一章 一話『見慣れぬ世界と出会いは突然、いいや必然』
「ここが下界、地上の国か」
周りを見渡せば、見たこともない高さの建物の数々、人間が移動手段として開発し、活用している車という機械。天にも届きそうな高さでもその走りが見られる。限りなく発展しているように感じる。そして今も自分の横を川のように流れ移動を続ける人々。
目で追う情報が多すぎる。
なら聴覚はどうだろうかと耳を澄ませてみる。車の動力となるであろう場所から聞こえてくるエネルギーが生成される音、どこからか聞こえてくる金属同士が一定のリズムでぶつかる音、人々の足音、話し声。喧騒が鳴りやまない。聴覚でも同じなようだ。
それだけではない、先ほどから物珍しそうに周りを眺めるフェインと同じような視線をフェインも感じていた。それも一人や二人だけではない。すれ違う大勢の人々からのものである。それもそのはず周りの人々に比べてフェインの容姿は明らかに異なっている。簡単に言えば目立っていた。
何が目立つ原因となっているのか、服装ではないだろう。フェインは降り立つ異国の様式に合わせて服装は変えていた。しかし明らかに人々と違う部分が一つあった。髪の毛である。今フェインがいる国は日本という国である。この国の人々の髪の色は黒色や茶色がほとんど、フェインの髪色は光に照らされ銀色に輝く一切の濁りがない白髪、天使特有の明るい髪色である。
「ね、あの人、外国の人かなすごくかっこいいね。」
「でも、服装が日本の物っぽいよ?ハーフとか!」
「じ、じゃあ日本語わかるかな?声、かける?」
(少し移動しようか…)
歩きながらフェインは人気の少ない通りへ入っていく。
周りを見渡し人に見られていないかをしっかりと確認する。そして自身の頭に手をかざし力を集中させる。
「変化・休」
髪色が徐々に白から黒に変化していく。
一時的ではあるがフェインは自身の目立つだろう髪色を黒に変化させた。これで少しは人からの視線を抑えることができるだろう。
また人通りのある場所に戻る。
(なんだろう髪色は変えたはずだけど、また別の理由で見られてる気がする…な、なぜだ…?)
髪色は変化させ、服装も問題はない。だがまだ好奇な目で見られてしまう。天使特有の中世的な顔立ちはこの国の人達には美しく見えてしまうのだろう。だがその理由にフェインが気づくはずもなく…
一見するとフェインは男なのか女なのか見てわからないのである。そして問題が起こった。
「君かわいいねぇ、俺と遊ばない?」
(は?なんか急に野郎が話しかけて…待て、かわいい?こいつは僕をかわいいと言ったのか!?)
急に男からナンパされたのだった。そして今度は、
「お兄さん、かっこいいですね…よかったら私たちとお食事に行きませんか?…」
今度は二組の女性が後ろから話しかけてきた。
「おいおい、そこのお嬢さん方、なにを言ってるんだい?どう考えてもこの人は女性だろ。失礼だと思わないのかい?」
「何言ってんですかぁ?どう見てもかっこいい男の人じゃないですかぁ?まぁ確かに可愛さもありますけど、あなたこそ目ついてるんですか?」
「そうよ、まぁ仮に女性だとしてもこの人と遊ぶのは私たちですけどね。」
「邪魔な男はさっさと消えなさいよ!」
「なんだとこのアマ、俺が先に声かけたんだ、そっちが手を引け!」
そして、なぜか言い争いを始めてしまった。両方の圧に気おされながらフェインは自身の弁明と断りを入れる機会を失ってしまうのだった。
(仕方ない…言い争いをしてる今逃げるか…!)
夢中で言い争いを続ける一人の男性と二人組の女性の隙を伺い逃げだした。
「あ!待ってくださいよお兄さん!私たちとの食事は!」
「待ってくれよ!俺と!俺と遊ぼうぜ!」
(普通に追ってくるんですけど!に、人間怖い!)
全力でダッシュして、まこうとするがどうも獣のように目をギラつかせながらこちらを追うのを諦めそうもない三人組に少し恐怖を感じ始めたフェインだった。翼を使えば簡単に逃げることもできるだろうが、こうも人が行き交う道の中で翼を出すと余計に問題になるのは目に見えており、うかつに行動できずにいた。
(このままずっと追われるわけにもいかないし、何か、何かいい方法は!)
フェインは逃げながら何かいい方法がないか思案していた。
「お兄さん、こっちです。」
すると突然横からフードを深くかぶっている人間がフェインの手を引き路地裏へと連行していく。そしてどんどん奥のほうへ進みついにはあのナンパ三人組から逃げることができたようだ。
「えーと、ありがとう。君のおかげであの三人組から逃げることができたよ。ふぅ、助かった~」
「いえ、礼には及びません、お兄さんかっこいいですから、ナンパしたい方は大勢いらっしゃっても不思議じゃないです。」
「ま、まさか君もナンパじゃないだろうね。」
フェインは助けてくれたこの人間を少し警戒する。さっきの一連の出来事でフェインの中でのナンパしてくる人間の印象はすこぶる悪いものになっていた。
警戒するフェインをよそにフードを深くかぶった人は、そっとフードを下げた。どうやら女性のようだ。
しかしフェインはより警戒を強めた、数メートル飛んで女性から距離をとる。
「いえいえご安心ください、私はナンパなどではないですよお兄さん。ですがお兄さんに用があるのは同じなのでナンパと見られても仕方ないかもしれません。ね、お兄さん、いや天使フェイン様」
フードの女性は笑みを浮かべながらフェインをじっと見つめるのであった。
天使は中性的であるという話は有名ですが、さすがに性別はつけることにしてます。




