宴の終わり
「囲め、囲んで潰してしまえ!!」
頭目を助けるべく他のトロール達がアツコを取り囲み、一斉に得物を叩き込む。
「わざわざそっちから来なくても私が出迎えに行ったのに…死に急ぎたい年頃なのかしら。」
トロール達の武器はアツコを捉えることは出来ず、むなしく地表を砕く。
そしてアツコの手にはもぎ取られた一本の足が力なくぶら下がっている。
「グワァ!!足が…貴様何をした!!」
「何もしてないわよ。邪魔だったから通りすがりに脚を払ったら取れただけ。いらないから返すわ、すぐにくっつくんでしょ、トロールなら。」
倒れているトロールにアツコは足を投げ渡す。
足の切断面をくっつけるとみるみる傷口が塞がっていく…これがトロールの再生能力か。
ミッドガルドでは時間経過による一定量のダメージ回復であったため、最序盤以降は脅威になるような能力ではなかったが、実際に目の当たりにすると、人であれば手術なしではどうにもならないような傷が一瞬で治っていくという光景の視覚的インパクトは凄まじいものがある。
この世界の冒険者にとっては恐ろしい能力だろう。
すぐに疲労が溜まり一度傷つけば回復魔法でもない限り戦闘中に治ることがない人間と、適当に傷口を繋ぎ合わせればものの数分で完全に元通りになるトロール。実力が均衡していれば勝敗は明確だ。
「人間、慈悲のつもりか。しかし、俺達は全員が死ぬまで戦い続ける。それがトロールの誇りだ。」
「なかなか興味深いわね。苦痛にもがき死に絶えるまで同じことが言えるのか興味が出てきたわ、相手してあげる。」
「望むところだ!!」
アツコが笑みを浮かべゆっくりと近づき、トロール達は武器を握りなおす。
「無駄だ、お前達武器をおけ。」
一触即発の空気のなか、トロールの頭目が静かに言う。
「ふざけるな、まだ戦える!!」
「勇猛と蛮勇は違う。我らが生涯棍棒を叩きつけようとも、彼らの皮膚ひとつ傷つける事はできないだろう…強者よ、我らの負けだ。好きにするが良い。」
トロールの頭目はそう言うと膝をつき、頭を下げ首を差し出す。
「随分潔いのね。」
「我らにとっては強者こそが正義。弱き者は強き者に打ち滅ぼされる。それが摂理だ。」
「そう、何か言い残すことはある?」
「…強き者よ。もし許されるのであれば、我を除いたトロール達を傘下に入れることは出来ないか。血の気は多いが役に立つはずだ。」
その言葉には言外に『自分の命と引き換えに』というニュアンスが込められている。
「嫌よ、トロールの頭目になるつもりはないわ。」
アツコはにべもなく申し出を拒否する。
「そうか、ならば言い残すことはない。」
「ただ…兄様が貴方と話したいことがあるというから、ここから先は兄様の慈悲にすがるのね。貴方達に強者に従うというルールがあるように、私達には兄様に従うという絶対のルールがあるのよ。」
トロール達とルーフェ、妹達の視線が一斉にオレに注がれる。
ここからが本番だ、今度こそ名誉挽回といこうじゃないか!!




