたい。私は羽も輪っかもしまってたけど。」


 ワカナがサラッと『羽と輪っか』という自分の正体に関する重要なワードを口にするが、ラグさん達が驚く様子がない…多分天使の姿をもう見せたあとなんだろう。

 自由奔放というか迂闊というか………ただ、このおおらかさがあるからこそ、他種族にも信頼されるんだろうな。


 ラグさん達にはお世話になっているし、オレも隠し事はなるべくしないようにしよう。


「オークだけでいったら警戒されてたかもだけど、人間にウェアウルフ、ウェアキャットの集団ってなったら警戒よりも先に驚きがくるわよね。なんなんだこいつ等はってね。」


 ラグさんが笑い、オレ達も笑った。

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