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SUPER SUPIN PIPS  超回転少年

お疲れ様です。 今ちょうど、面白い話を書いているところなんです。


<登場人物>

松田先輩ーー正式名称「松田晶宇まつだしょう

・中学時代はサッカー部。運動神経よさそうな顔をしている。

・卓球部で一番雑巾がけが早い。

・卓球部で2番目に強いポケモントレーナー

・好きな芸人は「ぺこぱ」


ザキミヤ部長--正式名称「宮崎曄燈みやざきはなび

・イケメン! マジでイケメン! 若手俳優みたいなイケメン!

・ただギャグがね....寒いね....

・そのくせすぐフリにのるよね

・あと、そのでっかいヘアピンはダサくね?ぶっちゃけ。

・好きな芸人は「狩野英孝」


ハトムネ副部長--正式名称「氷見透ひみとおる

・美少年! ガチの美少年! アイドルみたいなイケメン!

・ただ性格がね....大きいね....

・それにくわえて声がデカいよね

・あとクシャミうるさいよね。

・好きな芸人は「ロンブー淳」


村椿了

・選手として役に立たないので、なんかマネージャー的な立ち位置を陣取っている。

・積極性のあるコミュ障。

・シャイな熱血漢。

・好きな芸人は「怪奇!YesどんぐりRPG」


徳光さんーー正式名称「石動昴いするぎすばる

・「筋トレ業界はアニメに感謝すべきだよね」

・「結局ニート以外の有能な人間が異世界に転生しても褒められなかったじゃないか」

・好きな芸人はいないので好きな漫画家を紹介します。「カヅホ」です。


 以上です。


    ※推奨脳内BGM HALOat四畳半/「リビングデッドスイマー」



「できるだけ第2セットで藤崎にドライブを打たせてください」

「そんなんじゃセットとられるぞ、いいのか」

「構いません。最終的に3セットとればいいんですから」


 --これだよ。


 松田はつくづく、後輩から“異質”を感じた。

 周波数が合ってないラジオ。

 卓球の試合になった時だけ周波数がカチリと合致する。

 言葉が流暢に紡がれて、感情を饒舌に並び立てる。


 吸収しきれない言葉がドンドン積まれてゆく。

 積まれてゆく言葉で目の前が覆われる。


 ゼリー飲料を手渡される。

「あと、この水分補給もハズいんやけど。--あと越間を扇ぐん止めてくれんけ?別に体そんなにあったまってないからさ」

「いや、でも村椿監督の指示なんで。ベンチからの指示なんで」

「知らんうぇえよ」 ※「しらねぇよ」と言っています。



「このパフォーマンスで相手が引いてくれるなら儲けですよ」

「そやそや。あとシンプルにウケる。      俺らが」

「おいっっ」


 スマホで動画の撮影を続ける高木にパイセン海原が口を挟む。

「相手納得しとらぁけ? こういうのって肖像権とかあるんやろ?」


「わかってないわけじゃねぇんやろ?」

 宮崎が

「当たり前っすよ」

 少し笑顔が固くなった。


 松田は未経験者だ。初めてラケットを握ったのは高校1年生。「本格的に」という文言をつけるのならば高校2年生ーー2か月前にさかのぼれば済む話だ。

 サーブの打ち方をやっと習得した程度。


 宮崎は考える。セミだって日の目を見るのに6年かかるというのに。


「平気ですよ」


「“真剣”に勝つのに“ナアナア”がいくら束になったって無駄ですよ」


 ※banvox/「magic is happening」



「あ、あれは....」

「『全曲がり打法』!?」


「脚力は卓球でも重要な因子です」


「松田さんは、相手が太刀打ちできない生粋の“ランナー”です」

松田のボールは高々と浮き上がった。

 卓球において、一般的に「高い弾道」相手にとってはチャンスボールだ。

 ネットとの高さの差があればるほど打ち込みやすい。

 村椿の狙いは、まさにそこだった。

「--打ち込ませましょう。いくらでも」


「これなら松田さんも経験値たまってますよ?」

「ガチで言ってる?ねぇ、ガチで言ってるのかい?」

「そうだよ、こいつはいっつもいっつも

「........三井君、言い過ぎじゃないかな?」


「じゃ、ここで徳光さんから一言」

「....特にありません」

「はい、オッケーです」

「何がけ!?」


 不思議と不安は無かった。


 それはきっと開き直り。

 何も失わない持たざる者の蛮勇。

 勝ったところで誰も称えない。

 ラケットを振った理由はたった一つ。

 

