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イリアーゼ達が目指していた建物に着くとちょうど扉からゼンが出てきた。


「お嬢、アレックス」


「ゼン戻ったわ。ただいま」

「ただいま、ゼン」


「ああ、おかえりお嬢。アレックス。戻ってきて良かった。今ミリヤが奥の部屋で朝食の準備してるから行ってやってくれ。」


もう少しで迎えに行くところだったと言うゼンの話を聞きながら三人でミリヤのいる部屋に向かうと話し声が聞こえていたからか部屋の前に着いたときにミリヤが扉を開けてくれた。


「ミリヤ、ただいま」


イリアーゼがミリヤに声をかけるとミリヤはイリアーゼの顔を見つめてきた。


「お嬢様、おかえりなさいませ。」


「あのミリヤ、ゼン…その」


「お嬢様、失礼します。」


イリアーゼがなんて声をかけようか考えているとミリヤに優しく抱き締められた。


「ミ、ミリヤ」


「お嬢様、手荒な方法でこちらにお連れして申し訳ございませんでした。…ですが、心配しておりました。」


「お嬢、昨日は本当につらそうだったからな」


そう言いながらゼンに優しく頭を撫でられた。


「…心配させて、ごめんなさい」


ミリヤとゼンは離れるとイリアーゼに向き合う。


「お嬢様がご無事で良かったです。」

「お嬢、元気そうで良かった」


(アレックスは二人とも私の事を知っていたと言っていたけど、知っていたからといってこんなに優しくされる理由がわからない。雇い主の娘だからかしら?…それでも)


「ありがとうミリヤ、ゼン」


イリアーゼは二人に感謝した。












あれから四人で朝食をとり今はイリアーゼ、ゼン、ミリヤで状況を話し合っていた。

アレックスは連絡が来ていたため部屋で確認をしに行っている。


ちなみに現在イリアーゼ達がいる建物は追放先のコルド村にあった宿泊施設

現在は観光シーズンでもないため他の利用者がいないので貸切状態だ。

本来ならイリアーゼは教会に行く予定だったが急な追放だったため教会も準備が出来ておらず(そもそも教会に追放先であるという連絡が来ていなかった)第2王子の命令とはいえ正規の手続きが出来ていないイリアーゼを受け入れられなかったので一先ず宿泊施設に泊まることになったらしい。と、イリアーゼはミリヤ達から説明があった。


「新聞にお嬢様が行方不明になったという記事ですか、ゼン、公爵様からの手紙はなんと?」


ミリヤが新聞を読みながら詳しい情報を確認している。


「公爵様から取り合えず情報の出所がわからない以上、念のためお嬢はこの村から出ないで他の奴にも会わないように、だってよ。」


「そうなのね。」


(うーん、今まではゲームのシナリオ通りだったから原因は直ぐにわかったけど今回はゲームが終わったあとの話だからわからないわ)


イリアーゼはそんなことを考えながら紅茶を飲んでいるとアレックスが部屋から戻ってきた。


「イリアーゼ様、ゼン、ミリヤ」


「アレックスどうだった?」


アレックスに尋ねると彼は首を横に振った。


「上司からもどうしてこの状況になったのか原因不明だと。」


「そうなの。」


(盗賊が出るという情報は私が御者に伝えたからだと思うけど、無事に着いたとアレックスから国の方に連絡があったはずなのにどうして…)


「イリアーゼ様」


アレックスはイリアーゼの方を向いて話し出す。


「なにかしら?」


「この件について僕の上司がイリアーゼ様から直接話を聞きたいと、こちらに来るそうです。」


「え?アレックスの上司が?」


「ええ、もう王都を出ているそうなのでそろそろ到着する頃かと」


(アレックスの上司が話を聞きたいって…アレックスがいれば話なんて直接しなくても連絡があるでしょうに)


「わかったわ。」


「ありがとうございます。では僕は上司に場所を知らせるために外に出ていますので」


「ええ、私もここから動かないようにしているわ。」


返事をするとアレックスは部屋から出ていった。


「ミリヤお茶の準備をお願いできる?」


「はい、お嬢様」


ミリヤが台所の方に向かったのを見届けるとイリアーゼはゼンに向き合った。


「ゼン」


「どうしたんだお嬢?」


「お父様からの手紙に他に私の事書いてなかった?」


そう言うとゼンはお父様からの手紙と思われる紙を差し出してきた。


「書いてなかったすよ。…けど、お嬢のことを心配してるのは確かだ」


イリアーゼは差し出された手紙を受け取ると中を見る。そこにはゼンが言っていた内容と同じことが書かれていた。しかし、その字は少しガタガタで急いで書いたようなものだった。

イリアーゼの父は家族思いで真面目で少し神経質な人だ。手紙だって自分が書いたものでも気に入らない出来なら直ぐに書き直すようなそんな人

そんな父が書いた手紙がこれ


「お父様…」


イリアーゼは記憶を思い出してから両親や姉、兄を家族だと認識するには時間がかかった。いや、イリアーゼとしてだけ育った6年間があったから認識はしていたが馴れるまでに時間がかかった。それでも今はこの人たちが私の家族だと思えている。


「ねえ、ゼンこの手紙」


「もう内容はわかってるし、お嬢にあげますよ。…一応仕事で俺が受け取った紙だから公爵様にはバレないようにしてな」


「ありがとうゼン!」


イリアーゼは大事に手紙を抱き締めてイリアーゼに与えられた部屋に行った。

そんなイリアーゼをゼンは見送りながら思った。


(お嬢、ここに来る前は何かを大切にしまうなんてこと無かったのに、変わったな)


イリアーゼの子供の時のことを思い出しながらゼンはイリアーゼの変化を素直に喜んだ。

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