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アレックスと向かい合ったまま二人で鐘が鳴り響くのを聴く



話をしてもこの音で掻き消されてしまうからだ。

イリアーゼはアレックスを見た。

少し息を切らしたアレックスは兵士の制服ではなくシンプルな平民が着るような服を着ている。この時間帯といい私服なのだろう。手には新聞を持っていた。


(制服を着ると割り増しで格好よくなるとは言うけれどアレックスは元々顔が良いから私服姿も似合うわね。)


鐘の音が止まると同じように私を見ていたアレックスが一つ深呼吸してから話しかけてきた。


「イリアーゼ様、こちらにいらっしゃったのですね」


「ええ、教会が見えて思わず出てきてしまったわ」


「そうでしたか、すみません三人で交代してイリアーゼ様の部屋の前にいたのですが、気になる記事が新聞に載っていたので少し離れてしまいました。」


(なるほど、その時に私が起きてしまったのね)


「気になる記事って?」


「こちらです。ゼンとミリヤに会う前にイリアーゼ様には見てもらった方がいいかと思い持ってきました。」


アレックスが新聞を開いて該当の記事を指差すのでイリアーゼも読んでみる。


「学園卒業パーティにてクラベリス第2王子に不敬罪を働き婚約破棄及び王都から追放されたイリアーゼ・クロース公爵令嬢が行方不明に…なお、途中まで利用していたと思われる御者の証言により盗賊の仕業か…え!これって…」


「この記事はイリアーゼ様が馬車でおっしゃっていた夢の話と同じでは?」


「ええ、一緒よ全部…」


(どういうことなの?盗賊の仕業かって私、王子に言われて無事に追放されたはずだけど、行方不明って!?)


今までも違うことはあったがこれは予想外だ。


「私って普通に追放されたのよね?だから、説明役の貴方がここにいるのよね?アレックス?」


「ええ、イリアーゼ様が眠った後も盗賊は出ませんでした。」


本当にどういうことなのか訳がわからない。


「ミリヤとゼンは、この記事を読んだかしら?」


「ミリヤは自室で休憩しているのでまだかと、ゼンは公爵様から手紙が来ていたので、もしかしたら知っているかもしれません。」


「そうなのね。アレックスの上司からは何か連絡は?」


私の追放先での説明役として来たアレックスだ。新聞の記事からして当然その仕事を与えた上司に心配されているだろう。


「イリアーゼ様が無事こちらに到着したという連絡は昨日の内にしていましたが…」


「返事が来なかったの?」


「いえ、おそらく来ていると思います。」


(まだ確認していないのかしら?…あ)


イリアーゼはここに来た時のアレックスが少し息を切らしていた事を思い出した。


「もしかして、私を探していて確認出来なかったの?」


アレックスは少しだけ私から視線を反らした。


(ああ、何してるの数時間前の私…迷惑かけるなんて)


アレックスからしたら私は仕事で常に気にかけていなければならない対象だ。その対象が突然姿を消したなら探しに来るのは当然だろう。ましてや、新聞に行方不明になどとかかれていた人物ならなおさら


「ごめんなさい。アレックス心配かけさせて」


「いえ、側を離れた僕にも責任はあります。」


「起きる時間なんて予測できないものアレックスは悪くないわ。…ここにいる間は余程のことがない限りアレックスに許可を得てから外出するように気を付けるわ。」


「そうしていただけると助かります。…そろそろミリヤとゼンのところ向かいましょう。」


そのまま教会から先程の建物に向かうことにした。歩いている途中、イリアーゼはアレックスに話しかける。


「アレックス」


「はい、イリアーゼ様」


「睡眠薬のことなんだけど」


「聞きましょう。」


「私は飲んだつもりはなかったんだけど、もしかしてミリヤが?」


休憩の時のことを思い出すとゼンとは直接の接触は少なかった。ミリヤは軽食の用意といい私に睡眠薬を盛ることは可能だろう。


「やり方はイリアーゼ様と同じで強引でしたが、心配だったのでしょう。夢の話を聴いていた僕には僕たちを巻き込まないようにするためにイリアーゼ様が睡眠薬を盛ったとわかりましたが、ミリヤとゼンは」


「私を放っておいたら自殺すると思ったから。でしょう?」


アレックスは頷く。

ナイフ、縄、睡眠薬を持ち物として用意させた雇い主の娘だ。一度の説得で自殺しようと考えいたものが辞めるとは思えなかったのだろう。ゼンとミリヤがそう考えるのも納得だ。


「……二人には心配かけさせたこと会ったら謝るわ。」


「それがいいと思います。」


イリアーゼが立ち止まるとアレックスも止まってくれた。


「アレックス」


「はい、イリアーゼ様」


「その、気が触れたと思われても仕方がないような事を言っていた私の話を聞いてくれてありがとう。…逃げようとお仕事の邪魔ばかりしてごめんなさい。」


イリアーゼの話を聴くとアレックスはイリアーゼの前に跪いた。


「イリアーゼ様…勝手ながら僕もイリアーゼ様を心配しておりました。」


「アレックス頭を上げて、……ありがとう。昨日初めて会ったばかりなのに」


「…実は、イリアーゼ様のことは前から知っていました。お会いするのは昨日が初めてでしたが」


顔を上げたアレックスはイリアーゼを真っ直ぐ見ていた。


「…?ゼンとミリヤから私の事を聞いていたの?」


仲が良い三人だ話題にでもあがっていたのだろうか?


「話すことはありましたが、ゼンとミリヤもイリアーゼ様に会う前からイリアーゼ様の事は知っていましたよ。」


(どういうこと?)


暫く視線を合わせたままだがやはり理由はわからない。

先に口を開いたのはアレックスだった。


「理由は近いうちにでも、今はこの事を調べましょう」


今は言うつもりはないようだ。アレックスは新聞を軽く叩くとイリアーゼを促す。


「…ええ」


イリアーゼは知りたいと思ったが、アレックス達なら直ぐに話してくれると思い聞かなかった。


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