自慢の妹紹介します②
「ま、とりあえず無事でよかった。」
次に口を開いたのは『ミカヅキ・リイレノーデン』。三女だ。
アッシュのような緑がかった肩まである髪は、風にたなびくように前髪から大きく左右に分かれている。デコ出し外はねとでも言うのだろうか…女性の髪型は難しくてよく分からないがウェービーでオシャレな感じだ。耳にかかる髪を1束だけ編み込みにしているのは、我ながら完璧な造形美だと自負している。
性格は古式ゆかしい正統派なツンデレで、キツい言葉こそ使うものの気遣いが上手く優しい。
姉妹のなかで一番真っ当な感性を持つ常識人であり、それゆえツッコミに回る事も多い。
種族はエルフということもあり細身で華奢な体格をしており、耳はエルフであるという事を誇示するように長く尖っている。
ミカヅキのモデルは小学五年生から中学二年まで同じだった同級生だ。
物言いが率直で口調がやや厳しかったためか、女子の間ではすこし浮いていた子で、そのためかオレや他の男子にちょくちょく絡んできていた。
特にオレはイジられた際の反応が激しすぎず大人しすぎずちょうど良かったからか気に入られていたようで、よくバカツキバカツキと罵倒されていたっけか…今から考えると女子のなかで上手く馴染めず寂しかったのかもな。
ゲーム上のミカヅキの性格は、彼女が高校生くらいになって性格的に丸くなり、少しだけ素直さが増したらこうなるだろうなと想像して設定している。
現実の彼女は中学三年の頃から不登校気味になり、学校には近くのバカ高校のヤンキーと夜毎遊んでいるとか、援助交際をしているのを見たとか言われ放題だった。
一緒に撮った写真もほとんどなく、音声に至っては必死に当時の記憶を呼び戻してまで彼女をNPCとして作り上げたのは、あの時友達としてどうして彼女を助けようとしなかったのかという後悔が、今でもオレの心の奥底にのしかかっているのかもしれない…。
「お兄ちゃんが起きないんじゃないかって皆心配してたんだよ。特にアツコちゃんが。あとから優しくしてあげてね。ちなみにワカナはお兄ちゃんを無理矢理叩き起こして早く冒険することしか考えてなかったから優しくしなくていいよ。」
そうイタズラっぽく耳打ちするのは『サヤ・ヴァイラウフフルス』。姉妹の四女にあたる。
月の光をよりあわせたかのような美しい銀色の髪をたなびかせ、口元には穏やかな微笑を浮かべている。
種族がリリムということもあり、身体はかなり女性的で、清楚な容姿とは裏腹にどこか蠱惑的な雰囲気をもっている。よく末妹のワカナをからかって遊んでいて、まさに小悪魔といえる。
本来であれば悪魔の耳と羽、しっぽを持っているが、人間社会にまぎれて暮らすためアイテムの効果で隠しているという設定だ。
サヤのモデルはオレが大学生時代ファミレスのバイトリーダーとして活躍していた時の後輩だ。
当時彼女は女子大生で、その小柄で可愛らしい容姿と人懐っこさ、何より男性を意図的に釣るような仕草により、バイト先の男性陣からはチヤホヤされ、女性陣からは陰口を叩かれる存在だった。
ただ彼女は女性から敵意を向けられるのに慣れていたようで、その事を出汁にバイト先のイケメン相手に相談を持ちかけては次々と乗り換えるという芸当を行っていて、それがまた女性陣の怒りを買うというループが繰り返されていた。
当時の店長は多分に漏れず彼女の味方…いま考えると二人の間にそういう事もあったのかもしれないが、とにかく彼女を擁護していたため、バイトリーダーのオレが彼女をたしなめる役割につくことが多く、必然彼女との会話も増えていった。
彼女は話してみるとサバサバとした性格で、女性陣からの不平不満をそれとなく伝えると『わかります、私だったら絶対私のこと嫌いですから。』などとカラッと笑っていた。
それからは同僚として、時にからかわれつつ、時に釣られつつ、楽しかったバイト生活を彩る大切な思い出になっている…がとうとうオレの順番が回って来なかったのは、いまだに納得できない悲しすぎる思い出となっている。
トータルではマイナスかもしれないが、彼女のことを思い出すと無意識のうちにニヤついてしまうのは、彼女の人徳だということにしておこう。
なお、サヤの性格は本当にそのまんま彼女のものと言って過言でない。性格再現という意味ではずば抜けている存在だ。