「おもろなってきたじゃぁ....!」


 手に入れた原動力は、松田の腕に全力でラケットを振るわせる。


「越間っ。応援っ」

「は!先輩!」

「....越間の元野球部いじりよく飽きないね、お前」

「いや、俺はアレっすから、飽きが来ない、噛めば噛むほど味が出るするめ系男子っすから」


 彼らはきっと気づかない。ずっとわかりはしない。

 枯れた大人が“青春”と呼ぶ時間の只中にいる現実を。


 松田が台に歩み寄る。


「よし、サーブ松田やぞ」

「....あいつ今、チン〇の位置直さんだ?」


 そして第2セットが始まる。

 対戦相手はすでに漁湊が自発的に発散している只ならぬ空気ーー中川風に言い換えれば「あいつら頭オカシイんじゃねぇがんかよ」な空気にヒイていた。

「っさ!」

 わざと大げさな掛け声とともに構えるサーブ。

 切れるカードはたった2枚。


①コート深くまで伸びる軌道のサーブ。名称「ロングサーブ」

②ネット際のあたりで止まるサーブ。名称「ショートサーブ」


「勝機と呼ぶには心許な過ぎんか、これ」

 経験者であるがゆえに宮崎はわかってしまう。

 少なすぎる。

 簡単に対応されてしまう。

「せめて松田が四十内みたいな“アップダウンサーブ”の一つでも使えればな....」

 それでなくとも石動のような“ネタサーブ”の一つでも、村椿のような“初見殺しサーブ”が一球でも使えれば奇襲が仕掛けられるのだが。それは無いものねだり。


「ウジウジ言うなよ宮崎」

 横で腕を組んだ氷見が言う。

「そもそもオメーだってサーブ雑魚やろうが」


 松田はボンヤリとしか己の不利に気づいていない。


 だからこそ、いまだからこそできる攻め方。


「掴みますよ!」

気軽な声の応援は、ボリュームは浮ついていても本心が紡いだ言葉。

「ビギナーズラック掴みますよ!!」


『幸運の女神には後ろ髪はない』  --昔のアタマがいい人


 マツダがトスを上げる。

「ぐっわ、危なっかしいトス…!」

 フォルトを取られてもおかしくない低さだった。

 落ちてゆく白球めがけて赤いラバーが突き進む。

「--さっ!!」


 高速で打ち出された。

 バックミドルへ向かった。

「お」

 コースの良さに氷見が声を漏らす。

「ラッキィ」と歯を見せた氷見の確信は正しく


 浮き上がったボールを 

 松田は運動神経に恵まれているものの決してボールタッチのセンスを生まれ持っている選手ではない。


「よしっ」

 第3セットの先取点は松田。


「敵は打てると判断して攻め気で来ます。相応の餌を巻きましたから」

 どちらが先に“ボロ”を出すかの戦いになった。いささか不格好な戦いではあるが、弱小校の初心者部員である以上、勝ち方にこだわっている余裕はない。


「『表ソフト』の速球を」


 『表ソフトラバー』とは、回転よりも速度を重視して設計されたラバーである。

 スポンジの上に張り付けたゴムは粒側が上を向き 接触面積の少なさが摩擦の少なさーすなわち球離れの良さを実現し、『裏ソフトラバー』よりも高速のボールを弾き出す。


 回転の変化は期待できない。


 ナックル(無回転)というクセ玉が出せる。だがーー「わかりません」

 村椿は考える。

「松田先輩の表ソフトの攻撃がどこまで完成してるかはわかりませんが、賭けるには十分です。相対的に」

 宮崎は笑いながら

「最後に頼りねーこと言わんでくれよ。見てるこっちも不安になっから」

 宮崎は本気で心配している よくもまぁ、こんなちっぽけな地区大会 実績になりやしない大会の2回戦を楽しめるものだなぁと、彼の中の『常識』が囁く。

 常識的に考えれば 頑張ったところで何の得にもなりはしないが。


 ただ、そんなものか。なんだって。


 松田は笑いをこらえきれなかった。


 夢や理想や成功は、蓋を開けてみれば随分と地味で些細で粗末なアレコレでできている。

 『欠片』だけ見てても面白いわけはない。

 カケラは、集め終わってからでないと、その大切さに気が付けない。



 思い通りにいっている。

 世界が、自分の思い通りに動いている。

 それは 平米の小さな世界。 グラムの球体を追いかけるせせこましい世界。

 でも、間違いなく自分が世界を動かしている。


「--しれーー」

 赤いツブツブを見つめて。

「卓球って面白えー」


 次は松田がレシーブ。


「ほっ」


 ***


「また、あのへんな打ち方してきとるぞ」「もう遊んどるな、アイツら」

 彼らは異常に気付いていない。


 実際に試合でプレイしている橋爪は 意味もなく負けてやるほどにお人よしなものか。


 彼は「それが当然」とばかりに、回転をかけたサーブを連発する。

 回転がかかってさえいればよいと。


 彼が打つサーブは全て下回転。ミドル カットサーブだ。


 

