実力の証明
「実力を試させてもらうぜ!!」
ルーフェが一気に間合いを詰め、足を狙う。
これだけの身長差があれば上半身に有効打を加えるのは難しい。神話でも巨人崩しは足からが基本だ。
剣先が弧を描き足首を捉えようとした刹那、トロールの頭目は避けるどころか逆に前に進み、ルーフェを剣ごと蹴り飛ばした。
「かはっ!!」
ルーフェは吹き飛ばされ激しく木に打ちつけられ、トドメをさすべく敵が追撃を試みる。
「ストーンウォール!!」
オレは咄嗟に呪文を唱えると敵とルーフェの間に数十センチの厚みがある石壁が現れる。よしっ、これで時間を稼げる!!
「バカ兄にしてが良い判断。『アイスジャベリン』」
ミカヅキが続けざまに魔法を放つ。
周囲には肌が凍るほどの冷気が満ち、虚空から生まれた氷の槍が矢のように射出される。
「下らんっ!!」
そういうとトロールの頭目はその先端が肌に触れる前に棍棒で薙ぎ払い、そのままの勢いでミカヅキに襲いかかる。
しかし、凄まじい速度でミカヅキを捉えたかに見えた棍棒は、むなしく空を切った。
「ちょっとアツコ、少しは助けようとしなさいよ!!」
攻撃をいとも容易く避けたミカヅキは、アツコに文句を言う。
「別に手助けなんていらないでしょ。それに私は騎士道を守るたちなのよ。2人でやり合ってるのに横槍を入れるのは騎士道に反するわ。」
アツコは悠然と言い放つ。
「その余裕、後悔することになるぞ!!」
攻撃を避けられたトロールの頭目は、すぐさま体勢を立て直しオレに向かってくる………オレ!?
「お兄ちゃん頑張って~。」
サヤの応援…というか最早煽りにしか聞こえない声をうけ、オレは急いで身構える。
レベル差は歴然。
攻撃を喰らったとしてもダメージは入らないはず…多分!!
むしろここは兄としての威厳を見せるために堂々と肉体言語で応戦…いやダメ、やっぱり怖い!!
「テレポーテーショ…」
魔法で逃げようとした瞬間、脇になにか感触があり、オレはそのまま平行移動するように空間転移した。
「なんかダルマ落としで飛んでったみたい。」
オレの無様な姿にサヤがひとりウケている。
いや、今の当たったように見えてるけど、絶対先に魔法発動したからね?
実際ノーダメだし。全然当たってないからね?
「効かぬか…化け物め。」
トロールの頭目がオレを見て呟く。
まあ当たってないから効くわけがないんだけども、仮に当たってたとしてもノーダメなのは我ながら驚いている。
痛みも衝撃もなく、脇を服が触れた程度の感覚だったからな…当たってないから想像だけど。
「ではこちらも本気を出さねばなるまい…『強撃』!!」
刹那トロールの全身から異常な威圧感が生まれたかと思うと、アツコに向かい飛びかかり倍ほどに太くなった両の上腕が棍棒を叩きつける。
「今度は私?意外と節操がないのね。コロコロと相手を変えるようじゃモテないわよ。」
アツコはトロールの頭目の渾身の一撃を人差し指で受け止めると、嗜めるように言った。
「ちぃっ!!真の化け物はここにいたか…ふんっ!!」
体勢を立て直し横薙ぎに棍棒をふるう。
「一度痛い目をみないと実力差もわからないのかしら。」
アツコはその一撃を軽く払い、拳を振り上げ雑に膝を殴る。
「グアァ!!」
膝が砕ける嫌な音とともに一層大きな悲鳴が夜の森に響き渡る。




