蠢く悪意(6)
4/9の朝に前話を加筆修正してます。読み返すとときめきが足りなかったので!
今日のピクニックであった襲撃について、ユージンに話すアナスタシア。
「兄上が怪我を?」
「えぇ、ちょうどユージンと反対の右腕に傷を負いましたの。」
「そうか・・・。俺の方でも兄上に御礼を申し上げておく。それにしても・・・」
ユージンは話の途中で考え込むと言葉をにごす。アナスタシアは話の続きを待っていると、徐々にユージンの顔に怒りがにじみ始める。テーブルの上に出ている手も怒りで強く握りしめられていた。
「ユージン」
名前を呼んで握りこんだ手を覆うアナスタシアに、我に返ったユージンは微笑みかけた。
「すまない。考え込んでしまった。」
「どうされたのですか?」
「・・・アナスタシアを巻き込むのはどうかと思ったのだが。今回の様なこともあったから知っていて欲しい。」
そう言ったユージンの顔は、いつも以上に真剣だが、目が哀しみをまとっている。
「どこから話せばいいだろうか。アナスタシアが襲われた件は王都に戻った時点で報告があったんだが。兄上がアナスタシアを庇って傷を負ったことは知らされなかった。」
「先ほどの話ですし、概要だけの報告であったということではなく?」
「いや、ユートがあの場にいた責任者に報告させて、この屋敷まで知らせてくれたから微に入り細に入りのはずなんだが・・・」
ユージンは苦虫を噛み潰したような顔をする。
「どうも数年前から、兄上と俺の対立を深めようとするものがいるようなんだ。今回のように兄上の関わったことを意図的に報告されないことが何度かあってな。最近やっと反精霊を信念にしている者たちが関わっていることは分かったんだが。」
「反精霊ですか。」
「あぁ、ジハネは精霊から解放されるべきだということを信念にしてる者達らしい。現在のジハネの繁栄は精霊がいてこそなんだが・・・水龍の眷属が現れないことも近年この思想に拍車がかかっているようでな。叔母上によれば、アナスタシアを襲ったのもこの思想に染まった者が関わっていることだけはわかった。しかし、反精霊を公言をするものは居ないこともあって、調査にも難航している。」
ユージンの説明で自分がなぜ狙われたのか理解したアナスタシア。
「私が狙われたのは、この痣が原因なんですね。」
そう言って、アナスタシアは指輪を外して見せる。
「おそらく・・・水龍が復活するのを阻止したいんだろうが、ここまで過激派だったとは。どちらにしろ限られた人間しか知り得ないことを知られているんだ、近しいものから情報がもれていることは確かだ。誰が今回の首謀者か必ず突き止める。それまでは無理しないでくれ。」
「わかりましたわ。ユージンも無茶しないで下さいね。」
哀しい目をしたユージンの心が少しでも晴れるように笑顔で応えるアナスタタシアだった。
ユージンはアナスタシアが外した指輪をはめようと手をとった。そして何やら違和感を感じたのかじっと痣を見ている。その様子に気づいたアナスタシアは話してなかったと思い出した。
「今回の騒動の後、また痣が変化しましたの。龍の指が増えたようですわ。」
「龍の指か・・・たしか水龍の格は指の本数だった気がするな。俺の方でも調べてみる。」
そうして指輪を嵌め直したユージンは、もう帰らなければと席を立つ。見送る為に立ち上がったアナスタシアと見つめ合うユージン。
「離れがたいな。おそらく次に会えるまで日にちが開きそうだ。」
そう言って、アナスタシアの頬を撫でる。
「もう少し、アナスタシア分を補充させてもらっていいかな。」
少し意地悪な笑顔を浮かべたユージンはアナスタシアのあごに手を当てて、唇に口づけを落とした。何度か角度を変えて、少し噛みつくようなユージンの口づけに目を潤ませて顔を赤らめるアナスタシア。
「そんな顔をされると理性が溶けてしまいそうだ・・・」
かすれるようなユージンの囁きに、アナスタシアはうろたえて固まってしまう。そんなアナスタシアを見て、急ぎ過ぎたかとアナスタシアのことに関して我慢が効かない自分に少しだけ反省するユージンだった。
ありがとうございます。