 橋爪のスタイルを四十内は「アイツ、攻撃力が高いレアモンスターばっか集めてデッキ組むタイプやな」と、真理を喝破したかのような口ぶりで、隣の越間から「は?」、その隣の宮崎からは「ん?」とぶつけられていた。


 松田はすべてツッツキでレシーブすることで 主導権こそ握れはしないが 失点はない選択肢を取り続けた。

 スコアは正しさを証明するかの如く動いてゆく。

 

「3-6か....」

 卓球歴3年半と半年の対決にしては奇妙な得点数に映る。


 問題は3球目以降の橋爪のドライブ攻撃。

 本来の卓球選手ならドライブにはドライブで返すものーーいわゆる"引き合い"を挑むものだ。

 ドライブとドライブの打ち合う展開、引き合いの試合運びは21世紀の卓球においては王道だった。

 ドライブの引き合いをこなす実力はない。


 松田のとった選択は極めて単純なカードだった。

「ぉ」

 当てるだけ。


 ラケットを覆い被せて。


「はじめてやるうぇい」

 マジックが、起きている。


 ***

「俺たちは補欠じゃないぞ“サポーター”じゃ!ほら、応援を忘れるな!向こうの選手のチャンスの時はよくわかるように変顔をして集中力を削げ!」

「村椿、もう喋るな。スベッてる」




「意外と松田でも戦えるんじゃねぇか」


 村椿構想では、宮崎・氷見・四十内・石動の4人をどうにかこねくり回したオーダーで3点取ることだった。

 純粋な団体競技ではない卓球の団体戦では、限られたエースが実力を発揮すれば十分に勝てる。

 バスケやラグビーのように激しい体の接触が起こる競技でもないので、比較的故障するリスクも低いーー比較的ではあるが。


 敵の狙いを"散らす"ことならできる。


 3セット目は松田が獲った。

「よぉおお~~~うう」

 まぎれもなくふざけた勝利の雄たけびを上げる。


「まぁ、今のところはネタ性能ですけど・・・・」

「えぇえええ!!??」

「いや、気づいとったやろ、自分でも」


「関節はブースターです」

 細い肘をつつきながら 

「ボールの速度を 関節の使い方が

「あ、それは俺も読んだ。本で」

 越間が口を挟む。


「四十内は何で知らんがけ?俺でも知っとらぁによ」

「俺はだって攻略本とか読まんタチやもん」

「そりゃゲームはそうかもしれんけどさ」

「攻略サイトとか掲示板は見るけど」

「ゴメン、基準がまるで分らんちゃ」

「いいっちゃ、分からんで」


 こんな場面は予想だにしなかった。部活動の大会に参加するだなんて、てっきり休日の予定の一つになるだけだと。


 まさかこんなに盛り上がれるなんて。

 松田は「おっしゃぁ」とステップを踏んで心拍数を保つ。


 --面白い遊びを見つけたぞ。


 目まぐるしく世界は回る。

 おいていく速度で地球が回転する。

 すさまじい回転で変化する世界。


 廻る 回転


 村椿がペットボトルを差し出す


「回転を乗りこなしましょう。松田先輩の武器を使った試合展開で」


「この試合は…“スマッシュゲーム”です」


 村椿は腕を組んで試合を眺める。


「流行りの“ドライブゲーム”とは違った戦いです」


「男子選手ではマティアス・ファルク、女子選手では伊藤美誠が得意とする戦法です」


 ***


「ちょっと興味はあっちゃ」


「卓球ヲタクどうし」



 ※推奨脳内ED―超飛行少年/『透明アバンチュール』



【今日の“あすなろ”】

・表ソフトの優位性を生かした戦い方を考えよう。

・家買ったらこっそりパソコンつかって『』をググろう。





込川:ぴーーんぽーーんぱーーん体操ーー!!

前田:


込川:タイトルコール言っちゃうぜベイべ

前田:次回、紅の蜃気楼旋風


     『俺たちのブライス』


込川:では、時間が余ったので体操をします

前田:帰れま。さっさと。

込川:けんこ~~♪、けんこ~~♪

前田:これ、分かる人おるんかよ....

込川:けんこ~~けんこ~~いい感じ♪

前田:わかったアナタには富山県民を代表して....スーを差し上げます!!(裏返った声)

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